山本夏彦著作のページ


大正4年東京・下谷根岸生。16歳で渡仏、パリのユニヴェルシテ・ラヴリエールにて学ぶ。戦後、工作社を設立、雑誌「木工界」(現「室内」)を創刊。平成14年10月胃癌のため死去。菊池寛賞、読売文学賞、市川市民文化賞を受賞。著作多数。
コラムは、自ら発刊している「室内」に「日常茶飯事」、「文芸春秋」に「愚図の大いそがし」、「諸君!」に「笑わぬでもなし」、「週刊新潮」に「夏彦の写真コラム」を連載、最後まで書き続ける。

 


 

●「最後の波の音」● ★☆




2003年3月
文芸春秋刊

(1600円+税)

2006年3月
文春文庫化

   

2003/05/05

名コラムニストとして知られる山本夏彦さんの最後の作品集。
山本夏彦さんのエッセイはあちこちで読んでいる筈なのですが、単行本で読んだのは10年前の「愚図の大いそがし」のみ。その時は、自分のことを棚に上げて第三者を批評するばかりという印象で、あまり好感をもてませんでした。
今回は、書店で頁をめくり、その骨太な文章に興味をそそられたのが、買って読んだ理由。以前に読んだ時の印象はすっかり忘れていました。
山本さんは大正4年生まれですから、話の中には戦前のことも度々出てきますし、同じ話の繰り返しも多い。そこを指摘されて「いつも同じことばかり言っている」と言われたそうですが、友人のひとりが庇ってくれた言葉が「寄せては返す波の音と思え」との由。
それ故に「寄せては返す波の音」という題名のエッセイ本があり、本書題名もその延長上のものらしい。

山本さんのエッセイの良さは、時勢に流されず、誰に対する気兼ねもなく、率直かつ遠慮なく自分の意見を書いているところでしょう。それが骨太と感じる所以です。
ちなみに本書では、戦前は郵便局の時代、戦後は銀行の時代と論じた章、クロネコヤマトと役人の対決を論じた章、製品テストを繰り返した雑誌「暮しの手帖」の50年を論じた章が面白い。
また、芸人のことを交えて性風俗の変遷を論じた幾つかの章も興味深いものでした。

私の「男子の本懐」/人はさびしき/向田邦子の語彙/花柳界の行方/寄せては返す波の音

 


  

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