“アメリカン・スナイパー” ★★★
American Sniper
(2014年アメリカ映画)

監督:クリント・イーストウッド
製作:クリント・イーストウッド、R・ロレンツ等
原作:クリス・カイル「ネイビー・シールズ 最強の狙撃手」
脚本:
ジェイソン・ホール
出演:ブラッドリー・クーパー、シエナ・ミラー、ルーク・グライムス、ジェイク・マクドーマン

 

現代の戦争映画という点で余り気は進まなかったのですが、観終わった後に観て良かったと思うことの多いクリント・イーストウッド監督作品なので観に行った次第。
・・・凄い映画でした。観に行ってやはり正解でした。

米海軍のエリート部隊“ネイビー・シールズ”の兵士としてイラク戦線で活躍した伝説の狙撃手クリス・カイルの回顧録を基にした戦争映画。
著者、そして主人公であるクリス・カイルは2003年のイラク戦争開始後4度にわたってイラクに派遣され、狙撃手という任務の中で 160人以上もの敵を射殺したという。

イーストウッド監督の特徴は、余計な脚色を極力除いたところにありますが、本作品では改めてその凄さを感じます。
映画作品であるのにまるで実際の戦闘場面映像を見ているような感覚です。でもそう認識したのは後になってから。主人公が戦場に赴いてからは目がスクリーンに釘づけ、一瞬も目をそらせないまま最後まで、という状況でした。

戦争あるいは戦闘の全体像は見えないまま、現地ではただ殺すか殺されるかだけの状況が延々と続きます。そんな過酷な場所へ何故主人公は4度も向かったのかというと、アメリカを守るため、仲間の兵士たちを救うため、というのがその理由として何度も口にされます。
しかし、敵味方双方、状況の悲惨さ・過酷さを何度も見せられる度に、何でこんな状況がもたらされるに至ったのかと思うばかりです。
自身の人生や家族状況にも、そして現地の民間人家族まで巻き込んでその影響、傷痕は広がっていきます。
本作品において、制作側があえてそれを積極的に語ろうとはしません、それらを感じ取るのはあくまで観客側に任されている、と感じます。

ようやく家族の元に帰った主人公なのに、あぁ何で・・・と思わざる得ません。
最後のエンドロール、これまた類稀なもの。イーストウッド監督らしさが最後まで貫かれた作品でしょう。
決して楽しい映画でも、ヒーロー映画でもありませんが、ひとつの傑作映画と言って良いと思います。

2015.02.22

       


  

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