寺沢龍著作のページ


1935年大阪市生、大阪府立大学卒。97年定年退職を機に文筆業に入る。「薬師寺再興」が処女作。

 


 

●「薬師寺再興−白鳳伽藍に賭けた人々−」● ★☆




2000年10月
草思社刊
(2000円+税)

 

2000/12/20

奈良西ノ京にある薬師寺に、西塔が再び聳え立ってから、もう約20年が過ぎました。当時、新しい白鳳の塔の再建に感動し、それに関連する本を幾冊も読みました。したがって、その再興の経緯をたどった本書については、最初何を今更という思いがありました。
しかし、当時読んだ本は、専ら薬師寺、そして再建された
金堂、西塔、そして宮大工と再建工事が中心でした。それに対して、本書は、薬師寺再興の中心となった橋本凝胤、高田好胤という2代の管長の人間ドラマに多く触れています。宮大工棟梁の西岡常一さんも含め、3人とも既に故人となっています。白鳳伽藍の再興が順調に進みつつ薬師寺を想いながら、その原動力となった故人を偲ぶには、本書は恰好の一冊と言えます。

薬師寺の三重塔は、三重の裳階が特徴で、とても美しい姿をしています。“凍れる音楽”“水鏡の塔”と言われるのは、その調和のとれた美しさ故です。そして再建された西塔は、華やかな朱色に彩られ、その屋根の広がりはまさに翼を広げて空に飛び立つかのよう。見ていると、心が浮き立つような気分になります。
また、金堂の
薬師三尊像(薬師如来、日光菩薩、月光菩薩)は艶美な美しさをもち、西塔に劣らない魅力をもっています。
中学の修学旅行で、私も当時東塔しかない薬師寺へ行きました。高田好胤管長は既に名物坊主として有名でしたが、かならずしも好意的な感じではありませんでした。また、当時の私は、管長の話を少しも聞く耳をもっていませんでした。今思うと、とても残念なことです。
薬師寺の魅力を判りやすく解説しているという面もありますので、お寺、仏像に少しでも関心がある方には、是非お薦めしたい一冊です。

生きている薬師寺/「二つの薬師寺」の謎/坊主は薬師寺、ベリー・グッド(高田好胤)/千七百年前の深層心理学/天動説のお師匠さん(橋本凝胤)/お経でお堂が建つか/法隆寺には「鬼」がいる(西岡常一)/白鳳伽藍の再興/心の時代に

 

 

既読の関連本

 

 

 

吉村貞司
白鳳の再現」     1976.12新潮選書刊

西岡常一・青山茂
  「斑鳩の匠 宮大工三代」 1977.12徳間書店刊

西岡常一・小原二郎
  「法隆寺を支えた木」  1978.06 NHKブックス刊

西岡常一・高田好胤・青山茂
  「
甦る薬師寺西塔」   1981.04草思社刊

 

 


 

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