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        2019年に原作を読んだ後、2021年11月の映画公開を楽しみにしていたのですが、新型コロナ感染の影響で公開延期、1年近く経ってようやく観ることができました。 
        刑務所を出所した山田、北陸の小さな町の塩辛工場で働き始めるのに伴い、社長の紹介で川べりに建つ安アパート“ハイツムコリッタ”で暮らし始めます。 
        その山田にとって何より幸せなことは、美味しいご飯が食べられること。 
         
        ところが、隣人の島田、風呂を貸してほしいと無理やり山田の部屋に上がり込むばかりか、毎日山田の炊いたご飯を当たり前のように食すようになり、静かにひっそりと暮らすつもりだった山田の日々は最初からかき乱されます。 
         
        とくにどうこういうことが起きる訳ではなく、地味な日々が毎日繰り返されていく、そんなストーリィ。 
        たとえささやかであっても、そうした日々を積み重ねていく大切さといったものが、しみじみと伝わってきます。 
        そして同時に、一人で生きていくのは寂しいこと、たった2、3人、場合によってはそれが幽霊であっても、誰かと一緒にいられることの幸せを感じます。 
         
        好きだなぁ、この空気、この雰囲気が。 
        昔、人の幸せとは、毎日きちんとご飯が食べられることではなかったか、と今更にして思い出します。 
         
        島田を演じるムロツヨシの面白さが抜群であるのは別として、未亡人の大家=南詩織を演じる満島ひかり、父子で墓石の訪問販売をしている溝口を演じる吉岡秀隆という面々も、ささやかに面白い。 
        とくに、吉岡演じる溝口があるシチュエーションで洩らす「参ったなぁ」という言葉がとても愉快。 
         
        期待どおりだったことに、満足です。 
         
         
        2022.09.18 
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