加藤美佳展 カナリヤ
展覧会名:加藤美佳展 カナリヤ
会場:小山登美夫ギャラリー
日時:2000年7月14日
入場料:無料



 小山登美夫ギャラリーで始まった加藤美佳さんて人のこれが本邦どころか作家にとっても初めてという個展をのぞく。75年生まれで愛知県立芸術大学を出て大学院に在学中のまだ学生の加藤さんの特徴は、最初に少女の人形を作ってそれを写真に撮影し、キャンバスに描き取っていく段取りを踏む点。なるほど大きなキャンバスに描かれたどアップの少女の顔は、一見リアルな可愛い美少女を写したようで、どこか漂うツクリモノノの違和感はなるほど人形の表情を持つ。

 けれども人形につきものの無表情で硬質なイメージが、キャンバスに描き写される時点で和らげられるるといった具合に、何重ものフィルターが間にはまっているせいか、描かれた少女には、本物の少女とも本物の人形とも違う微妙ななめまかしさが漂っていて、何とも言えない淫靡なイメージが漂い、見ているとグイグイと引き込まれていってしまう。もとより美少女好きという性格も大いに貢献してはいるが。

 人形を作ることで生まれる、頭の中にあるイメージと出来上がりとの間にあるノイズが写真に写し取られ平面化されることによって混ぜられ、それが再度キャンバスに描き取られることでもう1段階別のノイズが加わった結果、表情のザラっとした質感と、紙や睫の焦点があった強さのアンバランスさが生じて、リアルなんだけどリアルじゃない、人形でも人間でもない、生命であって同時に非生命でもあるという、非現実の少女を生み出している。

 それは、案内嬢のコスプレ写真をコンピューター上で背景なんかと合成するやなぎみわさんの非現実感とも違うし、男なのに女性の姿をしてなりきって写真に収まる森村泰昌さんの作品から出る非現実感とも違う。コスプレのポートレートからグロテスクな自作のフィギュアを撮影する方向へと転じてきたシンディ・シャーマンともやっぱり違って、他と比べようのないキュートでグロテスクな世界があるように思う。

 作った人形が欲しいとゆー人もいるようで、撮影した写真が欲しいという人もいるそうだけど、幾重ものフィルターを経てキャンバスに描かれた段階で作品となるんだから、途中の素材はやっぱり単なる素材としてお蔵にいれておくのが正解なんだろう、あるいは資料として保存しておくとか。けど案内のポストカードに写ってる少女の人形は描かれている顔だけじゃなくって「つるぺた」な胸もすべらかな腕もお腹もある立体物なんで、お蔵に入れておくのはやっぱり勿体ない気がする。展示だけでも見てみたいが、やってしまうとやはり作者の意図から外れてしまうから、気持ちだけの止めておこう。


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