“でっちあげ〜殺人教師と呼ばれた男〜 ★★☆
(2025年日本映画)

監督:三池崇史
原作:福田ますみ
脚本:森ハヤシ
出演:綾野剛、柴咲コウ、亀梨和也、木村文乃、安藤玉恵、小林薫、美村里江、小澤征悦、光石研、北村一輝

 

福岡で現実に起きた、生徒の親による小学校教師に対するでっちあげ誹謗事件を取り上げた、福田ますみさんのルポタージュ「でっちあげ」の映画化。

本当に怖い。
一方的に嘘を言い立てられて非難され、マスコミがそれに乗っかってしまったら、どんなに真実を訴えても誰にも取り上げられない。いつ何時誰に降りかかってくるか分からないと思ったら、震え上がるような気がします。

原作は既読なので新たに驚くということはありませんが、その経緯を映像で目にすると、改めて怖くなります。
なお、誰が一番悪いのか?
もちろん嘘をでっち上げて訴訟まで持ち込むという生徒の母親(柴咲コウ)に問題があるのは当然ですが、その行動は余りに異常で、常識の枠外。
それより問題なのは、被害者となった教師(綾野剛)の言い分、事実の是非を聞こうともせず、事なかれ主義で一方的に謝罪を強いた校長(光石研)等にあると言えますし、事実確認をすることもなしに正義漢ぶって被害者教師を攻撃したマスコミ、雑誌記者(亀梨和也)にある、と言えます。

そうした絶体絶命の窮地に追い込まれた教師=薮下誠一の前に、冷静に事実を見ようとする弁護士=湯上谷年雄(小林薫)が現れてくれたから薮下は救われましたが、もし彼のような弁護士が応援してくれなかったらと思うと、見ているだけでも気が狂いそうになる気がします。

なお、問題となった生徒の母親=氷室律子を演じた柴咲コウさんの無表情ぶり、これが本当に怖い。他の生徒の母親が彼女を恐がるのも当然というもの。これも柴咲コウさんの演技力があってのことなのでしょうけれど、お見事。

丸く収めるためにはとにかく謝ってしまえばいい、という考え方は、今の時代には通じませんし、子どもたちに対しても悪い見本でしょう。

いずれにせよ、最後はもう一つすっきりしない結末ですが、現実がそうであったことに驚くばかりです。

2025.06.30


※原作 → 「でっちあげ−福岡「殺人教師」事件の真相−    

               


  

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