ジョック・スタージス
>展覧会名:ジョック=スタージス写真展
会場:K'Sスタジオ パレード
日時:1994年11月13日
入場料:無料



 会場を探すのにちょっと苦労した。TBSの新しいビルが眼前にそびえる通りをビルに向かって歩いていった。案内にある番地をぐるりと一回りして、ようやくたどりついた会場の中に、スタージスの写真集にあった同じ写真が数十点、壁にかかっていた。

 女の裸である。少女の裸といってもよい。その趣味を持った人々が、無象に集まっているのではと、すこしばかり恐れをなしていたが、実際には割とまともな人たちが数人、カツカツと靴音をたてて、それほど広くはない会場を、ぐるぐると歩き回っていた。

 スタージスという人を、僕は「あの夏の最後の日」という写真集で初めて知った。最初はブルータスの特集だったと思う。裸の少女が毛布らしきものを肩に掛け、海岸にたってまっすぐこちらを見ている表紙の写真集が紹介されていた。もうすぐ日本語版が出るとも書いてあったので、期待して待っていたら、それから一年ばかりすぎて、ようやく日本語版が出た。その間に本屋には、英語版が並んでいた。

 今度の写真集も同じ、アメリカのどこかのヌーディストビーチで暮らす人々を、モノクロで撮ったものだったが、前作とはどこか、写真の雰囲気が違うような印象を受けた。黒が強いのである。「夏の日」が溢れ帰る陽光の下で撮ったものだとしたならば、今回の写真はどこか、暮れゆく夕日の下で撮影したような、陰影らしきものを感じだのだ。

 むろん裸で歩ける位だから、夏の日の一シーンに違いないのだが、陰影を感じざるを得なかったのは、海の彼方に浮かぶ雲のせいなのだろう。

 写っているのは女であり、撮ったのも女である。男が色眼鏡で見る写真ではもちろんない。ないのだが、会場に佇む男たちにはそんな作者の意図は通じない。割れ目であり金髪の陰毛であり、あるいは平らな、あるいは盛り上がった胸が目当てなのである。それらを提示されて、それらを感じるなと挑戦しているのだとしたら、何とストイックな作者なのだろうか。

 西日のような日差しの下で、笑わない女性達が写った写真。幸福が感じられないそれらの写真を後にして、僕は地下鉄で原宿へと向かった。


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