図子 慧
(ずし・けい)作品のページ


1960年愛媛県生。86年「クルトフォルケンの神話」にて集英社コバルトノベル大賞に入賞。

 
1.
駅神

2.駅神ふたたび

 


  

1.

●「駅 神(えきしん)」● ★☆




2007年09月
早川書房刊

(1600円+税)

2008年09月
ハヤカワ文庫化

  

2007/10/18

 

amazon.co.jp

京成高砂駅と京成金町駅を僅か5分で結ぶ京成金町線に現れるという、謎の占い老人。
ヨンバンセン」と呼ばれるその老人が無料で観る易は、不思議によく当たるらしい。
本書は、駅ではなく“易”を題材にした日常ミステリ。

今度は“易”かぁ。いやはや日常ミステリの世界はどんどん広がって留まるところなしですねェ。殺人ミステリではおよそ考えられないことでしょう。そのうえ日常ミステリなら、心温まるストーリィ、ユーモラスなストーリィに仕立て上げることも可能ですし。
本作品は、易が事件の真相にどう関係するか?だけが見処ではありません。
主人公の相沢章平がふと知り合った新宿易学院の個性的な面々、父親から理事長職を引き継いで間もない紅川朱美、元国立大学教授の竜崎、女子プロレス・チャンピオンの大滝カスミ、そして唯一人現役の易者だという北村玄斎の4人。
老人の観た易に少しでも近づこうと、彼らが頭を捻る点も見処です。
そしてまた、ストーリィの傍ら“易”とは何ぞや?とおぼろげに判ってくるところも楽しみの一つ。
ただ、駅の占い老人が直接登場しないところがちと寂しい。

易とはズバリ解決を示してくれるものではないけれど、当たらずとも遠からず。そして何よりも「易とは予言じゃなくて、アドバイス」、別次元から悩み事の相談にのってくれる点に良さがあるようです。
かくいう私、星座占い・血液型占いから始まり、およそ占いに関心をもったことのない人間ですが、こう読んでみると易にも良いところありと素直に認めたくなります。
なお4篇の中では、最後に足払いを食わせた観のある「尋ね人」が特に意表を衝いていて面白い。

尋ね人/遊魂/八卦仙/相性

 

2.

●「駅神ふたたび」● ★☆




2008年10月
早川書房刊

(1600円+税)

 

2008/11/13

 

amazon.co.jp

僅か5分と短い路線の京成金町線。
その駅にふらりと現れ、無料で易を立てる老人、ヨンバンセン。その占いの意味はすぐ理解することはできないけれど、後から振り返るとよく当たっている。
そんなヨンバンセンが立てた易の意味を解き明かそうとする大学生=章平と、新宿易学院の個性的な仲間たち、そしてその事件を描く連作短篇集駅神の続編。

前作同様、占いに関する専門的な事柄が繰返し出てくる(そもそもそれが主体なのですが)ので、占いに興味ある方ならさぞ面白いのだろうと思うのですが、私自身は占いに無縁のため今ひとつ興に乗れず。
本来もっと楽しめる筈ではないかと思うものの、前作同様に面白さはもうひとつ消化不良のまま。
それでも、“占い”というのはそもそも神様のお告げではなく、選択に迷った場合にちょっとしたヒントを与えるもの、という本書のメッセージは心に留まります。

章平の妹=吉乃が登場する「妹の恋人」は面白かった。
兄貴だというのに気の強い吉乃にやたら虐げられているという観ある章平は真に気の毒なくらい。それでもやはり兄と妹だという落ちにはホロッ。
「浮気」は、章平に女難の兆し!の篇。
「八卦仙−仙術大会」は前作「八卦仙」に続く、章平がみた夢の中でのストーリィ。
「進退伺い」は、章平の父親=相沢章市が再登場する篇。困っているので相談に乗ってもらいたいというが、その実うまく章市に全員がはめられたのではないかと思わせるところがあって、章平に似ぬ父親の強かさが愉快。

犬の相続/妹の恋人/浮気/八卦仙 仙術大会/進退伺い

   


   

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