モーツァルト:歌劇『コジ・ファン・トゥッテ』序曲 K.588

モーツァルト(1756-1791)      ロレンツォ・ダ・ポンテ(1749〜1838)

 このオペラは、一昔前まで『女はみんなこうしたもの』と訳されていましたが、やや差別的なこの呼び方は今では使わなくなりました。初演当時から「不道徳」とされ、かの堅物ベートーヴェンはこの作品を嫌っていたと言われています。しかし、近年では男女の機微、真実の愛にまで踏み込んだ深い洞察と示唆に満ちた作品、因襲的な婚約からの女性の解放を謳う作品として高く評価されています。

 モーツァツトが書いたオペラの傑作『フィガロの結婚』、『ドン・ジョヴァンニ』に続くこの『コジ・ファン・トゥッテ』は1790年、ウィーンのブルク劇場で初演されました。上記のオペrラの台本はすべてロレンツォ・ダ・ポンテです。


登場人物
フィオルディリージ(ソプラノ):ナポリに住む姉妹の姉。グリエルモと婚約している。アルバニア人に扮したフェルランドの求愛を受けるが、なかなか陥落しない。誇りが高く、一途な性格。

ドラベルラ(ソプラノ/メゾ・ソプラノ):フィオルディリージの妹。フェルランドと婚約している。情熱的で冒険心がある。アルバニア人に扮したグリエルモの誘いにすぐに乗る。

デスピーナ(ソプラノ):上記姉妹の小間使い。ドン・アルフォンソに協力して医者や公証人に変装する。世渡りに通じた現実主義者。

フェルランド(テノール):海軍士官。婚約者ドラベルラの誠実さを信じてドン・アルフォンスの賭けに乗る。

グリエルモ(バス):海軍士官。フィオルディリージの婚約者。

ドン・アルフォンソ(バス):年老いた哲学者。永遠の愛なんてものはないと、若者たちを説く。オペラは彼の描いた筋書きに従って進行する。

フランチェスコ・ベヌッチ(初演時のグリエルモ役)    デスピーナ     アルバニア人に扮した男 



あらすじ
 舞台は18世紀頃のナポリ。ある哲学者ドン・アルフォンソが若い二人の士官(フェルランドとグリエルモ)と、「女性は貞淑であるか」どうかの賭けをします。ナポリのあるお屋敷の姉妹(フィオルディリージとドラベルラ)とそれぞれ婚約している彼らは「女性は貞淑である」方に賭け、それを実証するために出征を装います。

 アルバニア人に変装してこっそり帰ってきた彼らは、その姉妹に(相手を取り替えて)求婚します。最初は拒んだ姉妹ですが、小間使いのデスピーナの協力もあって次第に彼らの熱意に折れ、ついに結婚することになります。

 いざ挙式というところに、戦場から二人の士官が戻ってきて、姉妹を取り押さえます。驚き、詫びる女たちに、賭けに勝った哲学者ドン・アルフォンソが事情を説明して皆を和解させます。最後は互いに元のさやに無事収まり、再び愛を誓い合います。

 曲は、アンダンテの序奏とプレストの快活な主部からなります。木管楽器群が活躍することでも知られ、序奏と主部の終わりの2箇所にオペラの中で男たちが「コジ・ファン・トゥッテ!」と歌う旋律がそのまま挿入されています。

    

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