ジェーン・スー著作のページ


1973年、東京都生まれ、日本人。作詞家、コラムニスト、ラジオパーソナリティ。2018年現在、TBSラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る」のMCを務める。「貴様いつまで女子でいるつもりだ問題」にて第31回講談社エッセイスト賞を受賞。
※「ジェーン・スー」は芸名。外国人が割引されるプランがあったホテルに外国人のふりをして宿泊したときに使った偽名をmixiのハンドルネームにし、そのまま芸名に。

 


   

「生きるとか死ぬとか父親とか ★★☆


生きるとか死ぬとか父親とか

2018年05月
新潮社
(1400円+税)

2021年03月
新潮文庫



2018/10/14



amazon.co.jp

新潮社の宣伝誌「波」に連載されていたエッセイですが、どうも連載形式で読むのは苦手、外国人の父娘の話だしなぁと見送り、単行本化時もその流れのまま、見送っていました。
しかし、三浦しをんさんとの対談を呼んで興味を惹かれ、さらに評判が良いらしいと知ったこともあって読むに至りました。
ジェーン・スーさんが「自称きっすいの日本人」と知ったのは、本を手にしてから。
著者のことを全く何も知らなかった訳で、恥じ入る次第です。

さて本書の冒頭は、2016年元旦。
スーさんは42歳、父親77歳。母親は18年前に癌で死去済。
母親の「母」以外の横顔を知らず、その人生について何も聞いておかなかったことをとても悔やんでいるとのこと。そのため、父について同じ思いをしたくない、というのが本書を書き綴ることにした理由なのだそうです。

その父親、6歳年上の母に猛烈アタックし、母の両親兄弟に猛反対されたものの結婚。一時は貴金属卸・小売事業で成功し、会社兼自宅の4階建てビルを建てるまでに至ったが、母の死後投資に失敗してすっからかん、という。

いい加減な処もある人物ですが、何故か尽くしてあげたいと女性に思わせる能力に長けているという。
どうしようもない父親と思いつつも、愛すべき点があるということも著者はきちんと認めている。持て余す気持ちの一方で娘としての愛情もある、そんな一口では語れない父娘関係が、具体的な事柄を書き出すことによって語られていきます。
もちろん父娘の関係を語る時には、常に母親の面影もそこにあります。それによって、年の離れた兄といった方が相応しいような関係が浮かび上がって来るようです。

親がどういう人間だったのか。子供としては小っ恥ずかしくて、中々聞けはしないもの。
そこに踏み込んだスーさんの強い思いを感じると同時に、父親はそれに値する個性的な人物だったのだなぁと感じます。

未婚の一人娘と父、そして亡き母という家族関係を深い思いを込めて語った得難い一冊。是非お薦めです。

この男、肉親につき/男の愛嬌/結核男とダビデの星/サバランとミルフィーユ/ファミリー・ツリー/不都合な遺伝子/戦中派の終点とブラスバンド/七月の焼茄子/それぞれの銀座/ミニ・トランプ/東京生まれの東京知らず/H氏のこと/二人にしかわからないこと/商売は難しい/ステーキとパナマ帽/騙すとか騙されるとか/ここにはいない人/ふたたびの沼津/真っ赤なマニキュア/予兆/はんぶんのおんどり/小石川の家T/小石川の家U/いいニュースと悪いニュース/似て非なる似た者同士/父からの申し次ぎ

         


     

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