“理想の恋人.com” ★★☆
MUST LOVE DOGS
(2005年アメリカ映画)

監督:ゲイリー・デヴィッド・ゴールドバーグ
原作:クレア・クック
脚本:ゲイリー・デヴィッド・ゴールドバーグ
出演:ダイアン・レイン、ジョン・キューザック、エリザベス・パーキンス、クリストファー・プラマー

 

離婚のショックからなかなか立ち直れない主人公をダイアン・レインが演じている。何やら始まりは「トスカーナの休日」そっくりです。
でもそこからが違う。立ち直るためイタリアを旅して「家」、そして最後に「家族」を手に入れたその主人公と違って、こちらはあくまで新しい男性一本槍。
ただし、主人公が自ら望んでというより、大家族の兄弟・姉妹たちが彼女を立ち直らせようとあれこれお節介を焼くところから始まります。

ユー・ガット・メール」ではパソコン通信のメール交換でしたけれど、時代は進み本作ではインターネットの出会い系サイトによる出会いが主戦場。
利用したことがない人間(ホントですよ)としては、おいおい、そんなに一般的なのかと思うのですが、日本とアメリカの社会事情の違いもあるのかもしれません。
何はともあれ、出会い系サイトで知り合った中年男女、保育園教師のサラと手作りボート作りのジェイクの新たな恋が、つつましく、ユーモラスに、本音ベースで描かれるロマンチック・コメディ。

実はこのストーリィ、2人の恋愛模様よりその周辺ごとの些細な部分が実に面白い。
姉妹・兄弟たちがサラのために尽くそうとする根底には、性的欲望の解消という視点が強いようだ。したがって、やたら紹介してくる相手は、離婚したばかりとか、別居中とかというのが多い。あげくに姉とキャロルと妹のクリスティンは、勝手にサラのプロフィールを出会い系サイトに登録してしまう。犬好きの男性求む、グラマーな美人としたうえ、大学卒業時の写真を掲載して。
それに対し、亡くなった唯一人の妻を今も愛し続けている父親は、運命的な男性といつかきっと会えるとサラを励まします。
肉体と精神、打算と理想という両極端ですが、どちらかが正しいというのではなく、実際のところ両方の面があるというのは否めず、それをダイアン・レインが体現して演じるところになります。
精神と理想という点は、ラブ・ストーリィでは散々描き続けられてきたことですから陳腐な面もあり、むしろ肉体と打算の部分が可笑しい。
サラとジェイクが2度目のデートで想定外の成り行きから2人で深夜の町中を車で走り回る展開は、まだ会って間もないというのに何なんだこの展開は?!と、呆気にとられてしまう程愉快。でも私は好きですねぇ、こうした場面。
その一方、サラと生徒の父親ボブとのデートは、その直後にサラが怒りを爆発させるところをみると、男と女が通じ合うことの難しさがつくづく感じられ、サラの父親の言の重さを感じます。
そしてまた、サラとジェイクの関係だけでなく、年老いた父親と複数のオールド・ガールフレンドたちのと関係、姉妹・兄弟たちの各々の夫婦関係も、注意してみればこの辺りもかなり味わい深いことに気付きます。父親の女性関係を眺める3人の娘達の思いを想像してみるのも楽しく、描かれる対象の幅広さもこの作品の好いところです。

主役演じるダイアン・レインに関しては、失礼ながら、相変わらず美人だなぁと思う場面と、もう若くないんだよなぁと感じる場面の両方あり。若くて美人過ぎないところが、主人公サラに適役と思う次第。
なお、原題の
「Must Love Dogs」は、出会い系サイトの登録に使われた「犬好きな人」の意味で、出会い系サイトではよく使われる文言らしい。

2006.07.02

  


   

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