NO.31 バッターボックスの掟 その1(2001.9.15)

 今回はバッターボックスについてです。私がバッターボックスに立つときにいつも感じている疑問を解き明かしてみようと思います。今回と次回の2回に分けて取りあげていきたいと思います。別に分けるほどのことでもないんですが、秋季大会中で忙しいので小出しにしていきます。

 

バッターボックスの大きさは?

 普段バッターボックスの大きさなんて気にもしていませんが、その大きさはどれくらいなのか調べてみました。だいたいの大きさです。意外と広いですね。ホームベースとバッターボックスの間の距離は約15cm、バッターボックスの縦の長さは約1.8m、横の長さは約1.2mです。

 バッターボックスの縦のラインをかくときは、図のようにホームベースの角を中心にそこからそれぞれ上下に90cmずつ測って下さい。それをもとにして横のラインもかいて下さい。ちなみにライン(白線)の幅は7.62cmだそうです。ライン上もバッターボックスの一部と考えられています。このへんのルールは次回で取りあげましょう。

 バッターボックスをかく機会なんてほとんどないかもしれませんが、何かの時に役に立つかも知れませんので、興味のある方は覚えてみて下さい。

 

メジャー(巻き尺)なしにバッターボックスをかいてみよう

 練習の時にはメジャーでわざわざ測るのが面倒なので適当にバッターボックスをかいていますが、メジャーを使わずに簡単な方法でバッターボックスをかくことができます。関西連盟事務局長に教えてもらった方法を参考に考えてみました。これで試合の時にメジャーを忘れても大丈夫です。ただし、多少の誤差はありますのでご了承下さい。

 

A.バッターボックスとホームベースの間
 バッターボックスとホームベースの間は約15センチですから、A球のボール2個分くらいです。B球でもあんまり変わらないと思いますよ。

B.バッターボックス縦の大きさ 
 バッターボックス縦の大きさはバット2本とA球のボール2個分です。図のようにベースの角からそれぞれバット1本とボール1個分おいた長さになります。金属バット(大人用)は83センチくらいなのでそれを基準にしています。

C.バッターボックス横の大きさ
 バッターボックス横の大きさはバット1本とA球のボール5個分です。あるいはバット1本半の長さになります。

 

 

参 考

 ついでに他の部分の大きさも調べてみました。

 
女子軟式野球
男子野球
 ホームベースの大きさ
縦横=43cm×43cm
(A球ボール6個分くらい)
縦横=43cm×43cm
ピッチャープレート(投手板)からホームベース先端までの距離
17m
(バット20.本半の長さ)
18.44m
(バット22本分の長さ)
 塁間の距離
25m
(バット30本分)
27.4m
(バット33本分)

 参考になるかどうかはわかりませんが、メジャーを忘れたときは一度お試し下さい。他にも身近なモノを使ってグラウンドにラインを引くことができるかも知れませんね。次回はバッターボックスでのさまざまなプレーについて取りあげていきたいと思います。

 

 

 

NO.32 バッターボックスの掟 その2(2001.9.30)

 今回は前回の続きで「バッターボックス」です。バッターボックスでの様々なプレーついて取りあげてみたいと思います。ちょっと記憶があやふやなまま書いているので、怪しいと感じたらルールブックを開いて下さいね。

 

バッターボックスから足が出たらアウト?

 打ったときにバッターボックスから片足、または両足が完全に出てしまうと、ヒットでもホームランでも打った打者はアウトになってしまいます。ライン上もバッターボックスに含まれるので、「完全に出る」というのは下図のようにラインの外側に足が出てしまった時をいうそうです(だったと思います)。

 また、打った打球がファールになっても、打者はアウトになってしまいます。ただし、足が出ても空振りの時はアウトになりません。ストライクの判定になります。

 バッターボックスから足がはみ出るなんてことはめったにないと思っていませんか?しかしバントの時などは意外とバッターボックスから足が出ていたりするものです。気をつけて下さいね。

 

 

問題1

スクイズの時、はずした球をバッターボックスからジャンプしてバントをしていることがあるが、この場合バッターボックスから体ごとはみ出ることになるがアウトにならないのか。

 

答え

スクイズでバッテリーがはずしたボールをバントするときに、打者がはずしたボールに飛びついてバッターボックスから出てしまうことがあります。上で述べたとおりバッターボックスから足が出たらアウトですが、体が地面と接触する前にバットにボールを当てればアウトにならないそうです。つまり空中でバントすれば、後で体がバッターボックスから出てしまってもアウトにならないんですね。

 

 

問題2

打者がバッターボックスに入れば、投手はいつでも好きなときに投げることができる? 

 
答え

できません。打者が十分に打撃姿勢をとってからでないと投げることはできません。打者がバッターボックスに入ったからといって、打者が構えてもいないのにボールを投げてはいけないということです。もしランナーがいるときにこの行為をしてしまうとボークになってしまうそうです。気をつけて下さい。しかし、打者がなかなかバッターボックスに入らなかったり、いつまでも打撃姿勢をとらなかったりした場合に、投手はボールを投げても構わないことになっています。しかもストライクゾーンからはずれていてもストライクとされるのです。打者の明白な遅延行為は反則になるので気をつけて下さい。

 

 

 

NO.33 1塁ベースへの道・その1(2001.10.15)

 今回は1塁ベースに行くまでのプレーについて取りあげます。「打った直後のスタート」「ベースに到達するまでの走り方」について考えてみました。次回も1塁ベースへの走り方についてです。 

 

打った直後のスタート

 打った直後にはすぐにスタートを切らなければなりませんが、しばらくボールの行方を見てから走り出す選手がいます。打った後のスタートは大切です。ほんのちょっとの差でアウトにもセーフにもなります。バットを振り終わった直後にすぐにスタートを切れるようにしなければなりません。特に足の速い左打者は振り終わりからのスタートをよくすることで、セーフになることも多くなるかも知れません。ベースランニングの練習の時も、ただ単にスタートを切るのではなくバットを振る動作を入れてからスタートを切る練習をするとよいらしいです。

 またずっとボールの行方を見ながら走る人もいますが、ボールの行方ばかり気にしていては加速できません。打った後、瞬時にボールの行方を判断したら、あとは1塁ベースをめざして走ることが大切です。 

 

ベースに到達するまでの走り方

1塁まで2通りの走り方があります。内野ゴロの場合の走り方と、フライ・ヒットの場合の走り方です。

内野ゴロ:図1のように1塁ベースまで一直線に走り、ベースの角を踏んでファールグラウンドの方へ右に切れながら走っていきます。

フライ・ヒット:図2のように1塁ベースの手前でふくらみ、ベースの内側の角を踏んでオーバーランをします。1塁ベースを回ったらボールの行方を確認し、外野手が落球やハンブルをしていたり、野手の中継が乱れていたらすぐに次の塁をねらえるようにしておきます。

             

 

 フェアグラウンド内を大きくふくらみながら走ると、アウトになることがあります。1塁手の捕球など、内野手の守備をじゃまする意図があるとみなされると守備妨害でアウトになるわけです。といっても右打者は位置的にフェアグラウンド内の一部を走ることになりますので、その時はあまり守備のじゃまにならないように走って下さい。ただしスリーフットラインの中はランナーに走塁権があるので、ここで野手とぶつかっても守備妨害にはなりません。1塁へ走るときはなるべくスリーフットラインの中を走るとよいわけですね。

 

▼意図的な守備妨害はアウトになります

 1塁ベースへは、たとえ内野ゴロでもフライでも全力疾走することが大切だと言われています。これは、野手がフライを落球するかもしれませんし、内野ゴロを悪送球をするかもしれないからですね。また必死に走る姿は守備側にいろんなプレッシャーを与えています。特に足の速いランナーが平凡な内野ゴロでも全力疾走している姿を見れば、守っている方も焦ってエラーをしたり悪送球したりすることも多いのではないでしょうか。全力疾走は相手にプレッシャーを与える技術のひとつと考えてみるのもいいかもしれません。そして何よりも必死で走る姿は味方の士気を高める効果があります。1塁へのヘッドスライディングや全力疾走は「決してあきらめない」という強い意志の表れです。その真摯なプレーが思わぬ逆転劇を引き起こすこともたくさんあります。「全力疾走」。やらないよりはやった方がいいと思います。

 次回も「続・1塁ベースへの道」です。1塁ベース付近のプレーについて取りあげたいと思います。

 

 

 

NO.34 1塁ベースへの道・その2(2001.10.27)

 今回は1塁ベース付近でのプレーについて取りあげます。具体的には、「1塁ベースを駆け抜けたあと」の注意点です。

 

ベースを駆け抜けたあと

 1塁ベースを駆け抜けたあと、再びベースに戻るときに1塁手にタッチされてアウトになる場合があります。それは「1度ベースを駆け抜けたあとに、ランナーが少しでも2塁に行くそぶりを見せた場合」です。

 例えば、内野ゴロで1塁を駆け抜けたとき、1塁手がボールを落球してセーフになりました。1塁手がボールを拾っている間に、ランナーが2塁へ行こうと1歩だけスタートを切りましたが、1塁手がすぐにボールを拾ったので2塁に行くのをやめ1塁ベースに戻りました。この時、べースに戻る前に1塁手にタッチされるとアウトになるわけです。またこのルールは、ランナーがファールラインの外側(ファールグラウンド)にいても、ファールラインの内側(フェアグラウンド)にいても適用されます。

1塁を駆け抜けたあと

2塁へ行く姿勢を見せた場合
 

 また女子野球でたまに見かけるのが、「ライトゴロ」です。ライト方向にヒットを打っても、ライトの守備位置が前の時はライトゴロでファーストに送球されることがあります。この時、ランナーがオーバーランをしていたり2塁に行く姿勢を見せていたら、帰塁するときにタッチされてアウトになるかもしれません。くれぐれも気をつけて下さい。

◆注意◆ 

 また、傾向として、図のように1塁ベースを駆け抜けたあともフェアグランド内を走り抜けていると、2塁へ向かう意志があると見られることが多いので気をつけて下さい。内野ゴロなどで1塁ベースを踏んだあとは、ファールグランドへ走り抜けた方が無難です。

 このように1塁ベースにたどり着いたあとにも様々な危険が待っています。走塁ひとつとっても野球は奥が深いようです。この他にも1塁ベースへ向かうまでに気をつけなければならないことがたくさんありますが、最近忙しいので今回はこれくらいにしておきます。また気が向いたら取りあげるつもりです。

 

 

 

 

NO.35 ミスと向き合う(2001.11.17)

 スポーツをしている限り、誰もが「ミス」というものを経験します。ミスをしないようにたくさんの練習を積んでいても、やっぱり「ミス」は出てしまいます。これはもう仕方のないことなのかもしれません。ミスをいつまでも気にして後のプレーに影響が出るよりも、「ミスは出るもの」と考えてミスの後にうまく気持ちを切り替える技術を身につけた方がいいのではないかと思います。そこで今回は「ミスの後の気持ちの切り替え」について取りあげてみました。

ミスをしたときの気持ち  

 ミスをしたときの気持ちや、その後の切り替えについてうちのメンバーに聞いてみました。

  • 一度失敗したら、次もこっちにボールこいとか無理矢理考える(でも難しい)。
  • 苦手なプレーでミスすると落ち込んで立ち直れない。得意なプレーでミスしても気にならない。むしろ次こそは!と思う。
  • エラーした時はすごく落ち込むが次はアウトにしてやると思い直す。でも試合が終わったらまた落ち込む。
  • エラーをすると口が乾いて挙動不振になる。気持ちの切り替えは次のチャンスでいい仕事するまで出来ない。たまに、次はみとれ〜と熱くなれる時もある。
  • 十中八九、その場は他人のせいにする。次のプレーのことで頭がいっぱいなので、ミスのことは忘れてしまう。
  • 試合中はグローブとか、地面のせいにする。いちおう、試合後に反省する。

 以上のように、いろいろ気持ちの切り替え方があるようですが、それではミスをしたときの心理やその後の気持ちの切り替えについて調べてみました。

 

ミスした後の思考回路

 ミスをしたときに、その原因を自分自信に求めるのか、自分以外の物や人に求めるのかでは、その後のプレーに大きな違いが出るそうです。「自分の技術が足りないからミスをしたんだ」と自分を責めるよりも、「今のはグローブが悪かったんだ」「グラウンドコンディションが悪いからだ」「太陽がまぶしかったから捕れなかったんだ」と開き直るほうが気分的にもずいぶん楽になります。前者のように潔く認めるのもいいですが、自信を喪失して後のプレーに影響するようではいけません。後者のようにある程度開き直ってしまえば、気持ちの切り替えもしやすいようです。みなさんはどちらですか?

 

マイナス思考の罠

 ミスをしたときは、その事実を認めたくないという心理と、認めようとする心理が激しくぶつかり合い、脳内で一時的な錯乱状態が生じるそうです。ミスをしたときに周囲から自分だけが切り離されたように感じたり、ミスした時間帯がいつまでも停止したままのように感じるのはそのためなんだそうです。この錯乱状態が強いほど正常な思考回路がストップし、まだ試合の途中なのに「このミスですべてが終わった」と必要以上にミスを重大なものと思いこんで、気持ちを切り替える作業が難しくなってしまいます。

 また、「なんであんなミスをしてしまったんだ」とミスのことばかりに気にしてしまうことで、次のプレーに対する集中力がなくなってしまいます。さらにミスは「もうこれ以上絶対ミスは出来ない」という強迫観念や「次もさっきと同じようにミスをするのでは」という不安を生み出します。そして「大切にプレーしなければ」という心理から、かえって消極的なプレーになり、ミスが続いてしまうということになってしまうそうです。これがミスの悪循環です。

 

ミ ス
マイナスイメージ
不安感の増大

消極的な気持ち・プレー

さらにミス

 

攻めの心理に至るまで

 「ミスをしたときこそ積極的になれ!」とよく言いますが、実際ミスをしたときはすぐに積極的な気持ちに切り替えることは難しいように思います。しかしミスの後にも平然として、気持ちをうまくコントロールしている人もたくさんいます。ミスの後に、いったいどうやって「次こそはアウトにしてやる!」というような『攻めの心理』に気持ちを切り替えているのか調べてみました。

 

1.ミスをしたら開き直る

 前にも書きましたが、ミスをした後の心は「ミスしたことを認める気持ち」と「認めない気持ち」との葛藤状態です。こんなときにいきなり頭の中をプラス思考に変えようとしてもなかなかできません。逆にプラス思考をしようとすればするほど、反発してマイナス思考が強くなってしまいます。こんな場合はまず、ミスしたことを認めてしまいます。しかし「やってはいけないことをやってしまった」とミスを否定的に受けとめるのではなく、「人間のやることだからミスもするよ」「これだけ試合をやっていればミスも出るよ」と開き直るのがいいようです。

 あるいは、ミスの原因を一時的に技術以外の外的要因に求めてしまいます。簡単に言うと、失敗の原因をその場はとりあえずグローブやバット、グランドコンディションなどのせいにして開き直ってしまうことで、心の負担を軽くして沈んだ気持ちを前向きに変えていきます。「失敗を道具の責任にするなんてみっともない」と思うかもしれませんが、ミスからうまく気持ちを切り替える上では有効な手段のようです

 

2.プラス思考と攻めの心理

 ミスをした後、一度開き直ってしまえば簡単にプラス思考や攻めの心理に移行できます。例えば、内野ゴロのエラーでランナーが出てしまっても、「次にもう一度自分の所へボールが来たらダブルプレーでアウトに出来る」と考えたり、ランナー2塁で四球を出してしまっても「ランナーがつまって逆に守りやすくなった」とか、「キャプテンの自分がエラーしたのだから、他のメンバーはもっと気楽にプレーできるだろう」など、自分に都合のいいように解釈してしまいます。そのうえで「自分のミスは自分で取り返す」という積極的な気持ちでプレーに臨みます。「自分の所にボールが来い」と考えて声に出してみたり、普段の守備位置より一歩前で守ったり、通常では追わなくてもいいファールボールを追いかけるなど、積極的な『攻めの心理』を前面に出すようにします。そうすることで、ミスによって失いかけたプレーに対する集中力や勝負に対する執着心を取り戻すことが出来るのです。「心が動作を作り、動作が心を作る」ということらしいですよ。

 

ミ ス
開き直る
プラスイメージ
攻めの心理
積極的なプレー

 

ミスの指摘

 一昔前ですがクラブ活動などの試合の時に、ミスした選手がベンチに帰ってきたら、やたらと怒ってミスを責める監督やコーチをよく見かけました。クラブ活動は学校教育の範囲なので、いろいろ意味があるのだろうと思いますが、実際には気持ちを切り替えて次のプレーに集中しようとしている選手に対して、再び選手にミスを意識させるのはあまり得策ではありません。ミスをした本人が一番責任を感じているのは確かです。そのうえで気持ちを切り替えようとしているのに、ベンチで監督やコーチ、チームメイトからミスについて責められれば、せっかく気持ちを切り替えたのにまたミスのイメージに取りつかれてしまいます。こういうことがミスの悪循環につながってしまうこともあります。もちろんミスを責められても逆に奮闘する選手もいるでしょうが、試合中はなるべく早くミスやミスのマイナスイメージから選手を解放してあげることが必要です。ミスについていろいろ指摘するのは試合が終わった後の方がいいようです。

 

 以上、ミスの後の気持ちの切り替えについて取りあげましたが、文字ばっかりでうっとうしくなってしましました。ちなみに私がエラーをしたときの思考回路はだいたい次のような感じです。「キャッチャー前のバント処理でエラー」→「キャッチャーミットは野手用じゃないから捕球しにくいねん」→「セカンド盗塁でランナーを刺すチャンスが出来たからかえってよかったかも」→「盗塁してきたら絶対アウトにしてやる!」というような具合です。意識してこういうように考えているわけではなくて、たくさんエラーを繰り返すあまりに自己防衛として自然とこういう思考回路ができてしまったように思います。もちろん試合が終わったら、自分のエラーでめちゃくちゃ落ち込みますし反省もしますよ。そもそも、バッテリーはエラーをしても次から次へ打者と対戦していかなければならないので、落ち込んでいるひまはありません。ボールに触る機会が多いほど気持ちの切り替えもしやすくなっているように思います。投手に至っては、その強気な性格からミスをしても気にしないという一面もあるようです。バッテリーに対して野手、とくに外野手は常にボールを触ることもありませんから、自分のプレーに対して向き合う時間が多く、ミスに対する気持ちの切り替えも難しくなっているのかも知れません。ミスをしたときはやばいくらい傲慢になった方がいいのかもしれませんね。

 

参考文献:「勝ちにいくスポーツ心理学」(山海堂)高畑好秀・著 他

 

 

 

  

NO.36 足がつる(2001.12.16)

 久々の更新です。先日の体力測定で足がつり、ひどい目にあったことを教訓に「足がつる」ことについて調べました。

 

筋肉の働きと疲労

 ぐっと力を入れたとき筋肉は収縮した状態にあります。筋肉の収縮が繰り返されると筋肉が硬く緊張した状態になり、血行が悪くなります。すると筋肉中に疲労物質(乳酸など)がたまり、筋肉中の収縮力が弱まったり、筋肉本来の弾力性が失われたりします。そのまま運動を続けると疲労の蓄積が助長され、筋肉に負担がかかり、筋断裂などを起こし怪我を招くというわけです。この筋肉疲労は「足がつる」原因の一つといわれています。

 

足がつる

 「足がつる」原因としては筋肉疲労やミネラル不足があげられるそうですが、「足がつる」ということに関してはわからないことも多いようです。私はよく足がつるので、つりやすい体質なのかと思っていましたが、病気と関連した場合をのぞいて足がつるということはその人の体質にはあまり関係ないようです。そのあたりのことも含めて「足がつる」ことについて調べてみました。

 

 足がつるとは?

 「足がつる」というメカニズムはまだはっきりとはわからないそうですが、足がつったときは筋肉が自分の意志とは関係なく勝手に収縮または硬直し続けている状態なのだそうです。例えばふくらはぎがつったときは、ふくらはぎの筋肉が勝手に縮まって元に戻らない状態になります。しかも自分でコントロールできず、筋肉は収縮し続け、激痛を伴うというわけです。
 また「つま先立ち」(尖足)の状態のときにつりやすいようです。夜寝ているときに足がつることを「こむらかえり」といいますが、これはうつぶせで寝ていると太股からつま先まで一直線の状態になり、「つま先立ち」と同じ状態になるからだそうです。

 

 足がつる原因

●筋肉疲労:激しい運動で筋肉に疲労物質(乳酸など)がたまってくると、それらが筋肉中のタンパク質と結合して筋肉が固まり、足がつる原因となるそうです。
●ミネラル分不足:筋肉の収縮と弛緩の働きを調整しているナトリウム、マグネシウム、カルシウム、カリウムなどのミネラル分が不足するとつりやすくなります。ミネラル分が不足すると筋肉の伸縮運動をうまくコントロールできなくなるそうです。
急激な温度変化・準備運動不足筋肉が硬くなった状態で体が冷えるとつりやすいそうです。水泳のときに足がつるのは急激に体が冷えるためなのだそうです。また準備運動不足で体を充分に暖めていないことも原因のようです。
肝臓病・糖尿病:足がつる原因に他の病気が絡んでいることがあります。よく足がつる人は肝臓病や糖尿病の疑いがあるそうです。また妊婦さんもよく足がつるそうです。
●精神的・心理的要因:精神的に緊張しているときにもつりやすいそうです。また何度か同じ場面でつったことで、ある特定の場面になると足がつるという心理的なサイクルが作られてしまうこともあるそうです。
 

 

 救急処置

●足がつるということは、筋肉が収縮して元に戻らない状態なので、まずその縮まってしまった筋肉を伸ばすことが必要です。ふくらはぎがつった場合は、足を伸ばし足の親指を自分の体の方へゆっくり引っ張ります。 急に強く引っ張ると筋肉を痛めるので気をつけて下さい。
●また、縮まっている筋肉を軽くマッサージすることで痛みが軽くなります。コールドスプレーで冷やすと悪化するそうなので、マッサージやストレッチで固まった筋肉をほぐして温めることが必要です。一度足がつると、ちょっとした刺激で再び足がつってしまうので、その日のうちは激しい運動を控えて安静にしていた方がよいそうです。 
 

 

 予 防

●ミネラル分の補充:足がつる原因の一つにミネラル分の不足があるので、運動前に充分なミネラル補給をして下さい。市販のスポーツドリンクでいいと思いますよ。市販のスポーツドリンクは少し濃いので水で半分くらいに薄めてから飲んだ方が吸収率がよいそうです。また、先日「足がつるならバナナを食べろ」と言われたのですが、これはバナナにカリウムが多く含まれているからです。カリウムは筋肉機能を調節する働きがあるからです。運動前にバナナやトマトを食べてカリウムを補給して下さい。またミネラルはビタミンCと一緒に摂取すると吸収率がよいそうです。
●充分な準備運動:ストレッチやランニングなどで体を充分に動かし温めて下さい。筋肉が固いままでいきなり激しい運動をすると怪我にもつながります。
●保温:寒い時期の練習や、雨雪の中での練習、水泳などでは体が急激に冷えることがあるのでしっかり保温対策をしてください。

 

 夏場に足がつることはまったくないのですが、冬になると太ももの裏やふくらはぎ、脇腹などがつったりします。こういう体質なんだと思ってましたが、単なる保温対策不足だったのかもしれません。とくに体力測定では待ち時間が長いですから、そのときに体が冷えてしまったのだと思います。今日の練習はまだ測ってない人の体力測定があるので、これからバナナを食べて鬼のようにアップをして、飛び入り参加でリベンジしてきます。次回はそのウォーミングアップのときのストレッチについて取りあげます。

 

 

 

NO.37 ストレッチ(2002.1.6)

 寒い季節がやってきました。こんな時期はケガが多くなります。そんなわけで今回はストレッチについて取りあげてみました。また、肩のストレッチについても調べてみました。衝撃の映像です。

なぜ運動前と運動後にストレッチをするのか

●運動前のストレッチについて

 簡単に言うと運動前のストレッチは筋肉をほぐして動きやすくするのが目的です。とくに関節に接している筋肉や靱帯などの部分は、ストレッチをすることで関節の可動域(関節の動く範囲)を広げることができます。これで動作がスムーズになりスポーツでも自分の能力を充分に引き出すことができるのです。また、可動域が広がることで筋肉や腱に無理な負担がかかりにくくなり、怪我の予防にもつながります。ただし、運動前にいきなりストレッチをすると逆に筋肉を痛めることがあるので、ウォーミングアップで充分に体を暖めてからストレッチをして下さい。

●運動後のストレッチについて

  運動後にストレッチをすると疲労の回復をはかれます。運動直後は筋肉に疲労物質(乳酸など)がたまっていますが、ストレッチで収縮した筋肉を伸ばすことで筋肉に刺激が与えられ血行を促進し、筋肉にたまった疲労物質を取り除いてくれるわけです。クールダウンでストレッチをするのは疲労回復が目的なのです。

 

ストレッチの掟
その1.リラックスして行う

 落ち着かない状況や緊張した状態では充分なストレッチ効果が得られないので、心身ともにリラックスした状態で行う。スローテンポの音楽をかけるのも効果的。 

その2.身体を温めてから行う

 身体が冷えていると筋肉は伸びにくいので、ランニングなどで脳や臓器に集中していた血液を筋肉へと送り込み、筋肉の温度を上げてから行う。

その3.ゆっくりと伸ばす

 いきなりグイグイと伸ばすのではなく、ゆっくりと徐々に伸ばすようにする。また目一杯伸ばすのではなく、体を慣らしつつ徐々にストレッチの強度を変えていく。 

その4.反動はつけない

 反動(弾み)をつけると、筋肉に無理な負担がかかり、筋肉や腱を傷つけてしまうことになりかねない。反動をつけずに伸ばせる範囲で行う。

その5.息を吐きながら伸ばす

 息を吐きながらストレッチを行うと、緊張がやわらぎ、筋肉もリラックスして伸びやすくなる。もちろん息は吸ってもよい。自然な呼吸をこころがける。

その6.伸ばしている時間を知る

 ひとつのストレッチにつき20秒〜30秒が目安。この範囲内で自分にあった時間を確かめる。

その7.痛みを感じる手前でやめる

 痛みを感じるまで伸ばすのはむしろ逆効果。筋肉や腱を痛める結果にもなるので、気持ちがいいと感じたところでとめる。当然ながら、他人と「どこまで曲がるか」といったことを競うことは言語道断。

 

肩のストレッチ

 寒い時期に無理して肩を使うと故障の原因になります。運動前、そして運動後のストレッチはたいへん重要になってきます。そこで、ここでは肩のストレッチについて取りあげてみました。「反動をつけずに」、「伸ばしている筋肉を意識しながら」、「痛みの出る手前で止める」ということに注意しながら20秒程度ストレッチをしてみて下さい。適当に書いてるんで、ちゃんとしたストレッチはスポーツトレーナーなどの専門家に聞いてみて下さい。

 

●基本的なストレッチ

胸の高さで片手のひじあたりをもう片方の手で抱え、抱えている手の方へ引っ張る。

片手でひじをつかみ、背中側へ押し下げる。

片腕を背中にまわし、逆の手で横に引っ張る。胸を少し張り、首も腕を引っ張る方向へ少し傾ける。

 

●バットを使ったストレッチ

片手でバットの先端を持ち、ひじの部分までバットに乗せる。テコの原理を利用して、もう片方の手でバットを少し上にあげる。

片手を後ろにまわし、バットを持つ。もう片方の手でバットのグリップを持って上へ引っ張る。胸は少し張る感じ。肩の前の筋肉が伸びているのを意識する。

 

●投球動作に沿ったストレッチ

 肩などのストレッチでは、実際に投げる投球動作に似たストレッチも効果的なんだそうです。ほとんどの関節は「円」または「らせん」を描きながら運動する構造になっていて、肩は「球関節構造」というものになっているそうです。ゆえに「円」を描くようにストレッチすることが基本らしいです。つまり手やひじが肩を軸として円を描くように動かしながらストレッチをすることで、正しく肩周辺の筋肉群を無理なく伸展させることができるのだそうです。 

壁や柱に手をあてて、少しひざを曲げて上体を沈めて、ゆっくり肩の筋肉を伸ばす。

上腕を外側に回旋させた状態(手のひらが上)でストレッチ。

上腕を内側に回旋させた状態(手のひらが下)でストレッチ。

 

   

全体のストレッチと個人のストレッチ

 冬場の練習では、主運動にはいる前のストレッチを充分にしておきたいものですが、故障を多く抱えている選手にとって全体のストレッチだけでは不十分なこともあります。そういう場合は全体のアップやストレッチとまったく別メニューにするのもいいかもしれません。メンバーを故障の部位ごとにグループに分けてそれぞれにあったアップやストレッチをするのもおもしろいのではと思います。日本人的な考えでいくとどうしても全体でやることを重視してしまいますが、アップやストレッチに関しては個人的なメニューがあってもいいですよね。どこを痛めていて、どこをどれだけ入念にストレッチをすればよいかは自分自身が一番よくわかっているはずなので、ストレッチは全体でやるよりむしろ個人の自己管理の範囲なのかもしれません。だからといってうちのチームで個人に任せてしまうと、まったくストレッチをしない奴もでてくるのでそれも問題です。早めに練習に来て、全体のストレッチの前に自分に必要なアップやストレッチを済ませてから全体の準備運動に入るなどの自主性も必要なのかもしれません。昨年はケガ人を続出させてしまったので、これからアップやストレッチに関してはもっと柔軟な考え方をしていきたいです。

 

 今回はストレッチについてでしたが、もう少し突っ込んで具体的なコンディションづくりを調べてみたかったです。またいつか機会があればやってみようと思います。ちなみにストレッチの写真はデジカメで父親にとってもらいました。かなりあきれてましたけどね。こんなアホなことに協力してくれるとはさすが我が父。最後の方は楽しそうでしたよ。お地蔵さんのかぶりものは近所のトイザラスで買いました。1280円。安いです。

 

 

NO.38 声(2002.4.13)

 先日の試合で、理事長はじめ諸先輩方に「以前に比べて声が出てない」とのご指摘をうけました。スポーツで最も大切なことを忘れてましたね。「声が出るキャッチャーはいいキャッチャー」が持論だったのに、もう一度原点に戻ってやり直しです。そんなわけで今回は「声」について取りあげました。

 

声と緊張

 試合中によく「声を出せ、声を出せ」といわれますが、『声を出す』ということは一体どんな効果があるのでしょうか?試合で声を出すことは気分を盛り上げていくという意味合いもあるのでしょうが、「声を出す」ことによる最大の効果は緊張を緩和するということです。

 「声と緊張」をテーマにしたある実験では、被験者に恐怖VTRを見てもらい、恐怖を感じた時に声を出してもらうグループと恐怖を感じても声を出さないグループに分け、それぞれの脈拍、呼吸、筋緊張を測定して「恐怖による緊張度」を比較しました。その結果、声を出したグループに比べ、声を出さなかったグループは恐怖による緊張が3倍も長く続いたそうです。つまり、声を出すことで緊張はより早く緩和されるということのようです。

 これを試合中のプレーに置き換えてみましょう。エラーをして、それによる極度の緊張が一度生じてしまうと、その緊張状態がしばらく続いてしまいます。ミスの後、頭の中で何度もその体験や映像を反復してしまい、その結果、エラーを繰り返してしまうのはそのためのようです。一度のミスがきっかけで何度もミスを続けてしまうということは、みなさん経験のあることではないでしょうか。

 だからこそ、試合でミスをしてしまったときは、自ら積極的に「声」を出して緊張を和らげることが必要なようです。よくエラーをした後にシュンと落ち込む選手を見かけますが、それでは余計にミスを繰り返してしまうかもしれません。開き直って、どんどん声を出すこともミスを繰り返さない対処法のひとつです。

 

声を出して目を覚ませ

 経験があると思いますが、極度の緊張状態では、頭の中が真っ白になったり、ボーッとしたり、地に足が着かないような感覚に襲われます。そして体が思うように動かず、いつも通りのプレーができなかったり判断ミスをしてしまったりということもよくあります。このように試合中にボーッとして半分夢の中にいるような感覚がつきまとうのは、緊張により覚醒水準が低下しているためです。そして体が動かないのは、緊張のために脳や神経系統、筋肉が覚醒しておらず、また筋肉そのものに極度の筋緊張が生じて体が固くなっているためです。

 この緊張による半覚醒状態から脱出するには、やはり「声」を出すことが必要なようです。大声を出すことと、自分の声を自分の耳で聞くことで覚醒水準を高めることができます。緊張して体が動かないと感じたときは、大声を出して自分自身を起こしてあげて下さい。

 このように自分が緊張していることがわかる場合はまだいいのですが、自分が緊張していることに気づいていない場合が一番危険なのだそうです。自分では次のプレーのことをしっかり考えていても、思った通りに動けなかったり判断を誤ったりすることがあります。なんとなく集中できていないときや、なんでもないプレーでミスをしたりする時は、ひょっとして緊張で体が半覚醒状態にあるのかもしれません。そんなときはぜひとも大声を出して自分の脳や神経や筋肉を起こして下さい。

声を出すなら具体的な指示を

 また、声を出すなら、より具体的な次のプレーを言葉にすることが効果的なようです。声を出して、次の具体的な行動を脳や筋肉に伝達させることにより、筋肉の反応をよくすることができるそうです。たとえば、ランナー1塁でダブルプレーを狙うとき、「4-6-3のゲッツーだ」と具体的な声を出すことで、脳、神経、筋肉への伝達系統が準備され、次に起こす「4-6-3のダブルプレー」というアクションの筋反応がスムーズになるということらしいです。

 野手は投手を励ましたり、お互いに声を掛け合うほかに、次のプレーの具体的な指示を声に出してみてはいかがでしょう。何を言っていいかわからない場合は、キャッチャーからの指示を反復して声に出してみるのもいいかもしれません。どんどん具体的な指示をすることで、他の選手へのプレーの確認にもなります。声を出しても損することはないので、機会があれば試してみてはいかがでしょうか。

 

合い言葉を作ろう

 「声」とは少し話がそれますが、「合い言葉」について取りあげます。

 チームスポーツにおいては、ピンチの時などにチームメイト全員が同じ心理を持つ必要があります。大学時代にスポーツ心理学の授業で聞いた話ですが、その教授が某社会人バレーボールチームで監督をしていた時、「ピンチの時にチームの中で誰か一人が一瞬でも負けると思ったら負ける。逆にチーム全員が勝つと信じて疑わなければどんピンチも乗り越えられる」ということを常に言い続けてきたそうです。積極的な気持ちの選手とミスを恐れて消極的な気持ちの選手などが入り混じり、メンバーの心理がバラバラならば、プレーの連携もうまくいかないということですね。緊迫した場面でメンバー全員が同じ心理で心をひとつにすることが、ピンチを乗り越える最大の武器なのだそうです。

 それでは、チームの選手全員が同じ心理を持つにはどうしたらいいのでしょうか。それが「合い言葉」です。実際の試合などでピンチの時にお互いに掛け合う言葉は、意外とバラバラです。「落ち着いて」「集中して」「気を引き締めて」「いつも通りやろう」などなど。いろいろ声をかけるのはいいですが、これではあまり選手同士の一体感は得られないように思います。いろんな事を言うよりも何かひとつ、合い言葉のようなものを作って、その言葉を掛け合う方がチーム全員が共通の心理を持つことができるようです。

 昨年からうちのチームではスローガンを作ってますが、昨シーズンはそのスローガンが図らずもうちのチームの「合い言葉」となりました。試合中でも自然とその合い言葉が出てくるようになり、その言葉を口に出すことで試合の中で自分たちがやろうとしている事を認識できたり、また共通の心理を持つことができたように思えます。私たちが昨年使った合い言葉はあまりにアホらしいモノなので、恥ずかしくてとても紹介できませんが、とにかくピンチの場面などでチームの選手全員が共通心理を持つにはかなり効果的だと思います。試合や練習でたびたび使っていくことで「合い言葉」による条件付けがいろいろできるはずです。「ここは心をひとつに!」という場面で使えるような合い言葉を作ってみて下さい。

 

 

 ま、このように声を出すということは、緊張を緩和したり、緊張による半覚醒状態から脳や筋肉を覚醒させるという働きがあるようです。しかし、普段から声を出していないと試合でいきなり声を出そうとしても出ないことが多いので、練習の時から声を出すように心がけて下さいね。昔から「声を出すことがスポーツの基本」と教えられてきましたが、単に精神論だけのものではないようです。これを機会にまたどんどん声を出して「うるさい選手」にカムバックしたいです。

 復帰一発目から濃いネタになりました。こんなことしてるから野球オタクとか言われるんでしょうね。ここまできたらもう自己満足の世界です。それにしても「野球オタク」。なかなかええ響きです。

 

参考文献:「野球のメンタルトレーニング」高畑好秀著(池田書店)、「勝ちにいくスポーツ心理学」高畑好秀著(山海堂)

 

 

 

 

NO.39 目標設定(2002.4.30)

 さて、今回は目標設定について取りあげます。皆さんのチームもいろいろと目標を立てていると思いますが、形だけのものに終わっていませんか? 私たちのチームは目標を設定したという作業だけで満足してしまって、その目標を活用しているとはあまり言えません。せっかく目標を立てるなら、より効果的な目標設定をしてみようということで調べてみました。

 

■ 110%の目標を

 みなさんの今シ−ズンの目標はどんなものでしょうか? 「全国制覇」?「ノーヒットノーラン」? 夢を大きく、目標設定も高くすることは悪いことではありません。しかし、試合で1回も勝ったことのないチームが、「全国大会優勝」という目標を立ててもあまり実感がわきませんね。現在の自分たちの実力から考えても、まったく現実感のない目標設定は、逆に無力感を強める結果となってしまいます。当然そのような目標設定では達成感も味わえないため、自分たちはいくらがんばってもダメだと、逆に自信を失ってしまうことにもなりかねません。ノーバート・ウィナーというアメリカの学者は、人間は目標を達成させるために、つねに現実と目標のズレを見つけだし、そのズレを修正するために脳から指令を出していると言っています。ですから、あまりに非現実的な目標設定は、ズレが大きすぎて脳の方でも処理しきれず、具体的な指令が出せないという結果を招いてしまいます。高すぎる目標設定は、逆にモチベーションを下げてしまうこともあるようです。

 それでは、目標をどのように定めたらいいのでしょうか。それが「110%の目標設定」です。ある目標設定の実験で興味深い結果があります。走り幅跳びで1回跳んでもらい、その記録を基準として100%、110%、120%の目標設定をしてから再び跳んでもらうというものです。その結果、110%の目標設定をしたときが一番記録が伸びたそうです。

 110%の目標に挑戦するときの心理は「ちょっと難しいけど、うまくいったらできるかもしれへん」というものなのだそうですよ。これがポイントです。「こんなことは絶対無理やんけ」と非現実的な目標設定は無力感をともないますが、同様に目標設定が現状維持やそれ以下であっても「こんなことはいつでもできるやんけ」とやる気がでないものです。できるかできないか確率が半々くらいの「110%の目標設定」が、人間のやる気を一番引き出すようです。みなさんも一度、「ちょっとがんばったらできるかもしれない目標」を立ててみてはいかがでしょう。

 

■ 段階的な目標設定

 スポーツをする上で、高い目標を持ちそれに挑戦することは非常に大切なことです。しかし、現時点での自分の実力と照らし合わせたとき、その目標があまりに非現実的なものであれば、目標と現実のズレが大きいためにその目標だけでは無力感を感じてしまうはずです。そんな場合は、その目標を最終目標として、それに届くまでにクリアしなければならない段階的な目標を設定するのがよいようです。まず、最終目標を考え、目標に到達するのに必要な事柄(技術、能力)を書き出します。そして長期(1〜3年もしくはそれ以上)、中期(6ヶ月〜1年)、短期(1〜5か月)というように段階的に分けて目標を設定します。たとえば最終目標が「全国大会優勝」ならば、長期目標は「関西大会優勝」、中期目標は「ベスト4」、短期目標は「そのために必要な技術を修得する」ということになるでしょうか。

 段階的な目標設定をしても、「いつまでに」という期限をつけなければマンネリ化した練習をだらだらとしてしまう傾向があるようです。短期、中期、長期の目標ごとに期限をつけることで目標がより現実的になり、効率的な練習をしなければという意識も出てくるようです。ただ、スランプに陥っている場合、「期限をつける」ということはいたずらに焦燥感をあおり、過度なプレッシャーを生むだけなので気をつけて下さい。

 

■ 目標は明確に、前向きなモノを

 目標設定をしたとき、より強くとか、より速くとか、よりよくなどというように抽象的なものになっていませんか? 方向や行き先がはっきりしていなければ、結果もはっきりしなものとなります。「今日は勝つぞ」という目標を立てて、さらにどのように攻めて勝つのか具体的な目標を立てれば、ただ何となく勝ったよりも試合後の達成感が違ってくるはずです。

 また、目標を設定したときに「〜しないように」とか「〜してはいけない」という否定的な表現が入っていませんか? たとえば「今日は四球を出さない」とか「三振だけはしないようにする」というものです。これでは目標としていることをイメージするのには不十分です。むしろ「今日は初球からどんどんストライクを入れる」とか「初球からどんどん振っていく」というように起きてほしいことを目標にする方が、イメージしやすいのではないでしょうか。目標設定は「何をしたくないか」ではなく「何をしたいか」が重要です。

 

■ 目標を貼る

 中学・高校でクラブ活動をしていたときに、部室などに目標を書いた紙が貼ってありませんでしたか? 目標を書き出して、それを壁に貼っておくことで、目標はより具体化されます。短期、中期の目標設定を書いて見えるところに貼っておくといいそうですよ。また、監督やコーチが常に目標を口に出して選手たちに伝えれば、チームに高い目標意識を与えることができます。目標が形だけのものになってしまわないように、工夫してみてはいかがでしょう。

 ただし、目標設定には柔軟性を持たせることも必要です。スランプに陥っている場合は、目標に向かって自分をがんじがらめに縛るのではなく、目標設定を調整し新しく組み替えることも重要になります。

 

 

 今回は目標設定について取りあげましたが、いかがだったでしょうか? 毎週ただなんとなく練習をこなすより、具体的な目標を持ち、目的意識をもって練習をする方が得られるものも多いと思います。私の知っている関西の強豪チームのいくつかは、年間を通して細かい計画を立て、しっかりとした目標をもって練習に取り組んでいるそうです。だからこそ常にいい成績が残せるのかもしれません。一度チーム全員で目標について話し合ってみるのもいいかもしれませんね。アメリカでは、そのシーズンの目標を明確にするために行うミーティングを「ゴールパーティ」といいます。チーム全員が参加して、話し合って目標を決めるわけですね。監督やコーチなどから与えられた目標より、選手たちが自分たちで考え出した目標の方が、自分たちが何をすべきか認識できてチームの団結力を強めることができるはずです。もうシーズンは始まっていますが、機会があれば目標設定について話し合ってみて下さい。

 

参考文献:「SPORTS SLUMP BUSTING」アラン・S・ゴールドバーグ著 佐藤雅幸監訳(ベースボール・マガジン社)、「勝ちにいくスポーツ心理学」高畑好秀著(山海堂)

 

  

 

 

NO.40 試合でのピッチング(2002.5.18)

 今回は試合でのピッチングについてとりあげます。試合中にストライクが入らなくなったり、カーブが曲がらなくなったり、急に打たれだしたりということがありますが、試合が継続している中でピッチングを立て直していくことも大切です。そこで投手が試合中に気をつけるべき事柄をまとめてみました。

  

 速球に伸びがないときは?


 いわゆる「ボールの伸び」は、バックスピンの回転数の多さによって生まれます。回転数の多いボールほど、バッターの手元でグンッと伸びてきます。逆に、どんなにスピードがあってもボールに伸びがなければ、ただの棒球になって打たれてしまうこともしばしば。この回転数を上げられない原因のひとつに「ボールの握り方」があります。ボールを手のひらにつくくらい深く握ってしまうと、人差し指と中指の力が使えず、ボールにいい回転を与えることができません。また、ボールを握るときに指先に力が入りすぎていると、これまたよい回転のボールは投げられません。試合で速球をどんどん投げ込んでいるのにボカスカ打たれるのは、ボールに伸びがないからかもしれません。その場合は、深く握りすぎていないか、指先に力が入りすぎていないか、チェックしてみて下さい。

 

 ゲームの中盤や終盤で打たれやすい場合は?


 ゲームの中盤や終盤で球威が落ちたりコントロールが甘くなって打たれるケースが多いのは、スタミナ不足などからくる握力の低下やフォームの崩れなどが原因のようです。自分ではそれほど疲れていないと思っていても、ピッチングには微妙に影響しているようです。たとえばランナーでたくさん走っただけでも足の疲労から球威が落ちたりコントロールが乱れたりすることも多いはずです。投手のスタミナを考えた継投策や、体力を消耗しやすい速球から変化球中心の組み立てに変えたりという方法もありますが、完投したかったら普段から鍛えておくことが大切なようです。

 

 球が高めに浮きはじめたら?


 同じくゲームの終盤になると握力の低下から、ボールにおさえがきかなくなり高めに浮きはじめたり、低めに投げようとしてワンバウンドになったりということがあります。こんな場合は、足の踏み出しやフォームのチェックの他に、ボールの握りの深さを調節してみるとよいそうです。深く握ると低めに、浅く握ると高めに行くようです。リリースの時におさえがきかなくなって球が浮きだしたら、ほんの少し深めに握るようにしてみて下さい。

 

 カーブが曲がらないときは?


 カーブは回転が多いほどよく曲がりますが、回転数が少ないとあまり曲がりません。回転を多くするためには手首と指先を柔らかく使い、ボールを放す瞬間に中指でボールを押し下げるようにひねり、それと同時に親指でボールを上向きに押し出すようにひねります。人差し指と親指の間からボールを抜いて縦の回転を与えるようなイメージで投げます。ただしリリースの時に親指に力が入りすぎるとよい回転を与えられないので注意して下さい。カーブの曲がりが早すぎてワンバウンドになったり、どこを目安にして投げていいかわからないときは、右バッターならバッターのベルト付近、左バッターならキャッチャーの左肩付近を目安にして投げてみてください。

 

 試合になるとストライクが入らなくなる場合は?


 試合前の練習ではコントロールがいいのに、ゲームになるとコントロールが乱れてしまうことがよくありませんか? これは試合に対する緊張感や、打ち取ってやろうという気負いから肩に余計な力が入ってしまうからだそうです。こんな場合は、ランナーがいなくてもセットポジションから投球してみるという方法があるそうです。無駄な力みがとれてリラックスして投げられるそうです。

 またコントロールをよくするには、投げ終わるまで目標を見続けて目を離さないことが必要です。漠然とキャッチャーのミットを狙うのではなく、ミットの中指のつけ根といったように具体的な1点を狙ってみるのもいいそうです。

 それでもコントロールが悪い場合は、下半身が不安定になっているか、リリースポイントが一定していないという原因が考えられます。ステップ(足の踏み出し)の位置が一定になっているか、普段の練習から確認して投げ込むことが必要です。またリリースポイントは、放すのが早ければ高めに、遅ければ低めにいきます。これを考えながら自分のリリースポイントを見つけておくことが大切です。

 

 ひじが下がって球威が落ちてきた場合は?


 人間の腕の重さは5kg 以上あるそうで、それを何度も持ち上げて振り下ろせば当然疲れてきます。試合中にひじが下がって腕の振りが小さくなり、球威が落ちるのはそのためだそうです。ひじはテイクバックの時、肩と同じ高さまで上げなければなりませんが、ひじを上げるためにはテイクバックの時に手の甲を上向きにしておくことが大切です。そうすることで自然とひじが肩の高さまで上がり、大きく円を描く投球動作から球威のある速球が生み出されるということです。

 

 セットポジションでも球威を保つには?


 セットポジションで球速が落ちるのは、テイクバックが小さくなるからです。しかし無理にテイクバックを大きくするとモーションが大きくなってランナーに盗塁を決められてしまいます。テイクバックを小さくしたまま球速を落とさないためには、腰の回転の強さがポイントになります。左足を踏み出して、体重が前に移動し始めたら、右足に力を入れて親指のつけ根あたりでプレートを後ろに押し戻す感じで強くけります。この反動を利用して腰を強くひねることで球威のあるボールを投げることができるそうです。

 

 

                 

 

 ピッチャーというポジションは誰もが憧れるポジションですが、他のポジション以上に努力が必要だと思います。肩が強くて球が速いという素質だけでは勝てません。変化球、コントロール、フィールディング、スタミナ、闘争心、そして調整力。それらを全部こなせてなんぼやと思います。ピッチャーは総合力。最初の頃はただ一生懸命投げてるだけでもいいかもしれませんが、経験を積んでいくたびに自分を調整できるようにならないと一流のピッチャーとは言えないのかもしれませんね。そんなわけで、今回は我がチームの「野性味だけの投手陣」へ愛を込めて書きました。ワイルドなのもええですが、ときには知恵も使ってね。

 

 

参考文献:「基礎からの野球」宮坂善三・著(ナツメ社)

 

    

    

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