第1章 主要登場人物の素描
■ ヴェルデンベルク侯爵夫人マリー・テレーズ(マルシャリン)
彼女の夫であるヴェルデンベルク侯爵は陸軍元帥であることから、彼女は元帥夫人またはマルシャリンと呼ばれます。リヒャルト・シュトラウスによると32歳以上にはなっていない女性で、モーツァルトの「フィガロの結婚」の伯爵夫人とごく近い存在としています。若くして結婚したがゆえに、多忙な生活を送る夫(舞台に登場せず、たぶんかなりの高齢)との結婚生活に失望し、その寂しさを17歳の美少年との愛と情事に慰めを見いだしていました。 結婚する前はレジ公爵令嬢と呼ばれていたことが彼女のモノローグの中で語られます。ソプラノ。第2幕に出番はありません。
以下のイラストはすべて、ドレスデン初演以来舞台装置・衣装を担当したアルフレッド・ロラーによるもので、下の3枚ともマルシャリンです。
■ オックス男爵
正式名はオックス・フォン・レルヒェナウ男爵。礼儀知らず、下品、好色、横暴、野卑な35歳位の田舎貴族。マルシャリンの従兄弟に当たります。根っからの悪人ではなく、憎めない面もあります。シュトラウスは当初このオペラを『オックス・フォン・レルヒェナウと銀のばら』として作曲中はオックスを「タイトルロール」と称していました。下のイラストはすべてオックス男爵。
■ オクタヴィアン
高貴な生まれの17歳くらいの貴族。正式名はオクタヴィアン・マリア・エーレンライヒ・ボナヴェントゥーラ・フェルナン・イヤサン・ロフラーノ伯爵。愛称はカンカン。ズボン役のメゾ・ソプラノ。ソプラノが歌うこともある。オックス男爵とは従兄弟の関係。第1幕と第2幕ではマルシャリンの小間使いマリアンデルに変装します。 下のイラストはすべてオクタヴィアン。
■ ファニナル
最近やっと爵位をもらった富裕な商人。娘のゾフィーをオックス男爵と結婚させて箔を付けようとしている俗人の典型として描かれています。バリトン。
■ ゾフィー
寄宿舎学校を出たてのファニナルの娘。オックス男爵に会う前はその結婚を決心していましたが、婿の品位のない行動に怒り、ばらの騎士オクタヴィアンに惹かれていきます。ソプラノ。
■ ヴァルツァッキ
ゴシップ屋。最初はオックス男爵に取り入って手数料をせしめようと思ったのでしたが、金払いが悪いのでオクタヴィアンに乗り換えます。テノール。
■ アンニーナ
ヴァルツァッキの連れ。第2幕の有名なオックス男爵のワルツのときにデュエットを歌います。男爵に手紙を届けた心付け(駄賃)を要求したのですが払ってくれないために怒ってしまい、逆に男爵をとっちめようと第3幕では男爵の捨てられた妻と偽ります。ソプラノ。
■ マリアンネ・ライトメッツェリン
ゾフィーのドゥエンナ(上流階級の家庭の娘に付き添う女性)。ソプラノ。ゾフィーは母を亡くしていたことが第2幕の最初でわかりますが、乳母というより家庭教師に近い存在と思われます。
■ 歌手
元帥夫人のところに来てアリアをたった1曲歌うだけという役。テノール。シュトラウスがイタリア・オペラを揶揄して書いた(「最も美しく、最も内容のない」アリアを書こうとしたと自ら語っています。)と言われていますが、ストーリーとは全く関係がない上にいい曲であるし目立つ役柄であるために、プレミエ上演等のイベントの時やレコーディングではいわゆる3大テナーなど一流のテナーが起用されることが多い役です。
■ その他
黒人の小姓、奴隷、使い走り、異教徒、公爵家の家令たち、理髪師とその助手、洋品屋、ペット売り、フルート奏者、ダンサー、貴族の孤児3人、貴族の未亡人、学者、公証人、医者、警部とその部下たち、子供たち、料理屋店主、給仕、菓子職人、楽師、見張り、御者、不審な人物など出演者の数はギネスもので、このオペラを上演するには街の住民を総動員しないといけないというジョークがあります。
■ おまけ
ガルミッシュ・パルテンキルヒェンにあるリヒャルト・シュトラウス協会(下左の写真はその正面玄関)には上記のアルフレッド・ロラー作の模型が置かれています。記念撮影用の実物大もあります。(2005年2月撮影)
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