バウハウス
展覧会名:バウハウス1919ー1933
会場:セゾン美術館
日時:1995年5月4日
入場料:1300円



 「バウハウス」−聞き慣れない人には奇異な、どこか失笑を誘うようなこの響きの単語を、僕は最初、岩波新書の「日本の近代建築」の中で眼にした。藤森照信氏の著書で、題名のとおり日本の明治以降の建築をざっとおさらいした名著だが、なかにバウハウスというドイツの建築様式があって、その影響を受けた作品が日本にも数点あるとのことだった。土浦亀城氏の自宅がその代表的な作品として取り上げられていて、別に一枚の写真が図版として取り上げられていた。それが山脇巌の「バウハウスの衝撃」だったと後になって知った。

 デッサウ時代がバウハウスの全盛であったと、僕は今回並べられた作品群を見て意を確かにした。何故ならばまず、校舎が実にバウハウスしている。こういう書き方が、筆者の語彙のなさを露呈するものだとしても、ほかに書きようのないくらい、直線的な建物に豊富なガラスという外観が、ドイツ様式主義の権化のような印象を見るものに与えずにはおられない。山脇の写真につかわれていたBAUHAUSの文字が縦に並んだ建物が、この校舎であったのだ。

 今に残るバウハウスというと、やはりインテリアデザインであろう。会場にはミース・ファン・デル・ローエのデザインした椅子「バルセロナチェア」が置かれていたが、これなどコルビジェの椅子にもまして今に至るまで真似されレプリカが作られるほど、人気の高い椅子だろう。

 絵画はカンディンスキーやクレーといった、抽象画ばかりで趣味が狭い。バウハウスがの狙いが様式美、すなわちすべてを簡潔にデフォルメしたものこそが美であるという発想の元では、ノイズの多い具象画など受け入れるはずもなければ育つはずもない。

 SONYのビデオテープのコマーシャルに使われていたバレーが、バウハウス時代にオスカー・シュレンマーによって発表されたものとは知らなかった。ケンプともバウシュとも違うダンスは、直線と円とに支配された動きの中で、円と直線によって形作られた衣装のダンサーが登場する、実にバウハウスした(また使ってしまった)ダンスだった。CMは3本作られたようで、CM自体にいっさいバウハウスについての説明がなかったことから、今になるまで気が付かなかった。


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