山口正介著作のページ


山口長男。作家。

 


 

●「ぼくの父はこうして死んだ−男性自身 外伝−」● ★★☆




1996年5月
新潮社刊
(1165円+税)

 

1996/06/29

「男性自身」最終巻ではうかがい知ることの出来なかった、山口ファミリーの壮絶な闘病記です。

癌患者のいる家族としてはどこにでもある様なのかもしれませんが、患者本人が作家・山口瞳となると別である。自分自身の死病さえもエッセイの材料にしてしまおうとする。
その執着心は、まさに作家としての討ち死にに等しく、大往生で言える。
そしてその結果論になるのですが、結局「男性自身」の連載は1614回、死ぬまで完璧に穴を空けることがなかったというのが凄い!

戦争を経て、間違えて生き残った、という意識の下に、自分自身を悪い状況に追い込んでまで文章を仕立て上げた男。
 175頁に書かれた最後の父子のエピソードは忘れられません。エッセーの材料にされると判っていてあえて声をかける息子。すべくして返事をする父、そしてそのエッセー。凄みに満ちたシーンです。
そうした本当の山口瞳という作家の姿は、「山口瞳大全」を経たからこそよく判ります。

  


 

to Top Page     to エッセィ等 Index