噂の真相


いつもいっしょにマウンテンに行っている同胞から来たメールに書かれていた
その一言に慄然とした。


「マウンテンの看板がなくなったらしい」


バカな! いりなか駅から歩いて向かい、角を曲がった瞬間に目に飛び込む
あの荘厳な山の姿に人々は畏怖の念を抱いて身を引き締める
マウンテンの象徴とも言うべき大看板。6月に行ったときには確かにあったはずだ。


そんなことあってはならぬことだ。それは何としてもこの目で確かめなければならない。
盆休みで帰郷した同朋と現地で落ち合うことにし、暗い夜道をマウンテンへと向かった。


ドキドキしながら角を曲がると...







ああっ!ホンマや!


そこにあるのは古ぼけた枠と輝くボンタイン珈琲のみ。
あまりのショックに写真もピンボケだ。

この喪失感を何と表現しよう。世界変わろうと時代が変わろうとその角を曲がれば
それはいつまでも変わらぬ姿を見せてくれるはずだった。
我々はかけがえのない故郷を失ったのだ。

帰り際、店員に看板がなくなった理由を聞いた。


「台風でふっとびました」



何と!
苦節ン十年(?)の風雪を耐え忍んだあの看板もさすがに耐え切れなくなったか...
しかしあの山が宙を舞う姿はそれは美しいものであっただろう。見たかった。


打ちひしがれる我々を絶望の縁から救い出したのは店員の次の一言だった。


「今新しい看板作ってます」


おおっ!



山を愛する人々よ。希望を失うな。
今は寂しくともすぐにまたそれは新たな輝きと共に我々の前に姿を現すだろう。

その瞬間を心待ちにしてこれからも角を曲がり続けよう。