ハイドン:オーボエ協奏曲ハ長調 Hob. Zg:C1

ハイドン(1762〜1763)   レオポルド・コジェルフ(1752〜1818)
 1790年代に書かれたこの作品は、古典派後期におけるオーボエ協奏曲の名曲のひとつとされています。演奏される機会も多い曲なのですが、実はハイドンの作とする確かな証拠がないことから「伝ハイドン」、「いわゆるハイドン作の〜」と称されています。しかし、ハイドン研究の第一人者であるH.C.ロビス・ランドンは「確かにハイドンのものではないが、腕のいいマイナーな作曲家による魅力的で華やかな作品」としつつ、第3楽章の典型的なロンドを「このように平凡な趣に陥らずに書ける作曲家は、ハイドンを置いて他にいるだろうか?」とハイドン真作説に未練を残しています。息の短い紋切り型の主題で伴奏との冗長な会話に終始する同時代のオーボエ協奏曲とは一線を画し、優れた作曲技法を駆使し、技巧的にもソリストを満足させる立派な作品に仕上がっています。

 第1楽章は古典派の典型的なソナタ形式で書かれ、溢れる活気と匂い立つような魅力に満ちています。第2楽章のロマンツェでは、印象深い特徴あるメロディによって穏やかで落ち着いた雰囲気が醸し出されています。第3楽章のロンドは、オーボエ・ソロが主題を提示した後、短いカデンツァをはさみながらその変奏を5回行ないます。変奏を重ねる毎にソロの音符は輝きを増し曲に華やかさを添えていきます。この民謡風の主題は、モーツァルトの後任としてウィーンの宮廷作曲家に任じられた古典派後期のチェコの作曲家レオポルド・コジェルフ(写真右)の木管八重奏曲で用いられたものと類似性があるとされています。


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