GALLERY
展覧会名:GALLERY−21世紀への都市芸術プロジェクト
会場:東京ビッグサイト
日時:1996年8月10日
入場料:無料円



 でっかい会場を縦横無尽に使ってでっかいアート作品を展示する試みっていうと、どうしても6年前の夏に幕張メッセで開かれた、「ファルマコン」を思い出してしまう。2つのホールをめいっぱい使った会場には、草間弥生さんとかジャン・ミッシェル=バスキアとかジェフ・クーンツとか、とにかくまあなんというか、現代を代表する現代作家たちの巨大な作品が、とりたてて飾り付けもないまま並べられ、なんだかガリバーの巨人の国の展覧会に来たような雰囲気を味わった。

 でまあ、東京ビッグサイトで始まった「GALLERY−21世紀の歳芸術プロジェクト」も似たようなのもだろうかと思って脚を向けてみた訳だが、同じ様に2つのフロアと使った会場は、幕張メッセよりはずいぶんと狭く、また出展しているアーティストも、大半は知らない人たちばかりだった。

 ただし、自分が知らないからといって無名アーティストとういわけでは決してなく、たとえば先だって出版されて話題になった「サラエボ旅行案内」を作成した集団「FAMA」が、同じように内戦下のサラエボで暮らしていた人達の生活ぶりを、アートとして昇華した作品を出展してたりと、それなりに有名・著名なアーティストが参加してるから、もしかしたら他の作品も、後に時代を代表するような作品として評価されたりして、その現場に立ち会っていたのだと、自慢できるようになるかもしれない。これだから現代作家の展覧会は面白い。

 最初のホールがいわゆるプロの集団による作品群の展示会場。先の「サラエボ」もここにある。入場して真っ先に目に付くのが、堆く積まれた藁のカタマリと、その横で柵につながれてひたすら藁を喰う2頭の羊。えっ、これがアートってなもんだが、アートなんだなこれが。

 「愚かな牧師のおかしくも悲しい冒険・・・」と題されたこの作品、柵の羊を中心にして、放射状に幾つかの作品というかオブジェを配置して、コラボレーションともコラージュともいえるような1つの作品を形成している。作者はヴァディム・ザハロフ。タジキスタンに生まれてドイツに住む彼が、自分のポジション、アイディンティーを問うために活動を続けるアーティスト、という説明にあるように、柵の羊を起点として、例えばエサをついばむひよこであったり、竹馬のようなオブジェであったり、ミニチュアハウスのなかにしつらえられたテレビジョンであったりと、さまざまな国、地域、文化などを混在させて、1つの世界観を形成しようとしている。

 地続きになった別のホールには、トレーラーによってはこばれた大勢の若手アーティストの作品群が、ところせましと並べられている。「オン・キャンプ/オフ・ベース」を銘打たれたこちらの展覧会は、駐車場をイメージした会場にトレーラーで乗り付けたアーティストたちが、めいめいに好き勝手なパフォーマンスを始めたような雰囲気にあふれている。

 ある作品は、誰かの部屋のなかを模したのだろうか、「魔窟」のような空間が現出されていて、おいおいこんなところに住んでいたら病気になっちゃうよ、おやパンツが干してあるから女性の部屋かな、ビールの缶がごろごろしていて気持ち悪い等など、勝手な想像をしながら住んでいる人の顔を想像してしまう。あるいは巨大なヒトガタのフーセンをトラックの荷台の上にふくらませていたり、売り子さんのようにハコを下げた女性が、「これでものを発明してください」を印刷されたカードの上に、木切れだとかマ・マー・パスタソースのラベルを貼り付けたものを配り歩いていたちろか、玉石混交和洋折衷支離滅裂な状況になっている。

 それにしてもアート作品はなんと過剰なものになってしまったのだろう。素材が過剰、表現が過剰、大きさも過剰、とにかく過剰。大きければいいのか。派手ならいいのか。目立てばいいのか。もっと違う、もっとこじんまりとした、それでいて人の心をうつようなアートがあってもいいのではないのか。ピンクに塗られたひよこ1匹でも、立派にアート作品になりえるというのに。

 とまれ会場は海上に遠く、行くにはよほどの覚悟がいる。それでも無料というのは嬉しいもので、暇つぶしと先物買のつもりで、足を運んでみるのも一興か。受け付けのお姉さんたちも美人だし。羊だって可愛いよ。
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