デュラララ!!X2

 池袋の街を夜ごと漆黒のバイクにまたがり走る首無しライダーの、失われた首をめぐって起こる争いの中で無関係に見えた人々が結ばれ立ち上がった「デュラララ!!」(電撃文庫)が、線で大勢の人々が繋がり合う話だったとしたならば、今度のは線が広がり面となって別の面と競り合ったり、重なり合ったりする話と言えるかも。

 成田良悟の”池袋サンシャインストリート”シリーズ、あるいは”首無しライダーが行く!”シリーズとも例えて例えられる「デュラララ!!」シリーズ第2弾、「デュラララ!!×2」(電撃文庫、630円)は、第1巻で存在が浮かび上がり繋がりも分かり、リーダーも明かとなった池袋にたむろする人々の集まり「ダラーズ」とは別に、まだ若い少年たちで組織された「黄巾賊」というチームが入り込んでは池袋の面々と角突き合わせ、さらにそれとは別にある種の怨念めいたものを抱えた一派も誕生しては「ダラーズ」と三つ巴の状況に突き進んでいく。

 発端は池袋界隈で起こった通り魔的な事件。人が刃物で切られる事件が続出し、あの首無しライダーのデュラハンことセルティもその首を落とされてしまうとという事態に。もっともそこは”首無しデュラハン”だけあって、落とされたのはヘルメットだけだったからご安心。世紀のヒロインが二目と見られない姿となってシリーズから退場する事態だけは避けられた。

 そして物語は自らも被害者となった通り魔事件の解決にセルティと、そして怒らせたら冷蔵庫だって持ち上げ車のドアだって引き剥がしては放り投げる危険な男、平和島静雄という異色のコンビがここに実現。さらに第1巻で外野的なポジションを保ちつつも、その実中心的な役割を果たした男も乗り出して着て、怨念の連鎖が生み出した通り魔事件へと挑む。

 ようやく探し出した事件の真相は、「罪歌」と呼ばれる刃物の怨念によって操られた人々が起こしていたというもので、その中心に好きだった教師から疎まれた少女の存在が浮かび上がってくる。退けられた愛に苦しみもだえる少女の怨念が紡ぎだした悪夢。そう思われた次の瞬間、愛を求めて止まない凍えた心の持ち主が現れすべての怨念を御して屹立する。

 かくして現出した三つ巴的な状況が、それぞれの中心にいる人物の意外とも、あるいは必然とも言える正体と相まって、これからいったいどういう状況へと向かっていくかに興味がそそられる。すべての状況を把握し、事態を裏で操る男の目論見が一体何なのかも気になる所だが、そこは騒動好きな奴のこと。きっといろいろあった方が楽しいからという単純な理由だったりするかもしれない。

 第1巻では脇で小さな存在感を見せていただけの人々が、重要な役割を担って登場しては事態を先へと、そして高みへと向かわせる。そこにこれまでの主役たちと、未だ活躍の見えない脇役たちが主役となって重なって来た暁に、池袋の街にどれほどの喧噪と喜悦の咆吼が上がるのかが今は楽しみで仕方がない。愛を求めて止まない者共に愛のもたらされんことをただ祈る。

 かつてないヒロイン、”首無しデュラハン”のセルティは今回もそのナイスなバディをイラストによって露出してくれていて目に滋養。隠されている顔の美しいことは既に判明しているものの、それがなくても、というよりないが故にどこかはにかんだ所のある言動に仕草の可愛らしさと、描かれるボディの美しさによって彼女を見栄えに留まらない真のヒロインたらしめている。

 彼女の黒いバイクの後ろにまたがり、腰に手を回して池袋を走った平和島静雄への羨ましさも募るけど、そんな事を言ったら怒りに我を忘れた静雄に天空の彼方へと放り投げられると間違いないからここは目して語らないのが吉。リミッターの外れたその強さ、いつか「バッカーノ!」シリーズの最強男、”ヴィーノ”こと”レイルトレーサー”ことクレア・スタンフィールドと戦わせてみたいものだが果たして勝つのはどっち?


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