後者はドリス・デイの録音と同じメンバー、レッド・ミッチェル(ベース)とフランキー・キャップ(ドラムス)が起用されていますが、全く異なるテイストのアルバムに仕上がっています。ドリス・デイはある種の明るさを基調としてパンチの効いた歌を披露しているのに対して、ダイナ・ショアはより成熟した女性の艶を感じさせるしっとりした歌を聴かせてくれます。前者はメーカーズ・マークのハイボール、後者はシングル・モルトを傾けながら聴きたいかな。「マイ・ハニー・ヴァレンタイン(My
Funny Valentine)」をはじめダイナ・ショアのしみじみとした歌唱は日本人向きで、副題の「songs in a mid-night
mood」のとおり、静まり返った秋の夜長に聴くのにも似合います。
コール・ポーターが作曲した歌「ビギン・ザ・ビギン(Begin the
Beguine)をふたりはノリノリで演奏しています。この曲、どこかクルト・ワイルの『三文オペラ』の「快適な生活のバラード(Die Ballade
vom angenehmen
Leben)に似ているのですが、劇場人であるプレヴィンがこの曲を知らないはずはなく、かなりワイルの音楽を強調した伴奏をしているのが印象的です。
一方の「4月のパリ(April in
Paris)」では一転してしっとりと歌っています。ドリス・デイもこの曲を1952年自身が主演した映画『エイプリル・イン・パリ』で主題歌として歌っています。 ≪ 前のページ ≫≪目次に戻る≫≪ 次のページ ≫
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