藤沢周平「たそがれ清兵衛」、「祝い人助八」、「竹光始末」の3短篇をもとにした時代物映画作品。
真田広之演じる主人公・井口清兵衛の名前は「たそがれ清兵衛」から、軸になるストーリィは「祝い人助八」から、という構成です。
ただ、原作のすっきりした短篇からすると、上映時間に必要な長いストーリィにするためとはいえ、余計な脚色をし過ぎ、と藤沢ファンとしては感じます。
助八と同じ寡ではあるものの、清兵衛に幼い娘2人がいること、時代を幕末に設定し、清兵衛もまたその激動にさらされた、とした点。
本来、藤沢周平さんの原作は、時代小説という設定こそあるものの、ごく普通人の実直な夫婦愛だったり、女房の煩わしさだったりと、現代にも通じる庶民の情感+ヒューモアといった明快なストーリィ。
それに対して映画化作品は、貧しいながらも愛情ある家族風景、貧乏侍の悲哀さという、如何にも現代受けしそうなストーリィに置き換えられてしまった点が、不満といえば不満です。
とは言いながら、出戻りの幼馴染・ともえと、清兵衛の間の愛情が徐々に具体化していく部分については、原作の良さを損なわずにいて、本映画の一番魅力あるところです。
映画をみながら、原作を思い浮かべつつ、対比せずにはいられませんでした。
なお、最後のエピローグ部分は余計。何の為に必要だったのでしょうか。
※日本アカデミー賞最優秀賞他
2003.08.08
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