たれぱんだ
kyoumo yoku tareteimasu

【小学生の日記】 きょう、えきまえのデパートで「すあま」をかいました。ピンク色してかむとグチャグチャとしてて、きんじょのおねえさんは「牛皮みたいだね」って言ってたけれどぼく若いからぎゅうひって知らないんだけど、やっぱり食べるとグチャグチャしてるのかなあ。あっと「すあま」はお母さんがとっておいてくれたジャムのあきびんに入れて、縁側のしたにおいておきました。あしたはかかってるかな? たれぱんだ。「たれぱんだ」(小学館、1300円)って絵本だとくいにげすることもあるってかいてあってしんぱいだなあ。びんいっぱいにつまっててもちょっとヤだけど。

※       ※       ※


【惑星探査員の手記】 その星は重力が地球の500倍もあり、地表に降り立った探査員はパワードスーツの動力によるサポートがなければ、誰も歩くことさえ適わなかった。見渡すと辺りに茂った木々はすべて背が低く幹の太い、例えるなら20世紀のSF作家が小説に書いた「だばだば杉」のように、扁平で寸胴の形状をしていた。

 突如茂みから1匹の生物が現れ我々の前を横切った。といってもその歩みは重力の為か極めてノロく、我々はその生物の色つや形をじっくりと観察することができた。全身を覆う毛は白。目は赤く耳は長く後ろ足が大きく発達した地球でいう所の「うさぎ」と特徴は極めて酷似している。だが決定的に違っていたのは、その生物の体長30センチに対して幅も同じ30センチ、そして厚みが僅かに5センチしかなかったことだ。押しつぶされたように扁平のうさぎ。

 我々は確信した。今、地球のいたるところでたれている、あの白と黒の毛で覆われた平べったい生物のルーツがこの星であることに。四角い箱の中で育った西瓜が四角くなるように、高重力下で進化を遂げたが故に彼らは全身を扁平にして、歩みも平均時速2・75メートルと極端に遅くなったということに。そう、奴らはエイリアンだったのだ。可愛さで蔓延り、静かに地球を侵略しようとしているインベーダーだったのだ。気を付けろ同朋たちよ、見かけに騙されるな、決して(発見された手記はここで途切れていた。探査員は全身を押しつぶされて地球産の食べ物「煎餅」のようになった死体で発見された)

※       ※       ※


【たれぱんスポーツ】 中山競たれぱん場で開催された第23回日本たれぱんダービーはゼッケン3をつけた期待の競たれぱんが得意の側転移動により平均時速3・0メートルのスピードを出して1位でゴールインし、賞金の「すあま」1年分を獲得した。2位はゴールで出遅れながらも途中で潰れず寝もせずに平均時速を上回る2・95メートルで着実に距離を稼いだゼッケン2の競たれぱんが入着した。払い戻しすあまは単勝複式が3−2で9・5すあまとまずまずの配当。なおゴールインの模様は競馬競輪に比べて極めて進行の遅い競たれぱんの性格上、いつもどおりの赤外線探知による自動写真判定となった。

※       ※       ※


【『爆笑ストンプ』の新曲『むりじゃない』から】 「ふっきん、ふっきん、むりじゃないたれぱんだのふっきん。うでたて、うでたて、むりじゃないたれぱんだのうでたて。よことび、よことび、むりじゃなたれぱんだのよことび。はんぷくよことび、はんぷくよことび、むりじゃないたれぱんだのはんぷくよことび。できるもんだからやってるよ」

※       ※       ※


【小説『へーん身』より】 目覚めると自分が1匹の巨大なたれぱんだになっていることに気が付いた私は、そのままベッドから起きあがることもなく1日をずっとたれたままで過ごすことになった。やがて母親が連れてきた同じようにたれぱんだとなった娘と頬を付け合って互いに”すき”であることを確かめてからまるでドラ焼きのように重なりあって愛を確かめ合った。生まれた子供はまだ小さく腹に載せて”だっこ”をし、力をこめて上に飛ばして”たかいたかい”をしてやると喜んだ。その笑顔を見る度に、といっても笑っても怒っても同じ顔なので判別は私にしか出来なかったのだが、私はたれぱんだになって本当に良かったと強く思う。そんな私の安らかな生き方に触発されたのか、今では家族全員がたれぱんだとなり1日をたれて過ごしている。幸せとは、何だ。これが、幸せだ。

※       ※       ※


【TBS(たれぱんだ・ぶろーど・きゃすと)番組『きんにく番付』より】 本日もやってまいりました『きんにく番付』が誇ります最大の人気種目その名も「つみたれぱんだ」の時間です挑戦するのは千葉県から来たチームさあまず最初に寝そべったのはチームでも1番の頑健さを買われた彼だ次に柔軟性ではチーム1どんな狭い隙間でも簡単にすり抜けるたれ度では右に出る者のいない彼そして3匹4匹と積み上がるどうだ1番下がちょっと苦しそうだここでチームは作戦でしょうか1番下が重さで逃げようとするのを避けるためにどんどんと間を置かずに乗りはじめたぞ5匹6匹7匹おっとこれは国内最高記録だしかし千葉のチーム手を緩めないまだ載る更に乗るこれで9匹そして最後にチーム最年少の彼女がちょこんと乗った成功だ9・5匹の世界最高新記録たっせーい! あっ!!

※       ※       ※


【映画『たれぱんだ姫』】 「30年を経たたれぱんだは”だいだれぼっち”さまとなって昼間は平べったい山の形をしてなさるが夜になると動き出して森を見て回るんじゃ、1寸も動かんがの、をっほっほ」

※       ※       ※


【小学生のたれぱんだ観察日記】 ○月×日、きょうもたれてました。○月×日、きょうもたれてました。○月×日、きょうもたれてました。○月×日、きょうもたれてました。○月×日、きょうもたれてました。○月×日、きょうもたれてました。○月×日、きょうもよくたれてました。


積ん読パラダイスへ戻る