UNDER HEAVENS FAMILY
アンダー・ヘブンズふぁみりぃ

 今となっては下からハミ出た胸元も目に眩しい、トイレの花子さんの変形セーラー服に心沸き立たせていた日々も、遠い思い出になってしまったアニメーション版「HAUNTEDじゃんくしょん」。同じ様に美しい姿態を存分に拝ませてくれた原作のコミック版「HAUNTEDじゃんくしょん」も晴れて完結を迎え、さらなる記憶の彼方へと去っていってしまうのかと感傷に浸っていた所に、花子さんに迫るとも劣らないビジュアルインパクトを持った美少女キャラが、突然現れては目にもの見せてくれて、終わった夏がふたたびぶり返して来たような熱い感動にうち震える。

 電撃文庫から刊行された「アンダー・ヘブンズふぁみりい」(メディアワークス、530円)は、有里紅良&夢来鳥ねむという「HAUNTEDじゃんくしょん」でペアを組み、また私生活でもパートナーシップを組んでいる2人が、持ち前のオカルティックな知識とそして、圧倒的なキャラクター造形力でもって送り出して来た新シリーズ。学校霊の攻防を描いて懐かしいもの、守らなくてはならないものへの強い想いを感じさせてくれた「HAUNTEDじゃんくしょん」とはまた違う、人間の心に潜む悪しき欲望の暴走を糺す魔界の家族の大活躍を描いていて、今後の発展が今から期待されて仕方がない。

 「HAUNTEDじゃんくしょん」とある種の統一された世界観を持った一連のシリーズのひとつらしい本作。「HAUNTEDじゃんくしょん」に成長した姿を見せていたメフィスト一家の嫡子、フェスとその弟のセドを小学生(見かけ)と赤ん坊の時代に戻し、その姉のエネアに父親のメフィスト父、母親で魔界の大魔王アスモデウスの妹という名家の出のメフィスト母らメフィスト・ファミリーたちが、魔界から人間によって呼び出された魔力を持つ罪宝を取り戻すために大活躍する。

 その力は第一話、夢来鳥ねむ描くコミック版でまずのお披露目となる。笛裂という奇妙な名前のどこか飄々とした所のある教師が務めるその学校では、生徒会費が何者かによって盗まれ、生徒の財布も盗まれるという事件が起こっていた。実はこの笛裂こそが罪宝を追って地上にやって来た魔界捜査官(デモンズ・サーチャー)のメフィスト父で、学校で起こる盗難事件の影に魔界から召喚された罪宝が関係していると目をつけ、教師になりすまして学校に潜入していたのだった。

 やがて現れた罪宝に、対峙するのはメフィスト父とそのファミリー。分離の力を持つメフィスト父に風魔法のエネア、電撃魔法のフェスほかファミリーの活躍で見事罪宝は回収され、晴れて一家はそろって魔界へと戻って……いっては話も終わってしまう。実際は一家とそしてアスモデウスの家で長く執事を務めたセバスチャン、力持ちのメイドのマナらは地表に留まって、心の汚れた人間たちによって次々と呼び出される魔界の罪宝を取り戻す、地表常駐の魔界捜査官としてその力を振るうことになる。

 事故で半身不随となった兄を見捨てて遊び歩く義姉との心理的な葛藤に悩む少女をめぐるエピソードを描いた第2話に、トレーディングカードを我先に争い集める子供たちの心を操る罪宝を探そうとするエピソードを描いた第3話、ネットに潜む人間の悪意にさしもの魔界の住人たちですら翻弄されるエピソードの第4話までが収録された「アンダー・ヘブンズふぁみりぃ」。各人が持てる能力を最大限にふるって悪人たちを探し追いつめていく展開は、人間たちよりよほど人間らしい情愛にあふれた家族の絆が目にまぶしい。

 で。何が花子さん級のインパクトだったかといえば、それはフェスくんの半ズボン姿……ではなくセドを背負ってのシースルー&ボンデージ姿のメフィスト母……もなるほど捨てがたいけどそれはそれでそれとして、人間社会ではとりあえず中学生という設定のエネア姉の、ウエスト部分がぽっかりと抜けて上は襟と袖だけ、下は短いスカートだけという花子さんの服装を上下になおも縮めたような制服姿がとにかく激しいインパクトを与えてくれると断言しよう。

 匂い立つような色香は花子さんにちょい劣るものの、見かけの年齢に似合わず上着部分を下から押し上げている中身のサイズと弾力は花子さんを超えていそうで将来がとても楽しみ。人間界の夏と冬、東京の有明で開かれる喧噪と猥雑さに満ちた饗宴に若い身空で(見かけの上でだけど)ハマっているのは困ったものだけど、そうした前向きなキャラにシンパシーを感じた現実世界の美少女が、エネアと同じ格好で有明に立ってくれる可能性を想像すると頬も緩む。

 だから願わくは1巻で終わらず続々と続編を出してもらって、エネアのナイスなスタイルに全国の読者をどんどんとハメてやって頂きたいところ。あとがきによればアスモデウスに仕える精霊のアンとセバスチャンとの息子とか、アンナとアスモデウスという恐ろしさで鳴る2人の姉という聞くだに恐ろしい存在とかいった、曰く付きのキャラクターが控えているそうで、タダモノではない魔人たちが織りなすエピソードにも期待が募る。欲を言うならコミック版も是非。アニメ化は……期待しないで願ってます。


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