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        18世紀のデンマーク、荒涼たる王領地が舞台。 
        国王の指示により何度も開墾が挑まれましたが、いずれも失敗。 
        そんな不毛の地を開墾して見せると名乗りでたのが、貧しい退役軍人であるルドヴィ・ケーレン大尉。 
        自費で開墾するが、開墾が成った暁には爵位と領地が欲しい、というのがその見返り条件。 
        財務省の許可を得てたった一人開墾に挑むケーレンでしたが、その前に立ち塞がったのが、近在の領主であるフレデリック・シンケル。 
        そのシンケルが極めて狂人的かつ凶暴な人物で、その荒涼地はシンケル家のものだと認めろと、あらゆる妨害を重ねて来る。法に叛くこと、凶行手段も辞さずといった具合でその執念はいったい何処から生じたのか。 
        一方、ケーレンの元には、シンケルの元から逃げ出してきた使用人女性のアン・バーバラ、家族に売られたというタタール人の少女アンマイ・ムスが身を寄せて来る。 
        いつしか疑似家族のような関係になり、開墾作業も進展していくのですが、再びシンケルの悪辣な妨害がケーレンの身辺を根底から破壊していく・・・。 
        「愛を耕すひと」という邦題、適切とは思えません。 
        そもそもケーレンが荒涼地の開墾に挑み貴族の身分を得ようとしたのは、貴族が使用人女性を犯して生まれたという出自の彼が、愛を知らず、身寄りのない孤独な人間だったからの筈。 
        愛を知らないケーレンが愛を育むことができる筈もなく、彼が愛を知ったのはずっと後のことです。 
        ただ、愛は本ストーリーの結果であって、殆どはシンケルとの対立に終始した、という印象が強い。 
        最後、開墾を実現した彼が選んだのは、受け容れたのは何だったのか。 
        そこは、忘れ難いところです。 
        ケーレン、アン・バーバラ、シンケルの婚約者である貴族の令嬢エレル、彼らの運命に負けず生きようとする姿に、観応えがありました。 
        2025.02.17 
         
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