吉崎エイジーニョ著作のページ


1974年生、北九州出身、大阪外国語大学朝鮮語科卒。2013年、小学6年生当時の担任教師だった菊池省三先生との共著「学級崩壊立て直し請負人 大人と子どもで取り組む「言葉」教育革命」を刊行。

 


      

「菊池省三、最後の教室−学級崩壊立て直し請負人− ★★☆


菊池省三、最後の教室

2015年08月
新潮社刊

(1200円+税)

 


2015/09/01

 


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2013年に上梓した菊池先生との共著「学級崩壊立て直し請負人」が菊池省三という小学校教師の基本的な考え方を簡潔にまとめた「理論編」であったのに対し、本書はその「実践編」とのこと。
2013年04月から2015年03月まで、北九州中央小学校で菊池先生が担任した5年1組〜6年1組の子供たちの姿を描いたドキュメント。

前年の4年時に学級崩壊したクラスを立て直すため菊池先生が担任を命じられたとのことですが、まず驚かされることは、今の小学校はこんな状態になっているのか、ということです。
菊池先生の新しい担任クラスには堀之内孝太君という格別な問題児がいるのですが、彼一人だけでなく、他にも問題児が幾人もいるという事実が衝撃的。幾ら何でもこれでは教師側も堪ったものではない、というのが率直に感じる処です。

そんなクラス対して菊池先生が実践したことは、
“ほめ言葉のシャワー”“成長ノート”“複数対話型授業”、ディベート
それが実際にどういうものであるかは、本書を読んでもらう他ないのですが、“ほめ言葉のシャワー”は話すことであり、“成長ノート”は書くこと。いずれも自分で考え、それを表現するということであり、教育本来の真髄ではないかと思います。そしてそれはコミュニケーションを高めていくという効果に繋がります。
何より素晴らしいと感じたことは、問題のある生徒を個別に救おうとするのではなく、クラス全体のレベルを高めることによりその力で問題児たちも救い上げようという方向性です。
本書において子供たちの様子、姿勢は劇的に変化していきますが、上記を実践し、実現するのは並大抵のことではないでしょう。それには経験と信念、自己抑制力、生徒たちとの関係を戦略的かつ長期的に捉える眼力が必要不可欠であろうと思います。

小説以上に圧倒される、教育現場ドキュメント。まさに一読の価値ある一冊です。お薦め。


序章/1.五年生 四月・五月 どんな自分も「リセット」できる/2.五年生 六月から十月 はじめて書いた、感想文/3.五年生 十一月 非日常は新しい「公」−学校開放週間/4.五年生 十二月から三月 「ぼくは、みんなに追いつきたい」/5.六年生 四月から十月 中だるみから脱却、二度の晴れ舞台/6.六年生 十一月から卒業式 全員が成長した、日本一の学級/今、思うこと(菊池省三)

 


  

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