地味そうな作品だったので観に行こうかどうか迷ったのですが、吉村昭原作小説(残念ながら未読)の映画化だから一応、と観に行った次第。観に行って正解でした。
江戸時代末期、疱瘡(天然痘)が流行ると医者はもう、治療の手立ては何もなかった。
越前福井藩の町医者で漢方医の笠原良策は、疱瘡患者のために何もできないことについて、無力感に苛まれていた。
そんな良策に目を開かせてくれたのは、偶然出会った蘭方医の大武了玄から言われた、蘭方医学であれば何か手立てがあるかもしれない、また漢方医学とか蘭方医学とか区別する必要はない、という言葉。
やがて京の都に出て蘭方医である日野鼎哉の元で修業することになった良策は、西欧諸国や唐では牛痘を使った<種痘>という方法により疱瘡の発生を予防している、と日野に教えられます。しかし、難題が・・・・。
疱瘡から人々を救うため、種痘導入に奮闘した無名の町医者を描くストーリー。
極めて地道であり、かつ実直な作品。
面白さやドラマチックなことなどなく、事実に基づいて描いていくという処は、やはり原作である吉村昭作品らしい処です。
利を求めず、名を求めず、ひたすら人々のために奮闘する姿、それを貫いた行動は静かな感動に満ちています。
※なお、良策の大きな支援となったのは、幕末期の英邁な藩主として有名な福井藩主=松平春嶽。
頭の固い保守層の反対を押し切って新しいことをやり遂げるためには、やはり下からだけではなく、上からの動きも欠かせないということを感じさせられました。
2025.01.27
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