No.70 ハーフウェイを極める(2006.6.25)

 え〜、っちゅうことでね、記念すべき(?)第70回は「ハーフウェイ」を取り上げてみたいと思います。最近試合を見ていると、案外このハーフウェイが難しいなぁと思ったんですよ。野手が落球したのに見切りで帰塁していたため次の塁に進めなかったとか、浅いフライなのにタッチアップの形をとってしまったとか、そういうことがけっこうあるんですね。と、いうことで今回は、フライが上がるたび塁間で判断に迷い、右往左往してアウトになる管理人とともにハーフウェイを極めてみましょう!

 

けっこう難しいぞ!ハーフウェイ

●ハーフウェイを一言でいうと

 ハーフウェイは「Half(半分) Way(道)」と書き、一言でいうと「途中まで」とか「半分まで」という意味です。野球では、フライが上がった時にランナーが塁間の途中まで進塁して状況を見極めるプレーのことをいいます。
 詳しく説明すると、ノーアウトまたはワンアウトでフライが上がった場合、ランナーは捕球後に返球されてもギリギリ間に合うところまで進塁し、その位置で打球の行方を見ます。そして野手がフライを捕球したのを確認したらベースに戻り、野手が落球するなど打球を捕れなかった場合は次の塁へ進塁します。

●何が難しいのかというと…

 で、何が難しいのかっちゅうとですね、「タッチアップなのかハーフウェイなのか」「どれくらいのリードが的確なのか」というような判断なんですね。打球が飛んだ距離によってハーフウェイなのかタッチアップなのか判断しなければいけませんし、打球が飛んだ方向によってもハーフウェイの距離を変えなければなりません。他にも、野手の肩の強弱や、グラウンドの広さ、風の強さなども頭に入れておかないといけないのでけっこう大変です。
 ということで、次にフライが上がればどう判断したらよいか、ランナー3塁の場面を例に挙げて具体的にみていきましょう。

 

 

ランナー3塁でフライが飛んだら?

 さて、ノーアウトまたはワンアウトであなたが3塁のランナーだったとします。この時にバッターが外野フライを打った場合、おそらく3塁ベースへ戻ってタッチアップの形をとると思います。もちろんこの形で構わないのですが、場合によってはハーフウェイの方がいいときもあります。
 それは「浅いフライ」の場合。外野手が定位置より前進して捕れるような浅いフライは、返球する距離が短いのでタッチアップを試みてもおそらくホームでアウトになる確率が高いです。こういう場合はハーフウェイの形をとり、野手が落球したらホームに帰り、捕球したら3塁ベースに戻るようにします。
 3塁にいてフライが上がると機械的にタッチアップの形をとることが多いのですが、ときにはハーフウェイをとった方がいいこともあるので頭の片隅に残しておいて下さいね。
 ちなみに、タッチアップできるかどうか微妙なフライの場合は、とりあえずベースに戻ってタッチアップの形をとった方がいいと思います。捕球の時点でタッチアップはムリだと判断しても、捕球と同時に偽のスタートを切って、悪送球や中継ミスを誘って得点するのも1つの手段なので、あれこれ悪どいことを試してみて下さいね。

 

たぶんこんな感じです、ハーフウェイ 

 それでは、ここで各塁でのハーフウェイについてまとめておきます。ハーフウェイをとる距離ですが、ランナーの足や外野手の肩の強弱、ボールが飛んだ距離にもよって変わってくると思います。なので、あくまで目安としてみて下さいね。またいろんな状況判断や戦術があると思いますので、そのへんはチームで確認して下さいませ。

●ランナー1塁でのハーフウェイ

 ランナー1塁で外野フライが飛んだ時は、基本的にはハーフウェイをとります(タッチアップが可能だと判断できる場合はタッチアップをして下さい)。

●レフト方向
 
塁間の半分ほどまで進み、野手が落球したり打球が野手をこえて長打になった場合は次の塁へ進み、野手がフライを捕球したらベースに戻ります。
●センター方向
 
塁間の半分より手前くらいまで進み、野手が捕球できなかった場合は次の塁へ進み、野手がフライを捕球したらベースに戻ります。
●ライト方向、内野フライ
 
ライトフライや内野フライの場合は1塁ベースまでの距離が短いので、ハーフウェイはやや小さめにとります。野手からの返球に対応できる距離まで出て下さい。そして野手が捕球できなかった場合は次の塁へ進み、野手がフライを捕球したらベースに戻ります。ただし、1塁ベース付近の内野フライではハーフウェイはとりません。すぐ近くで捕球してるのにベースから離れてたら即タッチされてアウトになりますよ。

 

●ランナー2塁でのハーフウェイ

 ランナー2塁でも基本的にはハーフウェイをとります。レフト・センター方向の打球は3塁に近いのでタッチアップは難しいかもしれません。ただ、ライト方向に大きい当たりが飛んだ場合はタッチアップもあります。もちろんセンター方向に大きな打球が飛んだ場合はタッチアップを狙ってもかまいません。

●レフト方向
 返球されても間に合うくらいの距離までハーフウェイをとります。あまり大きめにはとりません。
●センター方向、内野フライ
 センターフライや内野フライの場合は、2塁ベースまで返球する距離が短いので、ハーフウェイはやや小さめにとります。また2塁ベース付近の内野フライではハーフウェイはとりません。
●ライト方向
 ライトフライでは、浅いフライの場合はやや大きめにハーフウェイをとります。ただし、大きい当たりの場合はタッチアップが可能です。

 

●ランナー3塁でのハーフウェイ

 ランナー3塁で外野フライが飛んだ時は、タッチアップの形をとるのが基本です。ただし、タッチアップが不可能な浅いフライの場合はハーフウェイをとります。

●レフト・センター方向、内野フライ
 
レフト・センターへの浅いフライではやや小さめにハーフウェイをとります。また、3塁ベース付近の内野フライではハーフウェイはとりません。
●ライト方向
 
ライトへの浅いフライではやや大きめにハーフウェイをとります。

 

 

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 うちの若手メンバーAは中学生の時、「ハーフウェイ」のことを「ハーフA」だと思っていたそうす。なのでハーフB、ハーフCもあるんじゃないかと思っていたんですが、いつまでたってもハーフB、ハーフCというプレーに出会わなかったことから「ハーフA」ではなく「ハーフウェイ」だと気づいたそうです。なかなかオモロイ発想ですな。そんなこんなで「ハーフウェイ」を取り上げてみましたが、いかがだったでしょうか。最近では、フライが上がってもボールを捕る前に帰塁してしまうというシーンをよく見かけるので気を付けて下さいね。特に海辺など風の強いグラウンド(女子野球では江戸川区の臨海球技場など)では、風でボールが流されやすいので野手がしっかり捕球するまでハーフウェイの形をとる方がいいと思います。小さいプレーなんですけど、試合の勝敗を左右することもあるので、よければ一度みなさんも確認してくださいね。ところで今回でこのコーナーも70回目を迎えましたが、ここまで続いているとは我ながらヒマなんやな…。

▼参考文献:「野球指導の手引き」スポーツ科学トレーニングセンター編集 「マンガ野球入門」大沢啓二・監修(山海社) 他

    

No.69 送りバントを決めよう(2006.3.13)

 さて、今回は野球ネタでいっときましょう。取り上げるのは「ランナー1塁での送りバント」です。みなさんも試合で送りバントをしなければならない場面があると思いますが、これがなかなか難しいですよね。ランナー1塁での送りバントはファースト側に転がすのが理想的ですが、ピッチャー前に転がってダブルプレーになり、チームメートから深〜いタメ息をお見舞いされることも多々あるはずです。そこで今回はバントの時に「ファースト側にボールを転がす簡単テクニック」をご紹介しますので、この必殺技を身に付けてシーズン開幕を迎えて下さいませ。

 

意外と奥が深い「送りバント」

●送りバントってなに?

 それでは、「送りバント」とはなんぞや?というところからお話しましょう。送りバントとは、ランナーを進塁させるための「犠牲バント」のことです。1点を争う接戦の時や、相手投手が好投手でなかなか打ち崩せない時などに、得点圏(スコアリングポジション)へ確実にランナーを進めるための戦術です。よく使われる場面はランナー1塁のときですね。ランナー2塁、ランナー1・2塁の場面でも使われます。
 そんなこといちいち書かんでもわかっとるわいと思う方もいるでしょうが、とりあえず送りバントでの注意点を説明しましょう。まず送りバントではバントしにくいボール球には手を出さず、なるべくストライクゾーンのバントしやすいボールを選んでしっかり決めることが大切です。「バント決めなきゃ」と焦るあまり、初球の難しいボール球に手を出して失敗するケースも多いです。また、この他によくある失敗が、自分もセーフになろうとして中途半端なバントになったときですね。「犠牲バント」の名前の通り、バントしたあと1〜2秒はバッターボックスで仮死状態になるつもりでどっしりバントして下さい。またランナーもボールがちゃんと転がったのを確認してから進塁して下さいね。バッターがバントを空振りをして、見切りスタートで飛び出していたランナーがアウトになるケースもよく見かけます。

●どこに転がすのがベスト?

 さてこの送りバント、とりあえず転がせばいいんですが、冒頭で書いたようにピッチャーの正面に転がれば出塁しているランナーの方がアウトになったりします。転がりどころが悪ければ、せっかく出たランナーを先に進めることができず、攻撃の流れを悪くしてしまいます。そのため、送りバントでは転がす方向も重要になってくるんですね。
 では、どこへ転がせばいいのかということですが、一般的に「野手が処理に時間のかかる場所」ということです。ランナー1塁ではファースト側に送りバントをするのが理想的です。これは、1塁手が投手からの牽制のために1塁ベースについているため、バント処理のダッシュが遅れるためです。もちろんボールの勢いをころすことができれば、サード側でも構いません。内角の球を無理してファースト側に転がさなくてもいいということですね。またランナー2塁、あるいはランナー1・2塁の場面では、サード側にやや強い球を転がして3塁手に捕らせます。そうすることで3塁ベースを空けて、2塁ランナーがセーフになる確率を高くするわけです。
 このように、送りバントでは場面によって「転がす方向」というものがありますが、今回は基本の「ランナー1塁でファースト側に送りバントをする」ということを取り上げてみたいと思います。

 

簡単テクニックでファースト側にバント!

 それでは、ここからようやく本題、ファースト側にバントを決めるコツをご紹介しましょう。送りバントでは「ファースト側に転がしたいけど、実際試合になるとピッチャーの正面に転がってしまう」という人も多いのではないでしょうか。実は管理人も1年前までファースト側にバントを決めることがなかなかできなかったんですが、このテクニックを知ってからはほぼ完璧にファースト側に転がせるようになりました。ちょっとアヤしい通販番組のようになってきましたが、もしよろしければみなさんも一度試してみて下さいね。

●まずはボールを呼び込んで

 さて、最近試合で送りバントのサインが出たときによくみかける失敗ですが、下図Aのように「ファースト側にバントを決めなきゃ」と思うあまりに、バットを前に突き出すようにバントをしてしまうパターンです。この場合、ボールに当てに行こうとして空振りになることもありますし、バットに強くボールが当たるのでフライやハーフライナーになったり、ボールが野手の前に強く転がってしまうこともよくあります。特に外角のボールに対してこういう形になってしまうことが多いようですが、これでは送りバントにならないので、できるだけ自分のふところまでボールを呼び込んでバントをして下さい(下図B)。

   

●簡単テクニックで送りバントの達人に!

 そしてファースト側にバントを決めるテクニックですが、これが実に簡単。下図Dのようにバットを3塁側のファールラインと平行になるように持ってバントするだけです。試合でピッチャー前にしかバントが転がらない人は、実際自分が思っているよりもバットの角度が浅く、十分にファースト側に向けられていないためです。こういう場合は「3塁ファールラインと平行になるようにバットを持つ」というくらいの意識でバントをすれば、自然とボールがファースト方向に転がります。実際に管理人もこれを試してからおもしろいようにバントがファースト方向に決まるようになりました。図Cのように体ごとファーストに突っこむようなバントをしなくても、ボールを引きつけてバットの角度を変えるだけで十分ファースト方向に転がるので、一度ダマされたと思ってお試し下さいませ。

図C
ボールを当てに行くようにバントしてしまう悪い形

図D
ファールラインと平行になるようにバットを持つ

  

 送りバントの場合は、とりあえずボールの勢いをころして転がせばだいたいはランナーを進めることができるので、絶対にファースト側に決めなければいけないというものでもありません。ただ、ピッチャーの正面に転がることだけは避けたいな、という場合に使えるワザなので、お気に召したらぜひともお使い下さいませ。

  

あれこれ練習方法 

●バント試合

 それでは最後にちょっと面白い練習方法を紹介しましょう。それが「バント試合」。まず6人ずつに分かれて2チームを作り「バントのみ」の試合をします。つまり攻撃側は「バント」以外の攻撃は使えません。守備側も守るのは内野だけです。毎回ランナーを1塁においた状態からスタートし、送りバント、セーフティバント、プッシュバント、スクイズ、セーフティスクイズ、ツーランスクイズ、バントエンドランなどさまざまなバントを使って攻撃し、3アウトで攻守を交代します。攻撃中、ランナーがいなくなった場合は、また1塁にランナーをおいてスタートします。
 このような実践形式で試合をして、バントを決める技術や走塁技術を身に付けます。また守る側もバントシフトなどのフォーメーションを確認していきます。この練習のいいところは、内野程度の広さがあればちょっと狭い場所でもできるということですね。雨天時に体育館でも行うことが出来ますし、合同練習の時に取り入れることも出来ます。さまざまなバントの攻撃パターンをつくることができますし、守備側にとっても積極的なバントシフトを試せるので、機会があれば一度練習でお試し下さいね。

 

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 っちゅうことで今回は「ファースト側に送りバントを決める」ということについて取り上げてみました。そもそも今回のネタはうちの連中と飲んでる時にバントの話になりまして、そこでメンバーTに教えてもらったことなんです。野球はほんのちょっとした工夫で変わるモンですね。まぁ、送りバントは転がせばいいんですが、3年経っても5年経っても「とりあえず転がせばええわ」という気持ちのままでやっていると自分自身レベルアップしないような気がするんで、こういう小さな技術からちょっとずつ身に付けていきたいと思います。そして今回、見事に空中撮影が成功し、上から見た解説写真を作ることが出来ましたが、いかがだったでしょうか。これからも恐怖の肩車三段組みで撮影にチャレンジしていこうと思います。

▼参考文献:「野球指導の手引き」スポーツ科学トレーニングセンター編集 他

    

 

No.68 週1回の練習を考える(2006.1.31)         

 今回は野球ネタというよりも、タイトル通り「週に1回」しか練習できないクラブチームの現状について、いろいろ考えてみたいと思います。というのも先日、同じ関西女子チームのキャプテンと近況報告をしている時に、練習環境について同じような悩みをいろいろ抱えてることがわかったんですね。そんなわけで、今回は「週1回の練習」をいかに効率よく取り組むかということについて、とことんムダの多い管理人とともにみていきましょう。

 

練習できるのは1年間に30回だけ?

 さて、皆さんのチームはどんなスパンで練習していますか?私たちのチームは基本的に週1回、日曜日に2〜4時間程度の練習をしています。週2回以上練習しているチームもあるでしょうが、学生や社会人が中心となるクラブチームではやはり「週1回の練習」というところが多いのではないでしょうか。
 そうすると年間に練習できる回数は意外と少ないんですよね。365日(1年)÷7日(1週間)=約52。つまり、日曜日は1年間に52回しかないので、単純に計算すると52回しか練習できないわけです。さらに試合などが入ってきますから、実際はもっと少なくなります。私たちのチームでは、年間14回は日曜日に公式戦があるで、実際は1年間で38回しか練習ができないことになります。また雨で中止になることが毎年3回くらいありますし、他に練習試合が入ったりするので、それを考えると1年間で30回くらいしか練習できないことになります。シーズンオフがあるチームはもっと少なくなりますね。下図のグラフは知り合いのチームから2005年の活動内容の情報をお借りして掲載しました。いかがでしょう?チームによって差はありますが、練習できる回数はけっこう少ないですよね。このように全体練習できる日数が1年間で30日程度という状況の中で、毎年チームのレベルを維持・向上していくのはけっこう大変なことなのです。

 

限られた環境を上手く使おう!

 じゃあ、土曜祝日あるいは平日も使って練習時間を増やせばいい、と思うかもしれませんが、社会人が多いチームでは土曜日や祝日も出勤、平日は夜10時まで仕事という人もいるので、実際クラブチームという環境で全員がそろって練習できるのは、やはり「週1回、日曜日」ということになってくると思います。
 そんなわけで今回は「量より質」ということで、その限られた時間と場所の中で「いかに効率の良い練習をしてレベルを上げるか」という点に着目しながら、勝手に話を進めたいと思います。

●クラブチームの練習の現状

 大阪は野球施設も多いんですが利用する一般チームもびっくりするくらい多いので、グラウンドがなかなか確保できません。なので練習は週1回、グラウンドで2時間程度できればいい方で、市民公園の一角や河川敷の空いたスペースで練習していることも多いんですね。そのため、おのずと練習内容もフリーバッティングやノック、ティーバッティングやシングルノックといった全体での基本練習が多くなってしまいます。もちろんそのような全体の基本練習が中心で何も問題ないんですが、年間30回しかない練習の中でも、時には試合で出た連係ミスを修正したり、新しいフォーメーションに取り組んだり、新しい球種に挑戦したりする応用練習に時間を割きたいということもあります。ところが、時間も場所も人員も十分に確保できないクラブチームでは、そういう練習メニューに取り組むことがなかなかできないんですね。

●限られた時間と場所を上手に使おう

 そこで大切になってくるのが、まず「練習時間」と「練習場所」を上手に使うということです。うちのチームでは冬季メニューに個人練習を入れたりしてますが、他のチームでもグラウンドで練習できる時はグラウンド用のメニューを組んだりしているそうです。このへんの考え方を整理していくと、時間や場所を上手く使えそうな気がするんですよ。
 例えばシーズン中に出た課題を、個人的なことでもチーム全体のことでもかまわないので箇条書きにしてまとめておきます。そして下図のように練習場所と、そこで出来るメニューをつないでいきます。つまり「狭い場所で取り組む練習リスト」みたいなのを作るわけですね。雨の日の練習メニューも同様に作ります。
 また、グラウンドで2時間しか確保できない場合でも、1時間をフリーバッティングやノックなどの基本練習に使い、残りの1時間を課題練習にあてるなど、練習メニューに対して時間を割り当てていきます。さらに、より複雑な練習をするときは合同練習や合宿を開いて取り組みます。こうやって、チームの「課題」と「練習時間・場所」をあらかじめ組み合わせたモノを作っておくとけっこう便利です。これを年間30〜50回の練習の中で上手く取り入れていけば、効率よく練習できて課題もクリアできるかもしれませんよ。

 

●狭い場所こそチャンス!

 さて、いろんなチームの人と話していてよく聞くのは「狭い場所では練習も単調になる」「狭い場所での練習では人数も集まらない」ということです。
 でも、私は逆に「狭い場所こそチャンス!」と思うんですよ。確かに狭い場所ではフリーバッティングなどはできませんが、普段取り組めないような1つの技術を集中して磨くことができるのです。例えば前述したように「新しい球種を覚える」とか「フォームを改造する」とか「ジャンピングスローをマスターする」とかいうものですね。そう考えるとちょっとワクワクしてきませんか?
 狭い場所では、できる練習メニューが限られてしまうため、モチベーションを保って練習することは本当に難しいことです。実は管理人もすぐに飽きてダラけてしまいます。でも逆にそういう場所での練習こそ、新しい技術を身に付けたり、苦手な技術を克服したりしていくチャンスなのかもしれません。たとえ20m四方しかない場所での練習でも、あなた次第できっと意味のあるモノに変えられるはず。そして逆境をチャンスに変えて楽しめる人ほど成長すると思うのです。そんなわけで「今日は練習場所が狭いからあまり行きたくないな〜」と思っちゃう人は、狭い場所での練習の時こそ、自分が興味をもっている課題に取り組んでみるよう心がけてみてはいかがでしょうか。
  ちなみに先日、うちのカントクが持ってきた本をチラ見したとき、狭い場所でもできるおもしろそうな練習メニューがいくつか載っていたので、その書籍をご紹介しときましょう→「中学野球の指導とノウハウ」石井忠道・著(ベースボールマガジン社)。これはけっこう参考になるので、課題と合うモノがあったら試してみて下さいね。

 

目的意識を持とう 

●練習のための練習?

 さて、私は練習で大切なのは「目的意識」ではないかと思います。冒頭で書いたようにクラブチームでは年間30〜50回程度の練習しかないわけですから、1回1回の練習で何か1つでもいいから明確な目標をもって取り組むことが、上達への近道だと思うのです。例えば筋トレでもストレッチでも、何も意識せずにやるより「アタシは今、上腕二頭筋を鍛えてるのよ!」とか「アタシは今、ヒラメ筋を伸ばしているの!」と鍛えたり伸ばしたりする筋肉を意識する方が効果があるそうです。
 練習でも同じで、目標もないままただなんとなく練習してしまうと、それは「試合のための練習」ではなく「練習のための練習」になってしまいますよね。ヘタしたら数をこなしたことに満足して終わってしまうことになりかねません。しかし、「今日アタシたちは試合でミスしたランダンプレーを修正するの!」というような明確な目標を持って練習をすれば、たとえ短時間でも充実した練習ができるはずです。ということで、どんな小さなことでも目的意識を持って練習してみてくださいね。また、普段と違う特別メニューをするときは、練習前に「今日は○○という目的でこの練習しましょう」と全体で目的確認をしてからはじめると、練習への取り組み方も変わってくるんじゃないでしょうか。

●ゴールパーティ 〜みんなで課題を見つけよう〜

 さて、それでは次に効率よく練習するための課題を見つけましょう。ところがこれがなかなか難しい。「どこがダメなのかよくわからん」「課題が多すぎてまとまらない」という人もいるかもしれません。ところが手っ取り早く課題を見つけてまとめられるのが試合後のミーティング。
 勝っても負けても「ランダンプレーでミスをした」「カバーの動きがわからない」「サインを見落とした」など、ミーティングでは具体的な意見が出てくると思います。どんな小さな事でもいいのでこういう意見をどんどん集めて、チームで未達成な部分を洗い出し、課題をまとめていくわけです。
 しかも、これのエエところはメンバー全員がチームの問題点を共有できることです。例えば指導者側から選手側に課題を与えても、選手側が感じている問題点と違っていたり、指導者側の意図をくみ取りきれない場合は、「やらされている」という心理が働いてなかなか効果的な練習が出来ません。ところがミーティングの中で話し合った問題については、そこにいるメンバー全員でその問題を共通認識できるわけですから、その課題にもみんなが統一した目的意識をもって取り組めます。クラブチームという環境では上から下へのトップダウン方式より、下から上へのボトムアップ方式で取り組む方がいいこともあるんですね。チームが「指導者主導型」なのか「選手主導型」なのかにもよると思いますが、時にはみんなで課題をみつけ、みんなで目標を立てていくという共同作業が効果的である場合もあります。
 例えばアメリカではそういう手法を「ゴールパーティ」といいます。シーズン前に選手を集めてミーティングを開き、選手たち自身でそのシーズンの目標を決めさせるのです。そうやって自分たちで考え自分たちで取り組む力をつけさせるわけですね。おそらくみなさんのチームも試合後にミーティングをしていると思うので、「おもしろそう」と思われた方はそこで小さなゴールパーティを開いてみてください。

 

マンネリ化を防ごう

 それでは最後に練習のマンネリ化を防ぐ、ということについて考えましょう。生き物は同じ環境で同じ動作を続けると大きなストレスを感じるようになるんだそうです。練習でも同じような内容を繰り返していると、無意識のうちのストレスがたまり、集中力がなくなったり、意欲が低下したり、作業能力や学習能力が低下してくるわけです。また練習がマンネリ化することで新鮮さがなくなって「嬉しい」「楽しい」といった感情も感じにくくなるため、練習に対しておもしろみがなくなってくるんですね。
 みなさんも経験があると思いますが、同じ練習メニューを2時間もやり続けると、さすがに飽きてきてダラ〜グタ〜という感じになってくるはずです。また、毎週同じメニューばかりしていると、「また同じかな〜」とゆううつな気持ちになってついついサボってしまうイケない子も大量発生してくるんじゃないでしょうか。
 野球の技術習得には反復練習が必要ですが、ときには目先を変えて新鮮な気持ちで練習に取り組める工夫も必要です。例えばおもしろいのが、10分間刻みの練習トレーニングというものです。10分おきにランニング、キャッチボール、ティー、ベーラン、ノック、フリーと練習メニューを変えていきます。脳は変化を与えると覚醒レベルが高まるので、10分といえど効率よい練習ができるんだそうですよ。ま、詳しいことはこの本に書いてたので読んで下さいませ→「掟破りのコーチング術」高畑好秀・著(山海社)。
 他にも合同練習をしたり、アイデア練習法を試したりして、新鮮な気持ちで取り組めるよう心がけて下さいね。気持ちがフレッシュな方が、乾いたスポンジが水を吸い込むように技術を吸収していくんだそうですよ。この手の参考書で私が読んで面白かった本は、「野球89のアイデア練習法」「野球89のセンス上達法」高畑好秀・著(池田書店)あたりですかね。興味のある方は、飲み代1回分をケチったら買えるんでぜひともどうぞ。

▼参考文献:「野球のメンタルトレーニング」高畑好秀著(池田書店)

 

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 と、いうわけでいかがだったでしょうか?年間に練習している回数が意外にも少なくて、ちょっと危機感を持った人もいるかもしれません。学生時代は毎日のように練習していたわけですが、いまやそれが1年で1〜2ヵ月程度の練習量。しかも練習場所も、参加メンバーも十分に確保できないというような現状に苦労しているチームも多いはずです。
 そんなわけで今回、効率の良い練習ということでいろいろ提案させていただきましたが、まぁ、実際そんなにうまくもいかんでしょう。でも「限られた時間と場所を上手に使いたい」という意識を持つだけでも、いろんなことが変ってくると思います。毎週の練習で「今日はこれができた」というものを見つけていけたら、きっとレベルアップしていくと思います。ということで、みなさんも課題を持って効率のいい練習をしていって下さいね。ちなみに私の当座の課題は、リハビリでケガを治して春には30mのスローイングができるようになることです。野望はでかいんですが、目標は地味なんですよ…。

  

No.67 スコアを活かそう!(2005.12.27)        

 ちょっと前、スコアマニアTちゃんと飲んでいるときにスコア談義に花が咲きました。スコアというのは単なる記録用紙と思われがちですが、そうでもないんですよね。使い方によっては相手のクセまでわかってしまう魔法の紙です。っちゅうことで今回は管理人とともに、野球でもなかなか陽の当たらないスコアという分野に目を向けてみましょう。これを読んだ後は、カバンの奥に眠っているスコアを取り出して集計したくなるかもしれませんよ。

 

スコアってどんなもの?

 さて、スコアってどんなもの?ということですが、簡単に言うと試合の経過を記号や数字で表していくモノです。下の図に、簡単な例を挙げておきましたので参考に見て下さい。で、スコアの付け方も見方もまったくわからないという人は、スコアが付けられるようになってからここを読んだ方がいいかもしれません。たぶんワケわからんと思いますよ。

 では、みなさんは何のためにスコアをつけてると思いますか?とりあえず記録のためにつけてるというチームもあるかもしれません。「ただの個人的な趣味♥」ってのも有りですけど、でも単なる記録だけで終わらせるのはもったいない気もするんですよね。ちょっと集計してみればスコアから面白いことがいろいろわかります。スコアの分析を次の試合に活かせたら一石二鳥。っちゅうことで次からはその分析についてみていきましょう。

 

スコアで何がわかるの???

●スコアから策を練る!

 さて、スコアから何がわかるのか、っちゅうことですが、基本的なところではまず打率、出塁率、得点圏打率、防御率、守備率、盗塁成功率などです。これをどう活かすのかというと、例えば出塁率の高い選手を1番バッターに、得点圏打率の高い選手はクリーンナップに、というように合理的に打順が組むことができます。もちろんこういう数字だけでなく、練習での調子の良し悪しや選手の適性もみなければいけませんが、打順を組む上でひとつの目安にはなります。
 また自責点と投球数の関係をみて、立ち上がりは悪いが尻上がりによくなるタイプのピッチャーなのか、100球前後でバテて打たれるタイプのピッチャーなのかなどを把握することで投手交代のタイミングもある程度つかめます。すると2番手のピッチャーも準備が出来るので、いきなり登板ということもなくなるワケです。
 このように、スコアから出る「数字」としての情報が、作戦を立てる上で役立つこともあると思います。

●スコアが語る真実の姿!

 さて、スコアの出す「数字」にはさらに重要な役割があります。
 例えば試合後のミーティングで選手が「ランナーが塁に出ても得点につながらない」と発言したとします。しかもスコアでも「残塁数が多い」という結果が出ればその発言を裏付けできるわけですから、「効率的に点が取れていない」ということはみんな納得しますよね。じゃあ、次はヒッティングばかりでなくスクイズも使って得点力を上げようとかいう具体的な対策が出てきます。
 またこれとは逆に、ある選手がまったく打てなくて「3番バッターから9番バッターに降格だ!」となったとします。ところがスコアから打率を計算してみたら3割近く打っているという結果が出たとします。これは、その選手がチャンスではまったく打てなくて印象がすごく悪いんですが、実はランナーがいない場面ではよく打っていた、ということかもしれません。それならば9番に下げるよりも1番を打ってもらった方がチームにとってもいいですし、本人にとってもやりがいが出るというわけです。
 このように、人間というものはついつい印象の強い出来事が頭の中に残ってしまい、そのイメージに頼って判断してしまいますが、スコアの結果というのはそういうイメージと現実のズレを修正したり、または再確認したりするという重要な役割を持っています。すべてを数字に頼ってもいけないと思いますが、これからはスコアを判断材料のひとつとして捉えていくことも大切なんじゃないでしょうかね。
 では次からはさらにディープなスコアの世界へ入り込みましょう。数字アレルギーの人は気分が悪くなったらすぐ退席してくださいませ。

 

こんなことまでわかっちゃうかも!データ分析

 ここからはもっと具体的にスコアをみていきます。個別にデータを集めていけば、バッターやピッチャーの特徴がわかることもあります。ここではその簡単な例を実際のスコアから紹介しましょう。ちなみに主に引退した人を中心に、3〜5年前のデータ使ってます。

●バッターの初球の対応をさぐる!

 バッターにもいろんなクセがありますが、特徴的なのが「初球」の対応の仕方。これがハッキリしているバッターにはある程度攻め方を決めることができます。それでは具体的に見ていきましょう。

■バッター・阪神 虎子さん(仮名)の場合

 虎子さんの打席のスコアを集めてみましたが、下図スコアのボールカウントに注目してください。その部分の記述が全体的に少ないですよね。つまり彼女は、初球からどんどん振ってくるいわゆる「早打ち」バッターです。しかも初球を打ってヒットになる確率も高いんですよ。こういうバッターに対しては、バッテリーは初球の入り方を注意しなければなりません。まずはボール球から入ったり、ストライクからボールになる変化球で打ち取ったりという感じですね。

 

■バッター・読売 ジャビ子さん(仮名)の場合

 次にこのジャビ子さんですが、下図のスコアの「初球」に注目して見て下さい。基本的に初球はストライクでも見逃す傾向があります。打率もいいので、じっくり配球を読んでねらい球を絞ってくるタイプのバッターです。ただ、初球を見逃すということは、こういうバッターに対しては、バッテリーは初球に必ずストライクを入れてカウントを有利にしておいた方がいいでしょう。また、こういう情報があれば試合前にバッテリーで打ち合わせをして確認しておくことが必要になってきます。

 

●ピッチャーの四球パターンを読む!

 次はピッチャーの四球を出すパターンを分析してみましょう。まぁ、ちょっといいかげんに集計してしまったのであまり正確じゃないですが、とりあえず「例」ということで参考程度に見て下さいね。

■ピッチャー・広島 鯉子さん(仮名)の場合

 鯉子さんはやや四球の多い投手でしたが、まず下図にカウントが0-3になった場合のスコア(一部)を参考に載せてみました。1シーズンに出した四球の傾向を調べたところ、カウント0-3から次に投げた球がストライクになる確率はだいたい3割、ボールになる確率は約7割でした。っちゅうことは初球からボールが3つ続けば四球になる確率が高いので、この場合はムリに打ちに行くより待った方が得策ということになります。たとえ1球見逃してストライクが入ったとしても、1-3でまだ打者有利のカウントですね。

○カウント0-3

 次にカウント1-3のスコアを一部参考に載せてみました(下図)。1-3での全体の傾向を調べると、カウント1-3から次に投げた球がストライクになる確率はこれも約3割強で、ボールになる確率は約7割弱でした。なのでカウント1-3でも、絶好球が来れば打てばいいですが、苦手なコースであれば見逃すくらいの余裕を持って打席に立った方がいいかもしれません。ちなみに2-3から四球になる確率は約5割でした。これはバッターも追い込まれて打ちに行っているからと思います。

○カウント1-3

 ところで鯉子さんと対象にある現役のコントロールのいいピッチャーを調べてみたんですが、カウント0-3から次に投げる球がボールになる確率は0%、1-3からの次の球がボールになる確率も0%という結果でした。つまりカウントが悪くなっても四球を出さないんです。確かにこのピッチャー、8試合で3つしか四球を出さないくらいコントロールがいいんですよね。こういうピッチャーはカウントが悪くなっても、四球を狙うよりどんどん打っていった方がいいです。
 このように、相手投手の四球を出すパターンがある程度わかれば、試合前の打ち合わせでメンバーに情報を伝えることができます。バッターも事前に情報を知っていることで心理的に余裕をもって打席に立つことができるかもしれません。また監督も試合の状況によっては「ここは1球待って四球を選べ」というサインを出すこともできるわけです。もちろん「待て」のサインを出す時は、相手投手がきわどいコースをついてボールになっているのか、明らかにコントロールを乱してボールになっているのかを見極めなければいけませんが、カウント0-3または1-3という場面でもスコアのデータを判断基準の一つとして利用できるということですね。

 と、いうことでスコアを深く読んでいけば、この他にもいろいろたくさんわかることがあると思います。ただ、細かいところを調べるのに市販のスコアではちょっと限界もあるので、次からは特殊なスコアシートを使っていろんなことを視覚的にみていきましょう。 

 

さらにアナタを丸裸!オリジナル・スコアシート

 さて、みなさんそろそろオエッという感じになってきたかもしれませんが、ついてこれそうな方はさらに深くスコアの世界へ陶酔していきましょう。

●オリジナル・スコアシート

 最初に出てきたスコアマニアのTちゃんもそうですが、私の周りではオリジナルのスコアシートを作っている人が何人かいます。そして何を隠そうこの私も数年前にオリジナルのスコアシートを作っているんです。ま、テレビでよく見るストライクゾーン9分割型の視覚的なスコアシートですが、当時どこを探しても売ってなかったので自分で作っちゃったわけです。あとでTちゃんがプロ野球のスコアラーからもらったスコアをみたらけっこう似ていたので、管理人のセンスもなかなかなもんですよ。そしてそのプロのスコアをちびっとパクりながら、さらに数年間改良を続けて完成したのがいま私が使っているスコアシートです。どんなものかは下のリンクから見に行って下さいね。画像版とPDF版を作りましたが両方とも同じものなので、見やすい方を見てください。っちゅうことでみなさんも、スコアをいろいろカスタマイズしてオリジナルのモノを作ってみてはいかがでしょう。けっこう楽しいですよ。

 [オリジナルスコアシート]

 [オリジナルスコアシート(PDF版)A4サイズ]
 [オリジナルスコアシート(PDF版)B4サイズ]
  ※PDFが閲覧できない場合はAdobe Acrobat Reader(無料ソフト)をダウンロードしてね。

●こんな感じで使ってます

 先ほど紹介したスコアですが、どのように使っているかというと下図の通りです。記述方法についてはスコアがオリジナルなので、このタイプのものはもう好き勝手にルールを決めて『オレ流』で書いてもらえばええんじゃないかと思います。一応、下記リンク先に記入例をつくっておきました。

[記入例]

[記入例PDF]

 

●バッターの弱点を徹底分析!

 で、上のオリジナルスコアからどんなことがわかるかということですが、基本的にはバッターの苦手なコースなどですね。それではいくつか例を挙げておきます。

■バッター・中日 竜子さん(仮名)の場合

左図はピッチャーからバッターのストライクゾーンを見た図です。竜子さんは右バッターですが、彼女の打席のデータを集めてみたところ、左の画面をみてわかるようにインハイや高めのボール球をよくカットしています。ところがバットにボールは当たるんですが、前に飛ばないんですね。このバッターにはインハイや高めのボール球を振らせてカウントを稼ぎ、低めの変化球や外に逃げる変化球で打ち取ります。

■バッター・日本破無 闘子さん(仮名)の場合

闘子さんはバッティングのいい選手でどんなボールにもついてきますが、ある1打席をピックアップしてみました。左画面のようにインコースの球がすべてファールになっています。インコースのボールをさばくときに体が開いてしまうんですね。このバッターはインコースを上手く使ってカウントを稼いで追い込みます。そして内に残像を残して外の変化球で勝負しますが、ストライクゾーンの球は上手く当ててきますから、追い込んだ場合はボールからボールになる変化球で打ち取ります。

■バッター・矢区留戸 燕子さん(仮名)の場合

燕子さんはバントのサインが多く出る人ですが、彼女のバントの時のデータを集めてみました。◇はバントのマークですが、中に▽を入れている場合は変化球ということです。左画面を見ると、外角低めの変化球はカットになったり、ファールになったりしています。どうやら外角低めの変化球がお嫌いとみえますな。ちゅうことで、バントが予想されるときは低めに変化球を使います。

 このスコア、このようにしてバッターの弱点などを探ったりするのに使います。でもある程度の傾向はなんとなくわかりますが、上の例のようにハッキリとクセの出る人は少ないです。つまりは、このスコアの情報も絶対的なモノではなく、あくまで「こんなんちゃうかな〜」っちゅう程度の参考資料にしかなりません。で、アマチュア野球でここまでする必要あるのか?と思かもしれせんが、逆にアマチュア野球でもここまでやってみたら?と私は思うんですよ。非常識も定着すれば常識っちゅうことでね。数年後にはこういうタイプのスコアが当たり前になるかもしれません。もちろんここまでしなくても一般のスコアシートで十分いろんな事がわかりますからいいんですけどね。ちなみに管理人はもう完全に遊び心でやってます。

 

スコアラーというポジション

 ということでスコアの役割やその面白さを多少はわかっていただけたかと思いますが、最後にスコアラーというものについて書いておきます。私は野球にはピッチャーやキャッチャー、あるいはランコーといったポジション以外にも、スコアラーという重要なポジションがあると思うんです。例えば、単に記録するだけでなく、イニングごとに点差をメンバーに知らせたり、相手バッターが前打席でどこに打ったのか、どんな球を打ったのかバッテリーに知らせたり、味方投手の投球数を監督に知らせたり、もっと言えば配球や相手の作戦を読んでメンバーに伝えたりという役割です。
 スコアラーは他と同様に重要なポジションですし、そのポジションについたらその役割をきちんと果さないといけません。なんだったら、試合前のメンバー発表で最後にスコアラーの名前も発表するくらいでもいいんじゃないかと思うんですよ。またスコアラーがとった記録は、できるだけチームの活動に活かしてほしいと思います。たぶんね〜、どこのチームでもスコアを書くのはだいたい試合に出ない人だと思うんですが、その人が書いたそのスコアを無駄にせずチームに還元することがチームワークやチームプレーという意味でも大切なんじゃないでしょうかね。私も試合に出ていない時に書いた自分のスコアがゴミ箱行きだったらブチギレ“脳天カカト落とし”ですが、何かの役に立っていたらチョットうれしいです。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 

 さて、長々とスコアについて書いてまいりましたがいかがだったでしょう。最近、私の周りでスコアが書けないという野球人がけっこういるんですが、もし興味を持たれたらこれを機会にぜひとも勉強してみて下さいね。きっとプラスにはなると思いますよ。
 そしてここまでさんざんスコアの利点を述べてきたんですが、実際の試合ではイレギュラーも多く、スコアが弾き出す数字も絶対的なモノとは言えません。スコア分析のデータが裏目に出ることだってあります。だから数字至上主義というのもどうかと思うんですよね。スポーツではスコアの数字では表せない選手のチカラがあります。いつも声を出してチームを盛り上げてくれるとか、ピンチの時に元気づけてくれるとか、カバーリングが誰よりも速いとか、ここぞというときに打ってくれるとか、そういうものはスコアには出ませんからね。なので野球をする上ではスコアの数字に頼り切らず、あくまで判断基準の一つとして使っていくのがベストかと思います。
 ちなみに本文中で使った仮名ですが、他にも西武 獅子(西武ライオンズ)、露手 海子(千葉ロッテマリーンズ)、織楠 牛子(オリックスバファローズ)、軟番駆 鷹子(ソフトバンクホークス)、横浜湾 星子(横浜ベイスターズ)、楽天 隼子(楽天イーグルス)っていうのを考えてたんですが、使えずじまいだった…。

 

 

No.66 バックホームのボール(2005.11.19)         

 さて、今回はさらっといきましょう。ネタは「内野手のバックホームの送球」です。実は何年か前に同じ大阪の強豪チームと合同練習をしたんですが、そのときノックでのバックホームの送球がものすごく丁寧だったんですよ。キャッチャーの左ひざのあたり、つまりランナーにタッチしやすい場所ですね、そこに必ずボールがくるんです。しかも内野手全員がそこに投げるんですよ。かなり衝撃でした。比べて私たちの送球はキャッチャーの構えたところから四方八方へ大きくそれたボールが多く、かなり大ざっぱ。ちょっとしたプレーなんですけど、実際の試合では勝敗を分けるくらいの重要なプレーになるかもしれません。っちゅうことで今回は、ザッパーな管理人とともに「バックホームの送球」を掘り下げてみましょう。

 

バックホームのボールはどこへ投げる?

 上であれだけ話を振っておきながら改めてアホな質問をしますが、みなさんはバックホームの時、ボールをどこへ投げますか?もちろんキャッチャーですよね。でもキャッチャーのどこへ投げるかまで意識していますか?バックホームは1秒を争うタッチプレーなので、できるだけランナーにタッチしやすい場所、つまりキャッチャーの左ひざのあたりに投げるのが理想です。
 ところが試合を見ていても、バックホームのときに「送球さえ良ければアウトになったのになぁ」というプレーがけっこうあるんですよね。シートノックを見ていても、バックホームの時にかなりアバウトな送球があったりして、ただなんとなくキャッチャーに投げ返している人も多いんじゃないかと思います。でもバックホームは送球の良し悪しで1点入るかどうかが決まってしまう重要なプレーなので、「あまり意識してないかな」と思った方は、ここらでいっちょバックホームの送球を極めてみてはいかがでしょう。

 

ストライク送球を投げよう

 さて、「バックホームの送球なんて適当に投げてたらええんちゃうん?」という人もいるかもしれませんが、これがけっこうあなどれないプレーなのです。それではそのへんを詳しく見ていきましょう。

●バックホームの送球が大きくそれた場合

 まず、バックホームの送球が大きくそれた場合ですが、下写真のようにランナーにタッチするのに時間がかかるんですね。その隙にランナーにホームを奪われてしまうわけです。また、送球がそれると追いタッチになることも多く、審判に対する印象も悪くなって「セーフ」になったりします。

バックホームの送球が1塁方向にそれたり、高めに浮いた場合。

   

捕球してからタッチしにいくまでの動作が大きくなり、時間がかかります。この間にランナーの足が先にベースに入ってしまうこともよくあります。

 

●バックホームの送球がキャッチャーのひざもとに来たの場合

 次に、バックホームの送球がキャッチャーのひざもとに来た場合ですが、下写真のようにタッチをするまでの動作が最短で済みます。上の写真のように送球が大きくそれた場合は体を大きく動かさないといけませんが、キャッチャーのひざもとに「ストライク送球」がきた場合は、捕球した位置からミットを下に降ろすだけで済むのです。きわどいタイミングでもアウトになる確率が高いわけですね。

キャッチャーのひざもとにバックホームの送球が来た場合。

   

タッチをするのに最短の動作で済みます。

 
こころも鍛えよう

 このように、バックホームでは送球の良し悪しによって点が入るか入らないかが決まることもあります。なので、普段のノックでもバックホームの時は常にキャッチャーのひざもとに投げることを意識して下さいね。
 また、捕球するキャッチャーも、バックホームの時に「ここに投げるんだよ」と低く構えて内野手に投げる位置を示してあげて下さい。送球が高くなったり1塁側へそれた場合も、投げる位置をお互い確認することが大切です。こういう事の積み重ねで基本が出来ていくと思いますんで、バックホームの練習も一度見直してみてくださいね。

●実戦に近い心理状態で

 さて、このバックホームのプレー、実際の試合では心理的にかなりプレッシャーのかかる状況です。点が入るかどうかのチビりそうな場面も多いはず。ただ、こういうプレッシャーがかかる場面では、いくら練習をしていてもそのとおりのプレーをするのはとても難しいものです。なのでバックホームの練習をするときは、実戦に近いプレッシャーの中で、いかに正確に素早く送球できるかということを練習した方がいいかもしれません。たとえばシートノックでも、ストライク送球を投げないと腕立て伏せ100回とか、送球が少しでもそれたらおすぎ&ピーコのモノマネ30回とか、そういうペナルティを課すわけです。シングルノックでも10人連続でストライク送球をしないと、全員ラインダンスで町内一周の罰ゲームとかですね。そういう極限の心理状態を作り出して、その中で確実な送球が出来るように心身ともに鍛えてみてはいかがでしょう。ま、うちの連中はおすぎとピーコのモノマネくらいなら喜んでやりそうですけどね…。

 

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 

 ということで今回もミクロな世界にこだわってみました。そんなことくらいとっくにやってるわい、という方もたくさんいると思いますが、改めて確認っちゅうことでですね。でも「バックホームの時にストライク送球をする」たかがそれだけのことですが、意識してやらないとなかなか身に付かないもんです。最近いろいろと感じるんですが、バックホームひとつにしても、ただなんとなくキャッチャーに投げ返すのではなく、「このボールはどの位置に返球するのがベストか」という目的意識を持って練習するだけで、ずいぶん変わってくると思うんですよ。何か特別な練習をしなくても、普段の練習の中で心がけひとつで上達することってたくさんありますよね。キャッチボールでもトスバンでもバントでもです。ちょっと意識するだけで変われると思うので、またみなさんもいろいろ工夫して試してみて下さいね。最近中学生とかもここ見てるので、たまにはまともなことを書いておこう…。

 

  

No.65 これから野球をはじめるなら(2005.9.28)       

 前回はちょっとね〜…、だいぶディープなことをしてしまって猛省してます。ここであんましマジメなことしたらいかんですな。そもそもこのコーナー、うさん臭いのを売りにしようと思ってたんですよね。と、いうことで原点に戻ってアヤしいネタを展開していきたいと思います。
 で、今回は「これから野球をはじめるぞ!」という人に、手軽に練習できる方法をご紹介したいと思います。これから野球デビューを企んでる人はちょっと参考にしてみて下さいね。

やわらかボールを使ってみよう

 野球はボールの他にグラブやバットといった道具を使うスポーツなんですが、初心者にとってそれらの道具をいきなり使いこなすのは至難のワザ。そんなわけで今回紹介するのは、そのグラブやバットを使う前に「やわらかボール」を使って野球の基本動作を身に付ける方法です。
 この練習のええところは、お手軽で他人に迷惑をかけずにできるという点です。右写真のような柔らかいゴムボールやカラーボールは100円ショップなどですぐ手に入りますし、柔らかいボールだと部屋の中で使ってもうるさくないので家人や隣人に迷惑をかけることもありません。
 っちゅうことで、さっそくこのやわらかボールを使った練習を具体的に見ていきましょう。

キャッチボールをしよう

 さて、まずキャッチボールですが、初心者に多い捕り方は下図1のような形です。最初はボールが怖いので、グラブを前に出して上から押さえつけるように捕ります。顔もボールからよけるような感じで、シングルキャッチ(片手捕り)になることが多いです。
 しかし捕球の基本は、図2のようになるべく自分の体の近くで両手で捕球します。そうすることで落球を防ぎ、次の「投げる」という動作にスムースに入ることができます。それたボールはシングルハンドで構いませんが、正面に来たボールはできるだけ基本動作で捕りましょう。

 

●レッスン 〜キャッチボール〜

 ここからはその捕球の基本を身に付けましょう。まずグラブをはめずに『やわらかボール』を使って、素手で軽くキャッチボールをします。グラブをはめずに素手でキャッチボールをすると、片手では捕りにくいので自然と両手でボールを捕りにいくようになります。これで「両手で捕る」という基本動作を体に覚え込ませるわけですね。
 捕球の時には「両手で捕る」「体の近くで捕る」ということを心がけて素手キャッチボールをしてみてください。相手はお父さんでもお母さんでもダーリンでもハニーでもいいので、家に誰かいれば投げてもらって下さいね。相手がいない独りもんは寂しく壁当てでもしてください…。

 慣れてきたら、ゆっくりいろんなところに投げてもらってシングルキャッチ、逆シングルキャッチ、フライのキャッチなどを試して下さいね。もちろん一人でもできるので、最初はともかくボールに慣れてください。そして最終的にグラブをはめて、キャッチボールをしてくださいね。

  

ゴロを捕ろう

 次にゴロの捕り方ですが、ここでも初心者に多い捕り方は下図1のような形です。やはりボールが怖いので、顔をボールからよけてシングルキャッチ(片手捕り)になることが多いです。足がそろう、腰が高い、というのも特徴ですね。そしてなぜか右手の動きが妙にかわいいことも多いですな…。
 ただやはりゴロの基本的な捕球は、図2のように腰を下ろしてできるだけ正面に入り、両手で捕るという形になります。腰が高いとトンネルしてしまいますし、グラブを上から下に出す悪いクセがついてしまいます。

 

●レッスン 〜ゴロの捕球〜

 初心者に多いのは、「グラブだけ」で捕りにいこうとしてしまうことです。そうすると上の図1のような感じになってしまいますので、しっかり腰を落としてカラダ全体で捕りにいきましょう。
 ここでも基本練習は、上記と同じように素手でゴロを捕るという方法です。ゴロが来たらできるだけ打球の正面に入り、左足の前あたりでボールを捕ります。ボールを捕ったら右手をかぶせてボールがこぼれるのをふせぎます。
 ゴロは場合によってはシングルキャッチで捕った方がいいこともあるんですが、とりあえず正面のゴロを両手で捕るという基本の形を身に付けてくださいね。
 この練習、初心者だけでなく経験者でも、捕球の際に「腰が高い」とシバかれた人には有効なんで、悪いクセ直して下さいね。

 

バントをしてみよう

 今度はバントについてみてみましょう。野球を初めてするという人がバントをするとだいたい図1のような感じになります。バットと目線がかなり遠いんですね。ボールが怖いために、体から離れたところでバットにボールを当てちゃうわけですが、そうするとバットのヘッドが下がってフライになったり、ボールを見ていないので空振りになったりします。
 確かに女の子、顔にボールが当たることだけは死守しなければなりませんが、バントの基本は図2のようにバットと目線を近づけます。そうすることでしっかりボールを見てバットに当てることができますし、変化球にも対応できます。バット越しにボールを見るという感じでバントしましょう。

 

●レッスン 〜バント〜

 このバント、簡単そうに見えますがけっこう難しいんですよね。構え方、ボールの勢いの殺し方、転がし方、バットの角度…といろいろあるのですが、「ボールをとらえる」という一番基本的なことをバットを使わずに素手でバントをして身に付けましょう。
 まず軽く投げてもらったボールをしっかり見て、手のひらで受け止めるようにして転がします。この時できるだけ手のひらと目線の位置を近づけて下さい。低めのボールも手だけでやらずに、ヒザを曲げて低い姿勢でバントしましょう。
 慣れてきたらサード側、ファースト側と転がす方向を決めてバントしましょう。この時の右手の角度が、そのままバットを持ってバントする時の角度になります。

 

●おまけ 〜バッティング〜

 ちなみに上記の素手でバントするという練習法、バッティングの方にも応用できるそうです。この方法でボールをミートするポイントやボールの軌道を確認するわけですね。投げてもらう人に、アウトコース、インコース、真ん中など投げ分けてもらってそれぞれのミートポイントをしっかり把握しておきましょう。これなら部屋の中でもできるので、お気に召したらお試し下さいませ。

 

 

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 

 っちゅうことで今回もいかがだったでしょうか。これらの練習は部屋の中で簡単に練習できるんで、「外で練習するのは恥ずかしいわ…」という人は一度お試し下さい。別にやわらかボールを使わずに軟球でやってもらってもいいんですが、室内で使うと危ないしうるさいし、けっこう痛かったりもするので最初は柔らかいゴムボールなどを使った方がいいかもしれませんね。
 ま、こんな方法でほんまに上手くなるのかどうかはわかりませんが、こういう練習もあるぞってくらいに読んで下さい。私は子どものころ、最初はグラブをつけずに練習してましたけど、まぁ確かにそれで基本的なものは身に付いたかな〜と思います。毎日部屋でボコボコ壁当てをして、隣のオクノさんには多大な迷惑をかけたなとも思いますがね…。

  

 

No.64 セオリーを崩せ!「1・3塁の攻防」(2005.8.27)  

 え〜っと、やっとこの「ランナー1・3塁での戦術」というテーマにもってこれました。 実は女子野球では「ランナー1・3塁」の場面で、ある特有の戦術が多用されているんですね。なので今回管理人はその戦術を分析し、そしてそのセオリーを崩してみようと思います。長編になったんで、興味のあるところだけ読んで下さいね。それでは夏の終わりも近づいてちょっとアンニュイな気分になっているみなさん、よりエキサイティングな「1・3塁戦術」を試して実りの秋を迎えましょう!

 

女子野球「ランナー1・3塁」での戦術は?

 野球には、プロ野球からはじまって高校野球、少年野球、草野球、障害者野球、女子野球といった様々な分野があって、それぞれが独自の野球を展開していると思います。戦術もそれぞれの体力やカラーに合った独特のものが使われていて、見ているとけっこうおもしろいですよね。その中でも「ランナー1・3塁」という場面の戦術には、それぞれの独自性が出ているんじゃないかと思います。
 では、女子野球では、この「ランナー1・3塁」という場面でどのような戦術がとられるのでしょうか。実は圧倒的に「盗塁」が多いのです。なので今回、なぜ盗塁なのか、他に攻め方はないのか、あるいはそれを防ぐ方法はないのか、というあたりを調べてみました。

 

ほんまに盗塁が多いの?

 さて、「ランナー1・3塁」ではほんまに盗塁が多いのかということですが、みなさんのチームでも「盗塁」のサインが出ることはけっこう多いんじゃないでしょうか。確かに「盗塁」は多いけども、ほんまにそうなん???という方もいると思うので、女子野球の「1・3塁での戦術」を分析してみました。

実際どうなの?ランナー1・3塁の戦術

 1999年から2005年までの全国大会、関西大会、関西リーグ戦、地方交流戦、練習試合などのスコアやビデオで、「ランナー1・3塁」の場面を抽出して分析してみました。個人的に集めて調べたデータなので信憑性には欠けちゃうかもしれませんが、結果は右のグラフの通りです。
 「ランナー1・3塁」という機会が145ありましたが、そのうち「盗塁」は119回使われていて、全体の約8割を占めています。その次にヒッティング、ダブルスチール、スクイズと続きます。
 私の持っているデータは関西のゲームのものが多いのですが、関西圏外のチームのデータを集計してもやはり「盗塁」という戦術が7割を占めていました。なので、おそらく全国的に「ランナー1・3塁では盗塁」というパターンが主流になっていると思います。では、これは女子野球特有の攻め方なのでしょうか?次に男子野球と女子野球を比べてみました。

 

男子野球と女子野球の戦術を比べてみよう

 それでは下の表で女子野球の戦術を、男子野球と比較してみましょう。ここでは単純に「ランナー1・3塁」で使われる戦術パターンを比較しています。詳しく書くとアウトカウントでも攻め方が変わってきますがここでは省略しますね。で、ほんまに下の表の通りなの?と言われると管理人も自信がないので、まぁ、あくまで目安としてご覧下さい。(参考:「アマチュア野球教本III」功力靖雄著・ベースボールマガジン社)

■ランナー1・3塁で予測される戦術パターン

戦術
男子野球
女子野球
打撃系
ヒッティング
バント系
セーフティバント
×
スクイズ
セーフティスクイズ
×
エンドラン系
ヒットエンドラン
×
ランエンドヒット
×
スチール系
盗塁(単独)
ダブルスチール
トリック走法

◎→頻繁に使う、○→時々使う、△→まれに使う、×→管理人は見たことがないです

 上の表を見てもらってわかると思いますが、男子はヒッティングを中心に、単独盗塁やダブルスチール、その他にもいろいろな攻め方があります。男性チームと練習試合をすると、「ランナー1・3塁」の場面でヒッティングも多いのですが、スクイズをしたり、セーフティバントをしたり、スクイズ+バントエンドランのような攻撃をしかけてきたりして、私の経験から言っても男子は「1・3塁」で幅広い攻撃が予想されます。一方、先述したように女子では1塁ランナーの単独盗塁が主な攻め方で、その次に多いのがヒッティングです。スクイズやダブルスチールもたまに見かけますがそれほど多くはありません。

 

なぜ女子野球では盗塁が多いの?

 では、なんで女子は「1・3塁」の場面で単独盗塁が多いのかということですが、それは「決まる確率が一番高い」からでしょう。まず女子野球では「1・3塁」の場面で3塁から1塁への牽制が少ないので、ランナーは思い切って盗塁のスタートを切れます。また3塁ランナーのダブルスチールを警戒したカットプレーが多用されていて、キャッチャーからのセカンド送球がカットされることが多いのです。そのため、ヘタにスクイズを仕掛けて失敗するより、盗塁を試みた方がよほど確実にランナーを進めることができるわけなんですね。実際スコア集計でも、「1・3塁」での単独盗塁の成功率は96.6%という数字が出ました。
 で、どうしてこういう戦術が主流になったのかということですが、これはソフトボールから来ている流れではないかと思います。ソフトボールでは「1・3塁」の場面で『1塁ランナーの単独盗塁』または『1塁ランナーが盗塁を仕掛け、キャッチャーがセカンド送球する間に3塁ランナーがホームへディレードスチールを試みる』(ダブルスチール)という戦術が多用されていたんですね(右図参照)。そのため、あくまで推測ですが、ソフトボール出身者の多い女子野球でもその戦術がポピュラーに使われるようになってるのかもしれません。

 このように、女子野球では「ランナー1・3塁」において盗塁系の戦術が非常に多いことがわかっていただけたと思いますが、これからはその「1・3塁では盗塁」というセオリーを崩す悪だくみを管理人と一緒に考えていきましょう。まずは守備からレボリューションです。

 

 

守備から崩せ!「1・3塁のセオリー」

 さて、まずは守備側から「1・3塁」を見てみましょう。最近の女子野球の「ランナー1・3塁」という場面を見ていると、簡単に盗塁を許してあっさり「2・3塁」になる、というケースがかなり多いです。でもスコアリングポジションに簡単にランナーを進めてしまうのはよくありませんよね。なので、ここでは「簡単に盗塁はさせへんで」というアグレッシブな守備で、「1・3塁は盗塁」というセオリーを崩してみましょう。お気に召したらお試し下さいませ。

 

牽制で盗塁を防げ!

 本来、「1・3塁」は盗塁を仕掛けにくいパターンかと私は思うんですよ。なぜならここで紹介する「3塁→1塁の牽制」があるからです。ところが、先述したように女子野球ではこの牽制が少ないんですね。これはちょっと損してるかもしれませんよ。それでは、いつも盗塁を仕掛けてくる相手にくらわす必殺技“振り向きざま牽制”を紹介いたしましょう。

■「3塁→1塁」の牽制

ランナー1・3塁の場面です。1塁ランナーには盗塁のサインが出ています。

ピッチャーは、まず足を上げて投球動作に入ります。これを見た瞬間、1塁ランナーはスタートを切ります。

【注意】この時、ピッチャーは出来るだけバッターの方へ顔を向けて、1塁ランナーに牽制だとバレないようにしてください。写真ではうまく撮れませんでした…すんまへん。

ところが、ピッチャーは牽制のため3塁へステップします。

そして3塁へ偽投(投げる振り)を入れます。この時、だいたい1塁ランナーはスタートを切って数歩飛び出しています。

 

【注意】この場合、ピッチャーは投げる振りを入れず、3塁方向にステップするだけでもかまいません。その方が動きが短縮されます。ただし、この牽制で1塁に振り向いて投げる時は、プレートを外さないとボークになります。詳細はバックナンバーNO.60を参照下さい。

偽投をしたらすばやく振り向いて1塁へ牽制球を投げます。1塁ランナーはベースへ戻ろうとします。

でも1塁ランナーは戻れりきれずタッチアウトっちゅう感じです。
 もし、1塁ランナーが2塁へ走ってしまっている場合は、2塁に投げてください。

出演:劇団大阪アッフェ・エキストラ

 盗塁をする時、1塁ランナーはピッチャーの足が上がった瞬間にスタートを切りますが、この牽制があると簡単にスタートを切れなくなります。なぜなら3塁への牽制なのか、バッターへ投げるのか、ピッチャーが足を上げた時点ではわからないからです。このため盗塁のサインが出ていてもスタートが遅れて、2塁でアウトになる可能性もかなり高くなります。
 このように「3塁→1塁への牽制術」を持っているだけで、「1・3塁」での盗塁を防ぐことができます。たとえ1塁ランナーをアウトに出来なくても、この牽制があるということを見せつけるだけで十分な抑止力になるかもしれませんね。で、この牽制で重要なのは、投手の演技力。3塁に牽制を入れるときバレバレな人がいますが、それはで朝ドラのヒロインレベルです。できるだけバッターに投げる時と3塁に牽制を入れる時のフォームに違いが生じないように特訓して、大河ドラマレベルの演技力をめざしてください。この他にもいきなり1塁ランナーに牽制を入れるという方法もあるので、お気に召したらこれらの牽制、ぜひとも「1・3塁」で使ってみてくださいね。

 

カットプレーも大切ですが…

●カットプレーとは 

 次に1・3塁のカットプレーについて簡単に紹介します。このカットプレーは、「1・3塁」でのダブルスチール、つまり『1塁ランナーが盗塁のスタートを切り、キャッチャーがセカンドへ投げた瞬間に3塁ランナーがホームへ走る』という戦術に対する防衛策です。キャッチャーが盗塁阻止のため投げたボールをセカンドやショートが途中でカットし、ホーム(または3塁)に投げて3塁ランナーを刺す、というプレーですね。カットマンは3塁ランナーがホームに走っていればボールをカットしてホームへ返球し、走っていなければスルーして2塁で盗塁してくるランナーを刺します。カットマンはセカンドやショートですが、まれにピッチャーカットというのもあります。この他にも、キャッチャーが偽投して3塁ランナーをおびきだす、という方法もありますね。

 

●警戒しすぎ? 1・3塁ランナーのダブルスチール 

 ところでこのカットプレー、女子野球では「1・3塁」で頻繁にみられます。でもこれは1・3塁での「ダブルスチール」に対するフォーメーションですよね。ところが、現状では各チームにこのカットプレーが浸透しているので、実際3塁ランナーが危険を冒してホームへダブルスチールを試みることはほとんどありません。1塁ランナーが単独盗塁をし、3塁ランナーは自重して「ランナー2・3塁」という展開にするのが主流です。私も3塁ランナーがホームへ走るケースを見たのは今まで数回しかありませんし、しかもそのほとんどが失敗で、やはり塁間の狭いソフトボールでは成功率が高くても、塁間の広い野球では決まりにくいのかなぁと思いました。そういうこともあって3塁ランナーがホームへ走る可能性は低いと思うのですが、それならば、むしろ私はどんどん2塁で盗塁を刺すべきだと思います。走ってこない3塁ランナーのためにわざわざキャッチャーの送球をカットする必要はないですよね。もちろん点差やアウトカウント、ランナーの走力などにもよりますが、肩の強いキャッチャーがいるならば、カットを優先するより先述した「3塁→1塁」の牽制などを使いながら盗塁を刺しに行くのもひとつの手段だと思います。

 

相手の攻め方を読もう

 さて、ここでは相手の攻め方を読むというマニアックなこともしてみましょう。「1・3塁」の場面で盗塁を仕掛けてくるのは何球目が多いのか、どのアウトカウントが多いのか、または盗塁しかしてこないチームなのか、ダブルスチールを積極的にしてくるチームなのか、スクイズなど多彩な攻め方をしてくるチームなのか、そういった情報も知っているだけでも違ってくると思います。
 たとえば、先ほどのスコアの統計からみてみると、全体として盗塁を仕掛けるのは初球が最も多いんですね(右図参照)。「このチームは初球で盗塁を仕掛けてくるぞ」とわかっていれば、初球に外角へボールを外して、二塁で盗塁を刺すということも可能です。また牽制を入れるタイミングもわかります。
 一方、「1・3塁」において最も多く盗塁を仕掛けてくるのはどのアウトカウントかということを調べたんですが、これにはそれほど違いはなく、どのアウトカウントでも仕掛けてくるようです(右図参照)。ただ、仕掛けてくる戦術やアウトカウント、投球数などの関係をチーム別に調べていくと、「2アウトの時は2球目に走ってくることが多い」「2アウトの時は盗塁を仕掛けずにヒッティングが多い」というようなこともわかるかもしれません。このようにある程度相手のクセがわかれば、どのタイミングで牽制を入れたらよいか、何球目にウエストボールで対応するか、といった対策が立てられるわけです。
 まぁ、そこまでやらんでもええんちゃうん?という人もいると思いますが、そこまでやってみてもええんちゃう?と思うスコアオタクな方は相手のクセも探ってみてくださいね。

 

チームで確認しよう

 さて、最後にご提案したいのは、チームで守備をしっかり確認しよう、ということです。1・3塁の時のフォーメーションがあいまいなチームも意外とあるんですね。2塁で盗塁を刺すのか、カットプレーなのか、または前進守備なのか、中間守備なのか。そういう部分が未確認のままだと、中途半端なプレーになってしまいます。野手の間で意思疎通が出来ていないためにカットプレーが失敗して、ボールが転々と転がるスキに3塁ランナーがホームに帰るというケースもけっこうありました。っていうか、管理人が昔そういう失敗を連発しまくってたんですがね…。
 ま、そういうわけなので、まず「1・3塁」になったら「アウトカウントを増やすための守備隊形」なのか「点を取られないための守備隊形」なのか決めることが大切かと思います。たとえば1点差で勝っている時は、これ以上相手に点を取られないよう前進守備をとります。これは1塁ランナーの盗塁を容認してでも3塁ランナーを絶対にホームへ帰さないという守備隊形です。逆に5点差で勝ってるような場合は、ゲッツー狙いの中間守備をとり、1塁ランナーの盗塁にも対処できるような態勢で、アウトカウントを増やすための守備隊形をとります。
 このように守備で大切なのは、点差やアウトカウント、相手の攻め方などによってどういう守備隊形をとるのかということを、あらかじめチームで確認しておくことだと思います。「意図のある守備隊形」は迷いを消して、思い切ったプレーを生みます。ゲーム中、どの守備隊形をとるか判断に迷う時はタイムを取ってマウンドに集まり確認した方がいいかもしれません。そして、それぞれの守備パターンを徹底して練習することも大切だと思いますので、機会があればまた取り組んでみてくださいね。

 

 と、いうことで「1・3塁」の場面で「簡単に盗塁はさせへんで」という守備を提案して参りました。でも、相手に決めらる時は決められてしまうので、その時はあっさりあきらめちゃってください。ランナー1・3塁でも2・3塁でもピンチには変わりないですからね。ともかく私が守備で大切だと思うのは「相手のペースで攻撃させない」ということです。1・3塁の場面でも、相手の好きにさせないよう主導権を奪って下さい。そんな意味で今回はかなりオタッキーに掘り下げてみましたので、またみなさんのチームでいろいろ工夫して下さいね。

 

 

 

攻撃から崩せ!「1・3塁のセオリー」

 さて、ここからは攻撃面から「ランナー1・3塁では盗塁」というセオリーを崩していきたいと思います。でも現状で「1・3塁」で一番有効な戦術は何なのかと言うと、やっぱり「1塁ランナーの単独盗塁」なんですよ。成功率がかなり高いですからね。守備が未整備なチームに対しては、従来通り「盗塁」という戦術を使うのがベターだと思います。でも、これだけ「セオリーを崩せ!」とあおってしまったので、一応その他の戦術もご紹介しましょう。「アタシは新しい刺激がほしいのよ!」って人はご覧下さいませ。

スクイズもしてみる?

 まず、ランナー1・3塁でのスクイズについてご紹介します。これは「1・3塁」でも、相手チームの守備がしっかりしていて、キャッチャーも肩が強くてなかなか盗塁ができない、という場合に使うと効果的な奇襲攻撃ですね。
 この時の簡単な注意点ですが、初球は1塁ランナーの盗塁を警戒してバッテリーがボールを外してくることがあるので仕掛けるタイミングには気を付けてください。また、バッターは1塁方向へバントしてください。なぜなら「1・3塁」ではたいていカットプレーが行われているため、図のようにセカンドとショートが2塁ベースの方へ走り込んでいます。そのためセカンドが1塁ベースへカバーに入るのが遅れて、バッターランナーもセーフになる可能性が出てくるんですね。カットプレーを多用してくるチームにけっこう有効です。相手がどういう守備をしてくるかわからないときは、1塁ランナーにダミーのスタートを切ってもらって、相手の守備隊形を確認しましょう。守る側も「1・3塁」だからといって、機械的にカットプレーばかりしてるとこういう痛い目にあいますよ(経験者談)。
 じゃあ、盗塁もあるし、ダブルスチールもあるし、スクイズもあるしという場合には、守備側はどう守ったらいいの?ということですが、う〜ん…、それは管理人に聞かれてもわかんないんで、またいろいろ工夫してフォーメーションを組んでみてくださいね。ま、一応私が考案したアッフェ・スペシャルという画期的なフォーメーションがあるんですが、きっとアホすぎて採用されないでしょう。そっと胸にしまっておこう…。

 
盗塁系戦術を極めよう

 ここでは盗塁系の戦術について簡単な注意点をまとめておきます。なんだかんだ言っても、やはりこういう場面での盗塁は決まりやすいので、まずそこはきちんと押さえておきましょう。セオリーを崩せと大口たたいたわりには、管理人、けっこう小心者なので思い切ったことできないですよ…。

●前進守備の場合は

 まず「ランナー1・3塁」で、1塁ランナーが単独盗塁するときの注意点ですが、もし相手が前進守備をとっている場合は、盗塁に対してセカンドもショートも2塁のベースカバーに入れません。これはつまりはじめから盗塁を刺すことを放棄しているわけですから、この場合は盗塁のサインが出ていなくても遠慮なく走って2塁を陥れてください。もらえるもんはもらっちゃいましょう。また1塁に牽制球を投げられて思わず飛び出してしまったとしても、戻って1塁でアウトになりそうな場合は、ベースカバーのいない2塁に走ってください。1・3塁になったら常に相手の守り方を注意して見ていてくださいね。スキあらばいつでも2塁を狙いましょう。

●盗塁を援護しよう

 次に、3塁ランナーの注意点です。同じく「ランナー1・3塁」の場面で、1塁ランナーに単独盗塁のサインが出ている場合、3塁ランナーは1塁ランナーを援護してください。どういうことかというと、守備側がカットプレーをしてくるチームなら、3塁ランナーが盗塁のスタートを切る仕草をするだけで、カットマン(セカンドあるいはショート)がダブルスチールだと思ってキャッチャーの送球を途中でカットします。これだけで1塁ランナーの盗塁を援護できるわけですね。ただし、フェイントのスタートを大きくきりすぎると、カットマンから3塁へ送球されたときに、戻りきれなくてアウトになるケースもわりとあります。カットマンの注意を自分にひきつけるのはいいですが、あまり派手にやりすぎないようにしてくださいね。

●ダブルスチールは

 この場合のダブルスチールは、前にも書いたように「1塁ランナーが盗塁を仕掛け、キャッチャーがセカンド送球する間に3塁ランナーがホームへディレードスチールを試みる」という形です。詳細は前に説明したので省略しますね。で、注意しないといけないのは、守備側のフォーメーションを把握していないと、カットプレーや牽制球にひっかかってしまうことです。せっかくのチャンスをつぶしてしまうことになるので、使うときは石橋を叩いて渡るくらい慎重に試みてください。

●その他

 この他にも、1塁ランナーがわざと1・2塁間で挟まれるトリック走法や、ディレードスチールなどもありますが、これはあくまでとっておきの超奇襲作戦なのであまり連発しては使えないかもしれませんね。でも、ここぞというときに決めて相手の度肝を抜いてやってください。ただ、3塁ランナーに何の打ち合わせもなくトリック走法をすると、味方の度肝を抜くことになるので、できるだけ事前に打ち合わせするか、3塁ランナーがアドリブのききそうな人の時に試みてくださいね。

 ちゅうことで簡単に「1・3塁」での攻撃をまとめてみました。他にもいろいろあるんでしょうけど、だんだんまとめるのがめんどくさくなってきた…。ま、攻撃が淡泊になってる時や、ゲームの流れを変えたい時などに、こういう奇襲攻撃が何かの参考になれば幸いでゴザイマス。

 

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 

 さて、今回は「ランナー1・3塁の攻防」について、長々と取り上げてみました。全国大会や地方交流戦、関西の試合などで「1・3塁の戦術」を追い続け、今回ようやくまとめることができました。いや〜、完全に自己満足の世界なので申し訳ないんですが、個人的にはなんとか形にできてよかったです。でも、あくまで私の私的な考察なので、そのへんはなにとぞご容赦くださいませ。
 まぁ、最近「ランナー1・3塁」での攻防がシンプルになってる傾向にあったので、これがきっかけでスリリングな戦術が増えれば、またゲームが面白くなるんじゃないかと思います。マンネリ化してる二人の関係に必要なのは、ロマンティックでエキサイティングなサプライズ。同じようにマンネリ化してる戦術に必要なのも、ロマンティックでエキサイティングなサプライズです。ということで、この秋はみなさま、「恋」でも「1・3塁」でも刺激的なチャレンジをお試し下さいませ。最後に、いろんな試合でスコアをとり続けてくれてたTとMに感謝いたします。サンキュー!

 

▼参考文献:「アマチュア野球教本III」功力靖雄著・ベースボールマガジン社 他

 

 


No.63 ランダウンプレー(挟殺プレー)(2005.7.17)     

 最近、雨ばっかりでロクに練習も出来なかったんですが、そのときにふと今回のネタを思いつきました。雨が降ったときは高速道路の高架下など狭いスペースで練習しているチームもあると思うのですが、そういう場所で出来る練習と言えば、この「ランダウンプレー」。ランナーが塁間で挟まれたときの挟殺プレーのことです。それほど場所を取らない練習なので、高架下に限らず狭い場所しか使えない場合に、一度見直しておくのもええかもしれませんね。っちゅうことで、今回はこのランダウンプレー、いつもいい加減にプレーしてチョンボしている管理人とともにおさらいしてみましょう。

 

ランダウンプレーって何?

 ランダウンプレーは、塁と塁の間で挟まれたランナーをアウトにするプレーのことをいい、ランナーが牽制球で飛び出してしまった時や、オーバーランをしてしまった時、スクイズが失敗した時などに多く見られます。挟殺プレーともいいますね。それでは、ランダウンプレーについて「走塁」と「守備」の2つに分けてみていきましょう。

 

とにかく粘ろう! 〜走塁編〜

 さて、まずは攻撃側からランダウンプレーを見てみましょう。実はこのランダウンプレー、挟まれている時に送球が体に当たったり、野手が深追いしすぎてセーフなったり、悪送球があったりと、守備が未整備なチームではけっこうスキも多いのです。そんなわけで、塁間で挟まれたときの対処について簡単に紹介しましょう。

 

時には悪あがきも必要?

 もしもランナーのあなたが塁間で 挟まれてしまった場合、大切なことはあきらめずにとにかく粘るということです。これはボールを受け渡しする回数が多くなるほど、相手がミスする確率も大きくなるからです。また、ランナーがもう一人後ろにいる場合も、挟まれたランナーが粘って時間を稼ぐことで、後ろのランナーが次の塁へ進むことが出来きるのです。挟まれても簡単にあきらめずにとことん往生際悪く粘りましょう。ちなみに、前のランナーが挟まれた時は、後ろにいるランナーは迷うことなくすぐに次の塁に進んでくださいね。

くらえ!挟まれた時の必殺技!

 挟まれた時の走塁テクニックということですが、けっこう簡単にできるワザです。下の写真Aのように、捕球する人は送球する人が投げやすいようにちょっと横にズレてグラブを出しますが、ランナーはそのグラブ方へ体を寄せながら走ります(写真B)。そうすることで、送球する側も体が重なって投げづらく、悪送球をしたり、ボールが体に当たってセーフになったりするわけです。このように送球路を走ることで送球の邪魔をするのですが、捕球する野手の方へと体を寄せすぎてスリーフィートラインを越えるとアウトになるので気をつけてください。
 この他にも、ダミーステップで戻ると見せかけて前に進んだり、塁に近い場合は構えている野手を一気に追い抜いてベースまで走ったりと、いろいろあるのでお試し下さいませ。

▲写真A
 

▲写真B:体をグラブの方へ寄せて走る

 

ランナー2人が同じ塁に重なったら?

 さて、ここでは特殊なケースを紹介しましょう。ランダウンプレーでランナー2人が同じ塁に重なるというケースです。たとえばランナー1・2塁で、2塁ランナーが挟まれている間に1塁ランナーが進塁して2塁ベースに到達したとします。ところが相手のミスで2塁ランナーも元の2塁ベースに戻ってしまった場合、2塁ベース上で2人のランナーが重なることになります。こういう場合は、前にいるランナー(ここでは2塁ランナー)に塁を占有する権利があるので、1塁ランナーは元の1塁ベースへ戻らなければなりません。こんなときは1塁ランナーが戻る際に1・2塁間でわざと挟まれて、2塁ランナーを3塁へ進塁させるという手もあるんでしょうけどね。とにかくお互いが塁を譲って2人とも塁を離れてしまうと、両方アウトになる可能性があるので気をつけてください(※バックナンバーNO.12参照下さい)。
 以上、走塁の注意点について簡単に紹介しました。次は守備について取り上げます。

 

 

100%アウトにしよう! 〜守備編〜

 次に守備側からランダウンプレーを見てみましょう。このランダウンプレー、複数の野手が絡むので私はかなり難度の高いプレーだと思うんですよ。なので、もしランダウンプレーがあいまいになっているならば一度チームで確認してみてはいかがでしょう。そんなときにここが少しでも参考になれば幸いです。難しいプレーですが100%アウトをめざして、塁間をグルグル回り続けましょう!

 

これで完璧?ランダウンプレーの基本

 ランダウンプレーで大切なのは、挟まれたランナーを元いた塁(若い塁)に追いこんでいくということです。そうすることで最悪ランナーがセーフになっても、元の状態に戻るだけというわけです。右図Aのように1・2塁間で挟まれたら1塁へ、2・3塁間で挟まれたら2塁へ、3・本塁間で挟まれたら3塁へ追い込んでいくという感じです。
 詳しくみていくと、下図Bのように元の塁側にいる野手はランナーを先の塁へと深追いしてはいはいけません。ボールを捕球したら早めに先の塁にいる野手へ渡しましょう。また反対に、先の塁の側にいる野手は、元いた塁へやや長めにランナーを追いこんでいきます(下図C)。さらに送球を繰り返していく中で、挟む距離を縮めていきましょう。そうすることでランナーにタッチしやすくなります。ただし、距離は縮めても、ランナーに追い抜かれてしまうこともあるので、必ず後ろの1人はベースに入っているようにしましょう。そしてなるべく元の塁の方へ追い込みながら距離を縮めてください。

 

 また下図Dのように、野手は送球後、投げた先の塁へ回り込み、次の捕球に備えます。投げては先の塁へ回り込んで捕球し、また投げては先の塁へ回り込んで捕球し、そうやってグルグル回っていきながらカバーが切れないようにします。
 このように、ランダウンプレーでは何度か送球を繰り返すのですが、出来る限り送球する回数を少なくして短時間でアウトにしなければなりません。というのも、前述したように送球を繰り返す回数が多いほどミスする確率も大きくなるからです。また、ランナーが複数いる場合は後ろのランナーの進塁を許してしまうからです。なので、できるだけ少ない送球(2〜3回の送球)で確実にランナーを仕留めてくださいね。

 

ズレてるあなたがステキ

 さて、ランダウンプレーで送球する時と捕球する時のポイントをいくつか紹介しておきます。
 まず投げる方ですが、ボールを持った腕を高くあげて捕球する人に見えるようにします。ランダウンプレーではランナーと投げる人が重なって、捕球する人にはボールが見えないことがあるからです。また同じように、真後ろからランナーを追いかけるとランナーと捕球する人が重なってしまい(写真C)、送球が体に当たってしまうこともあるので、投げる人はランナーの真後ろから追うのではなく右側へ少しズレて追いながら送球しましょう(下図E)。捕球する人も相手が投げやすいように少しズレて、ランナーと重ならないようにしてくださいね(写真D)。
 またランダウンプレーで重要なのがスナップスローです。走りながら手首を効かせて、ランナーの上ではなく、ランナーの横から捕球する人にボールを投げます。走りながら投げるのは意外と難しいので、よく練習してくださいね。

▲写真C
 

▲写真D

 ▲図E

 

ワシはどの塁に行ったらええのんじゃ?

 最後に、ランダウンプレーのときに野手全体がどう動くか、というカバーリングについて紹介します。誰がどのベースに入るかということですが、近くの人がカバーに行けばいいと思うのでそんなに気にしなくていいと思います。いろいろパターンがあると思うのですが、内野手は近くの塁に入り、外野手はボールがそれた時のカバーに入る、というのが基本ですかね。カバーに回っている人もランダウンプレーで人手が足りなくなった場合は、ランナーを追う側に入るという感じになるんではないしょうか。とにかく塁にカバーの野手が集まりすぎて誰に投げたらいいのかわからないというような状況にならないように、ランナーを追う人とカバーをする人の役割をはっきり決めておくことも大切かと思います。
 まあ、私もこれでいいのかどうかよくわかんないんで、ここで紹介するのはあくまで一例として見てくださいね。「ピッチャーはなるべくランダウンプレーに入らないように」という話もありますし、自分たちに合う形を使ってもらえばと思います。どう動くのかはまたチームで話し合って確認した方がいいと思いますよ。 

■1・2塁間でのランダンプレー

 1・2塁間では牽制の時によくランダウンプレーが発生します。野手の動きですが、右図のようになります。
ファーストとピッチャー → 1塁ベースに入る
ライト → ボールがそれた時のために1塁後方のカバーに入る
セカンドとショート → 2塁ベースに入る
センター → ボールがそれた時のために2塁後方のカバーに入る
サード → 送球がそれてランナーが進塁する時のことを考えて3塁ベースに残る
レフト → 2塁後方のカバーか3塁送球を予測して3塁後方のカバー
キャッチャー → 1塁のカバーか3塁後方へのカバー

※カバーに回っている人もランダウンプレーで人手が足りなくなったり、ベースが空いてしまった場合は、ランナーを追う側に入ってください。その辺は臨機応変に判断してくださいね。

  ※番号は各野手の守備位置を示しています

   

■2・3塁間でのランダンプレー

 2・3塁間も牽制の時によくランダウンプレーが発生します。野手の動きですが、右図のようになります。
セカンドとショート → 2塁ベースに入る
ライトとセンター → ボールがそれた時のために2塁後方のカバーに入る
サードとピッチャー → 3塁ベースに入る
レフトー→ ボールがそれた時のために3塁後方のカバーに入る
ファースト → 2塁のカバーかホームベースへのカバー
キャッチャー → 送球がそれてランナーがホームまで進む時のことを考えてホームベースに残る

   

■3・本塁間でのランダンプレー

3・本塁間ではスクイズ失敗の時によくランダウンプレーが発生します。野手の動きですが、右図のようになります。
キャッチャーとピッチャーとファースト → ホームベースに入る
ライト → ホーベース後方のカバーに入る
サードとショート → 3塁ベースに入る
レフトとセンター → ボールがそれた時のために3塁後方のカバーに入る
セカンド → 人手の足りないところへ

 

 

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 

 以上、いかがだったでしょうか、ランダウンプレー。私の経験から言うと、これってほんま数をこなせばこなすほどコツがわかって上手くなっていくんですよね。まさにカラダで覚える、っちゅう感じです。こういう技術はバッティングのように好調と不調の波もありませんし、折を見て一度チーム全体でプレーの確認をしておいた方がええと思いますよ。また狭い場所で練習するときはメニューに困ると思うのですが、そういうときこそこんな練習を取り入れてみてもええんじゃないでしょうかね。夏場は暑いので短期集中で効率よく練習してレベルアップ→そして練習後には美味いビールが両手を広げて待っているぞ〜!!!

 

▼参考文献:「マンガ野球入門」大沢啓二・監修(山海社)、「基礎からの野球」宮坂善三・著(ナツメ社)、「野球指導の手引き」スポーツ科学トレーニングセンター編集 他

    

    

No.62 素振りにひと工夫(2005.6.15)         

 前回の更新からだいぶ時間があいてしまいましたが、ようやく更新です。以前、関西女子野球連盟の理事長が「素振り」について話をしていたのを聞いて、今回は素振りについて簡単に取り上げてみました。ま、毎回この程度の量でコツコツ更新して、ときどき超大作・感動巨編を織り込むようにした方がマメに更新できそうですね。それでは、内容がお気に召したら素振りについてもいろいろお試し下さいませ〜。

素振りをするときは

 素振りをするときの注意ですが、まず最初にやることは「安全確認」です。バットを持ち、水平に腕を伸ばして体の周り一周させます。そして周りの人と当たらないことを確認してからバットを振ってください。またバットを振っているすぐ近くに道具やカバンがないことも確認してください。周りの人がその道具などを取りに来た瞬間に、思わず振ったバットに当たってしまうこともあります。素振りのバットが他の人の頭などに当たって大ケガをしたという事故はけっこうよく聞く話なので、素振りをするときは注意してくださいね。

素振りとは

 素振りといえばクラブ活動などで毎日何百回も振らされて、あまりいい思い出がない人も多いのではないでしょうか。私もその一人です。では、「なぜ素振りをするのか」ということですが、これは「自分にあったバッティングフォームを固める」ということです。まぁ、当然のことなんですが、大事なのはただダラダラとたくさん振ることではなく、回数は少なくてもいいので正しいフォームで振るということです。ノンストップでたくさん振ればたくさん練習した気になりますが、実際は体が疲れてしまって知らず知らずのうちにそれをかばうための悪いフォームが身に付いてしまうことも多いんだそうです。なので10回を1セットにして休憩をはさみながら集中して数セット行うのがいいようです。そして疲れたらさっさと家に帰って牛乳飲んで寝てしまいましょう。

自分のストライクゾーンを確認しよう

 さて、素振りをするときにちょっとした工夫を入れれば、単純な練習でも少し楽しくなるかもしれません。それがこの「自分のストライクゾーンを確認しながら素振りをする」という方法です。壁に自分のストライクゾーンの上限と下限にテープで印を付け、その前で素振りをします。自分が思っている以上にストライクゾーンが高かったり低かったりして、けっこう面白かったですよ。

▲壁にテープで高低の印を付ける
 ストライクゾーン上限:肩とベルトの中間点
 ストライクゾーン下限:ひざ頭の下

▲ストライクゾーンの高低を確認しながら振る

1回ずつコースやスピードを想定して振ろう

 さっきの続きになりますが、素振りではただなんとなく振るではなく、高さやコースを想定して1回1回集中して振るのが大切なようです。バッティングではコースによってミートするポイントも変わってきます。なのでバットを振る時に右図のようにストライクゾーンを細かく分けて各コースごとに振ってみてはいかがでしょう。これはティーバッティングの時も同じで、トスしてもらう人に投げ分けてもらうことで各コースに対応できるようになります。
 また、コースの他にもスピードや球種など実戦を想定して素振りをするのもいいかもしれませんね。

手首をコネてしまうときは

 バッティングをしている時によく見かけるのが「手首をコネる」というシーンです。右手の力が強い人に多いですね。私も右手が異常に強いのでよくコネて打ってしまうのですが、それを直すのがこの「逆手素振り」です。
 本来、右バッターは図1のように握りますが、それを図2のように逆に握ってバットを振ります。この方法で振れば右手もコネることはないので、正しい手首の返し方を自然と体に覚えさせることができるわけです。ただし、この握りで思いっきり振ると手首を痛めるので50〜60%の力で振ってくださいね。
 また、この他にも片手で素振りするという方法があります。引き手(右バッターなら左手、左バッターなら右手)一本で素振りをします。ただし、できるだけ軽いバットでおこなってください。
 これらの「逆手打ち」や「片手打ち」は、実際プロでもティーバッティングの時に使ってコネるクセを直すそうなので、女子野球界コネコネ・シスターズのみなさんも一度お試しくださいね。

 

ドア・スイングを直す

 最後にドア・スイングを矯正する素振りについて紹介します。ドア・スイングとはバットのヘッドが遠回りして出てくるスイングのことで、これも右手が強いバッターに多い悪いクセなんだそうです。
 これを直すためには、壁の前に立って素振りをする方法があります。壁からだいたいバット一本くらいの距離に立って、バットが壁に当たらないように振ります。こうすることでミートポイントへ最短距離でバットが出るようになるそうです。
 また内角球にも対応できるようになるので一石二鳥ですね。私のように酒の席だけでなく、バッティングでも悪癖だらけの人にはオススメですよ。

 

 

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 

 今回は素振りを取り上げてみましたが、いかがだったでしょうか。私はクラブ活動をしている時、この素振りというメニューが大嫌いでした。やたら数多く振らされて疲れるだけでしたから、これはきっと根性を鍛えるモノなんやと思ってましたけどね。「素振り」=「精神論、根性論」という図式が植え付けられていたように思います。正しい素振りを正しい方法で取り組んでいたら、ソフト時代はもっと打てたかもしれませんね。ほんまただ単に振りまくって、ものすごいマッチョになっただけのような気がします…。まぁ、それも役に立ったと言えばそうなのかもしれませんが…。

 

▼参考文献:「マンガ野球入門」大沢啓二・監修(山海社)、「中学野球の指導とノウハウ」石井忠道・著(ベースボールマガジン社)、「野球指導の手引き」スポーツ科学トレーニングセンター編集 他

       

    

No.61 牽制球を捕ろう(2005.1.20)       

 前回予告した内容と違うのになっちゃいましたね、すんまへん。今回は前回書き忘れてた「牽制の捕球」について取り上げようと思います。私はすっかり忘れてましたが、牽制プレーを語る上で欠かせないのが「タッチプレー」です。前回までは投げる方に着目しましたが、今回はボールを捕ってタッチする方に着目してみたいと思います。ま、普段やってる「タッチプレー」をもう一度確認してみようということですね。
 捕球の時の立ち位置は? タッチをする場所は? …自分がやっているタッチプレーの動作を思い出しながら読んでみてくださいね。このへんをちょっと工夫するだけで、あなたも明日から牽制でアウトにする確率をグッとアップさせられるはず!それでは詳しくタッチプレーを見ていきましょう。

 

●ベースをまたいで、ベースにタッチ

 わたくし、けっこう長い期間“女子野球界”に生息していますが、その中でもよく見かけるのが、内野手が「ベースの前に入って追いタッチになる」プレーと、「上体にタッチしにいってる間に、ランナーの足が先にベースに入ってしまう」プレーです。どちらもセーフになってしまうことが多いですよね。
 タッチプレーの基本は「ベースをまたいで立つ」ということと「捕球したあとグラブをベースの縁に置き、そこへ滑り込んできた足にタッチする」ということです。簡単に言うと「ベースをまたいで、ベースにタッチ」という感じですね。この件については、バックナンバー「NO.27 タッチプレー1」「NO. 28 タッチプレー2」で詳しく取り上げてますので、よかったら参考にしてくださいませ。このへんの基本をふまえて牽制タッチプレーを語りたいと思います。

 

●あなたのタッチ次第でアウトにもセーフにも…

 それでは牽制球のタッチプレーについて見ていきましょう。ここでは『2塁牽制』でのタッチプレーを中心に紹介します。牽制に入るときの立ち位置や、タッチをする場所などをちょっと工夫すれば、牽制でアウトをとる回数が増えるかもしれません。特別な練習をしなくても普段から練習や試合でちょっと意識していくだけで身に付くプレーだと思いますので、ぜひともお試し下さいませ〜。

タッチプレーの一連の動作

ランナー2塁での牽制プレーです。まず内野手はベースに入ったら、両足でベースをまたぎ、姿勢を低くして捕球します。捕球をするときはできる限り自分の体の近くでボールを捕ってくださいね。
捕球したらグラブの背をランナーに向けて、スッとベースの前に出し、スライディングしてくるランナーの足(ヘッドスライディングの時は手)にタッチします。
 実際のプレーではこんなにうまくはいかないかもしれませんが、一応これが基本になります。

注意点

 タッチをするときにランナーの「体」(特に上体)にタッチしに行くと、先に足をスルッとベースに入れられてしまうこともあります。ランナーはどう回り込んでも結局はベースに戻ってくるので、こちらから迎えにいってランナーの体にタッチするのではなく、ベースと滑り込んでくる足の間にグラブを置いて待つという感じでタッチするのがベストなんだそうです。タッチをするときは「ベースにタッチ」と意識してくださいませ。
 もちろん送球がそれた場合は、とりあえず捕球してランナーのどこでもいいのでタッチしてくださいね。

一撃必殺!! アピールプレー

 さて、意外にも重要なのがこのタッチのあとの「アピール」です。タッチの後にグラブをそのままにしていると、スライディングの衝突の勢いで落球したりするので、払うようにタッチしたら、そのままグラブを上にあげてアピールをしてください。きわどいタイミングの時、このアピールが効いてアウトになることもたくさんあります。
 と、いうことで今回は、このアピールプレーで数多くのアウトをもぎ取ったうちの大女優A(右写真)がモデル出演です。彼女の鬼気迫る演技は、きっと「からタッチ」でも審判にアウトと言わしめるでしょう…。

追いタッチ

 タッチプレーでけっこう見かけるのがこの「追いタッチ」です。ベースの前で捕球するとどうしてもこの「追いタッチ」になってしまうんです。送球がそれたとか短いとかで前に出ざるを得ない場合もたくさんありますが、基本はベースをまたいで捕るということですね。「追いタッチ」=「セーフ」と見なされることも多いので注意してください。前にも書きましたが、ランナーはどんなに回り込んでも結局はベースにつかなければなりませんから、ベースをまたいでランナーが滑り込んでくるのを待っていればいいわけですね。
 ま、つまるところ、追えば追うほどランナーも幸せも逃げていくっちゅうことです…(哀)。

 

●1塁でも3塁でも同じ感じでタッチ

 それでは、1塁と3塁での牽制タッチプレーについて簡単に説明しておきます。1塁と3塁では同じような形になるのでまとめて紹介します。
 まず、牽制球を捕球するときですが、ボールをできる限りベース付近まで引きつけてからシングルハンドで捕り、グラブを最短距離でベースの縁へおろします(両手で捕るとタッチが遅れるので、できる限りシングルハンドでキャッチしてください)。
 捕球したらタッチするわけですが、前述したようにあまりにランナーの体にタッチすることを意識すると、タッチをすり抜けて手や足をベースに入れられてしまうこともあります。ですから、ランナーにタッチしに行くというよりも、ベースの縁にグラブをおろすというイメージでタッチをしにいくといいそうです。
 また捕球の時の立ち位置ですが、ベースの角に足を置いて立つ場合もありますし、ベースをまたいで立つ場合もあります。どっちでもいいんでしょうが、またいで立つとランナーとぶつかりやすくなるので注意が必要です。

●スライディングはマナー???

 最後にちょっとした提案ですね。以前から気になっていたんですが、女子野球のタッチプレーでは野手がベースの前に立って捕球することが多いようなんです。男子ほど肩が強くないので送球が届かないため前に出て捕球するということも多いのですが、私はそれ以上にベース上での交錯プレーが多いからではないかと思います。ランナーとの交錯を避けるために無意識のうちにベースの前に出て捕球してるのかな?と思うんですよ。
 で、なぜ交錯するのかというと、スライディングが徹底されていないからなのかもしれません。試合でも勢いのついたまま滑り込まずに着塁することが多く、ランナーと野手が衝突する場面をよく見かけるのですが(右写真)、これはほんまに危険ですよ。
 もともとスライディングは走ってきたスピードを落とさず勢いだけをうまく殺して着塁するためのものらしいので、やはり交錯を避けるためにもタッチプレーでは可能な限りスライディングを徹底した方がいいと思うのですが、いかがでしょう? 私もスライディングは苦手なんですが、ここは「マナー」ということで老体にむち打ってゴロゴロ地面を転げ回りたいと思います…。

 

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 

 と、いうことで「牽制をオタクする」シリーズ、これにてほんまに終了です。未練たらたら引っ張ってすんませんでした。まぁ、この牽制タッチプレー、「百聞は一見に如かず」なのでテレビの野球中継などでどんなふうにタッチしてるのか観察してみてくださいね。それでは次回こそ「セオリーを崩せ!1・3塁の攻防」をお届けします。たぶん…。

▼参考文献:「野球フィールディング・スローイング」林裕幸監修(西東社)、「野球上達BOOK・守備&フィールディング」伊藤栄治(成美堂出版) 他

 

 


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