G9 ニューダイレクション2
展覧会名:G9 ニューダイレクション2
会場:スパイラルガーデン
日時:1999年7月3日
入場料:無料



 青山のスパイラルガーデンで開かれた「G9ニューダクレクション2」をのぞく。90年代になって出来た新しいギャラリーが9つ集まって合同で持ってる作家を出し合ってプロモーションをするっていう、過去にあんまり例を見ない試みの去年に続く第2回目。今回は3つのギャラリーが出品を行わずそれぞれにギャラリーで展示を行い参加っている形をとっていて、それもまたイベントに対するスタンスなんだろう。

 小山登美夫ギャラリーでは予告のあった落合多武さん制作の1枚だけTシャツが50種類かかってて、中にアニメっぽい描き書けの顔を描いたやつと、写真の美女をプリントしたやつがパッと目に飛び込んで来て、ほかの作品に迷いつつも第1印象に引っ張られて1枚6000円のところを2枚も買ってしまう。Tシャツと思えば高いけどアート作品と思えば破格のお値段、ただあんまり染料の質が良くないのか止めてないのか擦ると色が落ちてしまいそーなのがちょっと懸念。本当に来て洗うとすべてがパーになりそーなのは製品として問題だよ、って着てしまうのかアートを? だってそれがTシャツでしょ。うーん悩ましい。


 例えば「G9」なんてイベントを開いても、これをフェスティバルと認識してタダで絵を見る機会と思っている観客の圧倒的にいる反面、これをフェアと認識して新進気鋭のアーティストを買いに来るお客の圧倒的に少ない現実から、未だ評価の定まっていないアートを画廊で買う、とゆー行為に日本の社会が到達していない現状垣間見える。

 ギャラリストたちの冒頭の挨拶では、去年の釣果は決して多くはなかったとか。それでも続けるのは、後になって電話なりで問い合わせがありお客になってくらた人がいたという、そんな意義を感じたかららしい。100里の道も1歩から、でも先はまだまだ長いよね。小山さんたちた日本人アーティストが海外でどんどん売れているのに日本は、と言ったことに古手の谷中にある「バスハウス」の人が「それでいいの、日本で本当は売りたいんでしょ」と言ったのは、外しか見ない若手ギャラリストへの決して非難じゃなく、マーケット不在な日本に対するある種の嘆きなんだろう。

 銀座にあるギャラリー小柳の人が、「エルメスのバッグ買うんだったらアートを買って欲しいよねっ」的発言をしていて、値段ならよっぽどアートの方が安くかつ、将来値上がりだってありえることを現在取り扱っているオーストラリアのアボリジニを写した写真がすでに去年から1・8倍の値段に上っている事実を交えつつ、語ったあたりが単に”武士は食わねど”な良く言えば純粋、けれども実状は尊大なアート界に対する一般のイメージを、払拭していく必要をちょっぴり感じる。

 ならば「外国で人気」って日本人が1番弱い文句を持ち出して説得し納得させれば良いんだけど、難しいのはそーゆー外部の価値観それは有名人が好きって言った(コイズミがライ麦畑好きって言ったら売れたアレ、でも本当は読んでなかったらしい)のと同様に、純粋な作品への目とは違った価値観によって左右されかねないとゆージレンマを内包している点。それでもとにかく売れてそれから価値をと考えるか、じっくりやって価値を育てるかといったスタンスの葛藤を繰り返すことで、少なくとも前へと進むことだけは出来るから、意味のあることだと認識し、アーットって金か、アートって量かってな忸怩たる気分を抑え、納得し賛同も辞さない。

 それにしても「美術手帖」くらいしかギャラリーと現代美術の活動を紹介してくれるマスなメディアが少ないって嘆くくらいなら、ホームページの1つでもオープンして独自に情報発信すれば良いものを、これだけのネット時代にあって、9つのギャラリーのまだ3つしかホームページを開設していないってことに、未だマスをこそ信じて即効的な効果を実感じたい、半ば権威主義めいたものも感じてしまったりするんだが。ユーザーも変わるから、ギャラリーも変わろう。

 作品は池内美術レントゲンクンストラウムのフローリアン・クラークって人のオブジェが鉱物生命体ってゆーか四次元怪獣みたいな雰囲気があって好き。ってこれは特撮な人間の印象で見る人が見れば例えばレゴだとか、機械文明だとかいった別の判断も出来るからやっぱり目で見て思いましょう。あと佐谷画廊のボリス・ミハイロフは前と一転してカラーのロシアな人たちの写真が実にナマナマしくって怖い。ゲイな人やらでぶちんの夫婦やら、今のロシアの色匂い雰囲気が凝縮されてて見るだに世界を感じさせる。選んだ風景なり対象の濃さで勝ちってのもあるけれど、日本じゃあ荒木経惟が全部やっちゃったからなあ。

 ギャラリー小柳の例の去年の1・8倍はトレーシー・モファットのアボリジニ写真。ティジュリリューは吹いてないけど米国のインディアンにも似た文明の退廃に犯される伝統民族ってな雰囲気が滲んでもの悲しい。Tシャツじゃない落合多武の絵は一見可愛い少女たちの絵に奈良良美智の残酷な子供たちとはまた違う強靭な乙女の意志を見る。へらへらしてよーがきゃぴきゃぴしてよーが自分は絶対に譲らないってゆー。20万とか30万だけど買う価値あり。あたしゃTシャツで我慢だけど。


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