原作は未読ですが、映画として良い作品でした。
近未来の日本が舞台。
物心ついたときから母親の秋子(田中裕子)と二人だけの家族だった石川朔也(池松壮亮)が主人公。
母親から大事な話があるんだけどと連絡を受けた朔也でしたが、その晩友人と飲む約束があった朔也は、今度でいい?と先延ばししてしまう。
しかし、その豪雨の晩に母親は、増水した川に落ちて亡くなってしまう。
その現場に居合わせた朔也は自らも川に飛び込みますが、病院で意識を取り戻したのはその一年後。
そして、母親が既に制度化されていた<自由死>の許可を得ていたことが知らされ、警察等では事故ではなく、自死として処理してしまう。
本当に母親は自ら死を選んだのか、そして母親が言っていた「大事な話」とは何だったのか。
それを知ろうと朔也は、遺された母親のデータからヴァーチャル・フィギュア(VF)の開発者である野崎(妻夫木聡)に母親のVF制作を依頼する。
その際、自分の知らないデータを得るため、母親と仲が良かったという同年代の女性=三好彩花(三吉彩花)にデータ提供を依頼するのですが、たまたま彼女が避難所暮らしをしていると聞き、母親の部屋を住まいとして提供します。
そこから、朔也と三好、そしてVFである母親との奇妙な同居生活が始まるのですが、果たして朔也は答えを得ることはできるのか。
本作においては、朔也と母親の関係、朔也と三好の関係、また朔也とその友人である岸谷(水上恒司)との関係に、それぞれに微妙な色合いがあり、観応えがあります。
特に、訳有って男性の身体と触れ合うことができないという三好と朔也との関係は、スリリングでもあり興味尽きません。
中盤、朔也と三好が触れ合わないままダンスを一緒に踊るシーン、原作にはないとのことですが、身体は触れ合えずとも、心はお互いに寄り添うことができることを象徴しているようで、素晴らしい。
人の本心とは、どのような手段をとっても結局、本人以外が知ることなどできないのだと思います。
でも、本心が分からなくても、相手に自分の気持ちを伝えようとし、その気持ちを受け止めようとする気持ちがお互いにあることが大切であり、それで充分なのだろうと思います。
池松壮亮、三吉彩花の好演が見事。お薦めしたい作品です。
2024.11.12
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