“僕はラジオ” ★★
RADIO
2003年アメリカ映画)

監督:マイク・トーリン
脚本:マイク・リッチ

出演:キューバ・グッディング・Jr、エド・ハリス、デブラ・ウィンガー、サラ・ドリュー、アルフレ・ウッダード

 

実話をもとに制作された感動的なストーリィ。
舞台はサウウスカロライナ州アンダーソン。ハナ高校のアメフトチームは、ジョーンズ・コーチのもと猛練習に明け暮れていた。
そのグラウンドを周囲をいつもうろついている、知的障害のある黒人青年。そんな彼を、選手たちが些細なことから縛り上げて閉じ込めるという事件が発生します。そのことがきっかけで青年と知り合いになったジョーンズは、彼に練習の手伝いをしてくれないかと誘う。
彼はラジオを聴くのが大好きだったことから、“ラジオ”という名で呼ばれることになります。
その時から、ラジオを助けて普通の人たちの仲間入りをさせようとするジョーンズと、次第に人との関わり合いを広げていく知的障害者であるラジオとの、長いドラマが始まります。

知的障害児というとつい健常者と違う人たちとして区別してしまいがちですが、本作品はそんな誤りを正してくれる実際例と言えます。
知的障害があったりする人たちは、むしろ心の優しい人たちが多いのです。彼等たちが幸せに生きていけるかどうかは、健常者である我々の側が彼らをちゃんと受け入れようとするかどうかにかかっている、と言えるのではないでしょうか。
現に、ジョーンズが関わっていく前のラジオはただ荷物を入れたカートを押してうろつき回るだけのあぶれ者で、ろくに人と話をすることもできない青年でした。しかし、ジョーンズがフットボールチームに誘い込んで以来、彼は積極的にチームに関わり、熱心に応援するようになります。表情も生き生きと楽しそうになり、周囲の人々に気後れすることなく普通におしゃべりするようになります。
しかし、決して知的障害者であるラジオを庇護しようというドラマではありません。本作品の中に登場する2つの素晴らしい言葉が、それに答えていると言えるでしょう。
・「人のために何かをするのは間違いなんかじゃない」
・「我々こそが、ラジオから教わっている(人の優しさ?)」

実際のラジオは、今もなおハナ高校で名物コーチとして活躍中だそうです。そして、コーチのハロルド・ジョーンズとは永い友情で結ばれているとか。フィクションではなく、実際にあったことであり、今もなお進行中である出来事、という点が素晴らしい。
どちらかというと目立つところのない、質朴な作品ですが、味わい深い作品と言えます。ジョーンズ・コーチとラジオの関係、ジョーンズと妻、そして娘との家族関係、ジョーンズと黒人女性のダニエルス校長との関係、そのどれも極めて質の高い仕上がりになっています。
ラジオ役のキューバ・グッディング・Jr、ジョーンズ役のエド・ハリス、妻リンダ役のデブラ・ウィンガー、娘メアリ役のサラ・ドリュー、校長役のアルフレ・ウッダード、彼らの誰もが良い演技をしています。
派手でなく、あっさりとした中に味わい深さがある、まさに私好みの作品です。

 2005.03.19

      


  

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