ディケンズの初期作品「オリバー・ツイスト」の映画化作品。
昔からミュージカルによくなったりと、映画や芝居という面ではディケンズではよく知られた作品です。
孤児オリバーの波乱万丈のストーリィという点が一般的に受けられやすいからでしょう。
しかし、ディケンズ作品の中ではそれ程面白い作品ではありません。主人公オリバーにあまり主体的な行動が見られないからです。それは本映画化でも変わりません。
その代わりによく描かれているといえるのが、当時の英国社会のひずみ。
孤児を多く生み出す一方で、機械的に孤児を救貧院に放り込んで事足れりとしている。オリバーは、そんな孤児の中の一人に過ぎません。
近代化の中でそうした問題点を色濃く生み出していた19世紀ロンドンの様を見るのが、本映画の見所でしょう。
演技面では、フェイギンを演じるベン・キングスレーがお見事。
なお、原作と対比するとオリバーの物語としての肝心な部分がすべてカットされています。つまり、オリバーの身元と、それ故の変転だったという経緯の理由。したがって、本作品のハッピーエンドだろうと思われる結末には、釈然としない印象がつきまといます。
2006.08.06
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