2004年06月
新潮社刊
(1400円+税)
2004/09/23
amazon.co.jp
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世田谷の梅丘で生まれ育ち、最後に落語家を志すまでを描いた半生記...というべき一冊なのですが、登場人物の大半は架空の人物であると言う。
でも、自分のこと、家族のこと、落語との関わりについてはすべて事実どおりと言います。
はて、こんな作品を何と言ったら良いのでしょう。
本書の特徴は、何と言っても落語調での語り。
特にどうということもない、ありふれた少年物語が、落語調で語られると愉快な話になってしまうのです。しかも、落語の噺が度々引き合いに出され、思い出話と比べられると、ますます楽しくなってきます。口を開けて笑ってしまうことも度々。
とくに愉快なのは、登場人物のキャラクター。ギター弾きの父親に、三味線弾きの母親。友人ではたいこもち性格の出伊くん、爆発山田、泣き虫出っ歯の昇ちゃん。それに加え、奇病で入院した病院の看護婦・芳恵さんもなかなかのキャラクターです。
場面での見所は、金原亭馬生師匠の葬儀の場。なりふり構わぬ著者の姿に感動すべきなのか、それとも笑ってしまうべきなのか。
ふと考えてみれば、どこにでもあるような、ちょっとそそっかしい話を面白可笑しく語ったのが落語なのかもしれない。
その意味では、本の世界の中で巧妙に落語の面白さに躍らされてしまった、という一冊かもしれません。
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