日本全国津々浦々、個性的な駅舎 100を厳選しての、写真+文章による興趣溢れるエッセイ本。
個性的な駅舎の中でも両横綱、復元なった東京駅と新たに巨大な屋根を完成させた大阪駅による冒頭部分だけで、ぐいッと惹きつけられてしまいました。
東京でJR系の駅ばかり見ていると、駅とはこうしたものと思いがちですが、それは都会だからこそのこと。一歩地方に出てみれば、ホームの傍らにちょっこんと寄り添っているだけだったり、こじんまりしている余りに何の建物かしらんと感じる駅がむしろ多かったりと、興味は尽きません。
思えば独身時代に国内あちこちを一人で旅して回っていた頃、観光名所より降り立った駅の方に興味を引かれて、その度に駅の写真を撮っていたものです。
その中でも忘れ難いのは、出雲の大社線大社駅。残念ながら今はもう廃線になったそうです。JR奈良駅も印象深いものがありましたが、これも今はもう駅舎ではなく、近くに移動させられて現在は奈良市総合観光案内所の建物になっているとか。
やはり廃線になった北海道の広尾駅、室生寺観光の入り口となる室生口大野駅等々、これまた思い出せばキリがありません。
本書 100駅の中には私が見知った駅もあり、そうした駅には当然ながら思い入れは強くなります。ただ、こんな風に見ていたかというと些か疑問。どんな駅か見てみようと心していないと、見過ごしてしまっていること多いだろうと思います。
中でもダントツに見ごたえあったのは「厳選!名駅舎」の章。
また、西欧の中央駅に多い頭端式。始発駅、終着駅のイメージが濃厚で、私は好きです。この頭端式で忘れ難いのが次の2駅。子供の頃によく利用した京急品川駅(地下鉄乗り入れ前は頭端式だったのです)、それと大学時代に経路だった東急東横線渋谷駅。
それら今ではもう姿の変わってしまった駅もあり、本書はファンにとって記念アルバム的な一冊になるかもしれません。
まえがき/東西両横綱の大変身/厳選!名駅舎/大屋根ドームターミナル/脳裏に焼き付く、忘じがたき駅/ホーム上の小宇宙/地の果ての車止め/鋼索・索道駅のアバンギャルド/駅前像の威容と不思議/股裂き駅の奇妙な空間/おいらの駅は踏切自慢/鄙にも希なモダン駅舎/保存駅舎の存在感/名駅舎墓碑銘/あとがき
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