“グラン・トリノ” ★★☆
Gran Torino
(2008年アメリカ映画)

監督:クリント・イーストウッド
原案:デヴィッド・ジョハンソン
原案・脚本:ニック・シェンク

出演:
クリント・イーストウッド
、ビー・ヴァン、アーニー・ハー、クリストファー・カリー

 

ミリオンダラー・ベイビー」以来久々にクリント・イーストウッドが監督と主演を勤めた作品。

妻に先立たれた頑固で偏屈な老人ウォルト・コワルスキーが主人公。
息子や孫達とも疎遠で、近所にはアジア系の住民がどんどん増えて、街並みが荒れてきたことも気に喰わない。愛するのはビールと、やはり年老いた飼い犬、そして愛車。
そんなウォルトの隣に引っ越してきたのがモン族の一家。
息子のタオがモン族のチンピラ一味に引きずり込まれそうになって一家がもみ合っているところ、また娘のスーが黒人たちに取り囲まれたところを助けたことから感謝され、否応なく一家との交流が始まり、スーとタオとは友情も芽生える。
相変わらずタオを仲間に引き込もうとするチンピラ達をウォルトは阻止しようとある行動を取るのですが、それは更なる災難を引き起こしてしまう。さて、ウォルトはどう行動するのか、というストーリィ。

東洋人に偏見を持ち、汚い言葉を吐くウォルトですが、東洋人の評価すべきところはきちんと評価しているという風ですし、その相手にきちんと向かい合う姿勢を持っているところはなかなか味のある人物です。
そのウォルトが、彼に感謝するモン族の隣人たちから植木鉢や食べ物を次々と持ち込まれて困惑するところ、つい美味しそうな食べ物に誘われてしまうところはユーモラス。隣人たちと新たな交流が芽生えたことを示す場面は、心温まるものがあります。
そして何より、スーとタオという姉弟との友情を深まっていく様子が見ていて楽しい。
ウォルトとの出会いによって、内気だったタオがしっかりとした意思をもった青年へと成長していく、という2人の友情関係が本ストーリィの主対象なのでしょうが、私としてはむしろ姉スーの方に惹かれます。スー役のアーニー・ハー、好演です。

このウォルト、かつてのヒットシリーズ「ダーティ・ハリー」の、ハリーが年取ったらいかにもこんな感じになるだろうなぁ、というところがかつてのファンとしては嬉しい。
ウォルトの行動も、まさしく年老いたハリーが取りそうなものです。

改めて思うと、クリント・イーストウッド監督作品の良さは、無駄な脚色、無駄な音楽が一切ない、というところにあるように思います。
その所為か、本映画は他の映画作品に比べてとても静か、その分ストーリィにしっかり集中できる、という感じを受けます。
もっとも、ストーリィそのものにはいささか無茶がある、と感じますが。

※表題の「グラン・トリノ」は、元フォードの自動車工だったウォルトが大事に所有している72年製フォードの名車の名前。
※スーやタオらの“モン族”とは、作品中でスーが語るには、タイやビルマに跨る地域に居住する山岳民族で、ベトナム戦争で反共産の立場をとったために戦後アメリカに多く移民することとなった民族なのだそうです。
現在モン族を自称する人々は、80万人くらいいるらしい。

2009.05.02

       


  

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