ハイドン:管楽ディヴェルティメント
『聖アントニウスのコラール』Hob. U-46

ハイドン 聖アントニウス 隠者聖アントニウス(イーゼンハイムの祭壇画) 聖アントニウスの聖パウロ訪問(イーゼンハイムの祭壇画) 聖アントニウスの誘惑(イーゼンハイムの祭壇画)
 この曲は、ハンガリーの貴族エステルハージ公に仕えてたハイドンが、1780年代にそこの軍楽隊のために書いた6曲の「フェルトパルティーエン(野外あるいは戦地のための組曲)」の第6曲目にあたります。元の編成は、「オーボエ2、ホルン2、オブリガード・ファゴット2、ファゴット1、セルパン1」でしたが、ハイドンの死後、出版社によってクラリネットやフルートなどが追加されたり、チューバの前身とも言われる低音金管楽器であるセルパンをコントラ・ファゴットに替えたり、題名を「ディヴェルティメント」にしたりと、いくつかの版があります。筆者が聴いたCDでは、オリジナルの編成に近い「オーボエ2、ホルン2、ファゴット3,コントラ・ファゴット1」で全4楽章のうち第1、第2楽章が演奏されています。

 なお、この第2楽章には『聖アントニウスのコラール』という題名が与えられていますが、その由来はよくわかっていません。古い巡礼歌であるとか、ハイドンの時代に良く知られた旋律であったともされ、事実バロックから古典派にかけての何人かの作曲家がこの旋律を使っています。ブラームスが『ハイドンの主題による変奏曲』で主題として取り上げたのがまさにこの曲で、それによって一躍脚光を浴びるようになりました。「聖アントニウス」とはキリスト文化圏ではよく知られたエジプト出身の聖者のことで、貧者に財産を与えて砂漠に移り住み隠修士として瞑想と苦行の生活を送り、紅海の近くで百歳まで生きたとされています。

 絵画では「聖アントニウスの誘惑」という題材で知られ、数多くの画家たちが筆を競っています。また、音楽ではヒンデミットが交響曲『画家マティス』という作品を作曲していますが、これはマティス・グリューネヴァルトという画家の描いたイーゼンハイムの祭壇画(中央から右へ3枚)を題材とした曲で、その第3楽章に「聖アントニウスの誘惑」となっています。



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<<2021/2/26 >>





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