“宗方姉妹(むなかたしまい)★☆
(1950年日本映画)

監督:小津安二郎
原作:大佛次郎
脚本:野田高梧
出演:田中絹代、高峰秀子、笠智衆、山村聡、上原謙、藤原釜足、高杉早苗

上映時間:112分

      

流石に古いなぁ、と思う。大佛次郎の原作自体が古めかしいのでしょう。
さてストーリィ。
田中絹代が演じる宗方姉妹の姉=節子は、職を失った夫を助けるためバーを営んでいる。山村聡演じるその夫=三村はニヒリストで、陰気でかなり気持ち悪い印象。後年の山村聡からは想像できないような役柄である。
高峰秀子演じる宗方姉妹の妹=満里子は、姉夫婦の家に同居しているが、姉とは対照的な現代っ子的な性格。
その3人に、節子の元恋人であり今も互いに心底では想い合っている田代宏(上原謙)が絡んでストーリィは展開していきます。

夫に仕えることが女の役割と信じ、夫の眼にどう評価されるかが自分の価値、とあたかも信じているような女性が節子。
一方の満里子は、その場の感情のままに、思い切った行動も言動もするといった現代っ子。しかしその底には姉の為に動こうとする姉妹愛が感じられます。
対照的な姉妹の姿を通して家庭の崩壊を描いた作品、ということのようです。
姉妹のどちらが(当時としても)正しいか言うようなストーリィではなく、おそらく答えはない、と言うべきストーリィなのでしょう。
ただ現代の感覚、人間観からすると、節子にしろ、夫の三村、元恋人の田代にしろ、かなり不自然、嫌味、ヘン!と感じます。

それに対し(今から見て)生き生きと演じているのは、高峰秀子。
満里子が田代相手に弁士の口ぶりを真似るところが度々登場しますが、結構楽しい。ぶりっ子的や駄々っ子的な物言いの他、蓮っ葉な女のような物言い・表情まで見せる等々、観応えある限りです。
なお、笠智衆は姉妹の父親役で、京都に住んでいるらしい。癌で余命いくばくもなく一人暮らしという設定ですが、姉妹各々の問い掛けに対し、よく考えたうえで自分が思ったとおりに生きれば良いと理解ある父親の風ですが、ちょっとなぁという印象あり。

本作品で私が注目したのは、最初と最後に奈良の薬師寺が舞台として登場するところ。三重の塔が東塔しかない薬師寺ですが、白黒画面の所為か、カメラのアングルの所為か、東塔がとても大きく写っています。今となれば懐かしい映像。

2012.03.03

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