小和田哲男著作のページ


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944年静岡県生、早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了。静岡大学教授。戦国大名研究の第一人者。著書多数。

 


 

●「集中講義 織田信長」● ★☆  

  

 
2003年5月
KTC中央出版刊

2006年6月
新潮文庫

(438円+税)

 

2006/06/22

織田信長は、残虐冷酷等ひどく言われることも多い人物ですが、日本の歴史上ただ一人現れた革命児として、私は信長のファンなのです。
ですから、図書館の新着棚に見つけて当然のごとく手が伸びた一冊。
私が信長ファンになった最大のきっかけは、司馬遼太郎「国盗り物語−織田信長編」を読んだことにあります。これ以上ない!と思うくらいこの作品は面白かったのです。
小説上の信長はそうだったけれど、実像はどうだったのか、というのが本書への興味。
しかし、実のところ本書で描き出される信長像は、司馬遼太郎さんが描いた信長像と基本的に共通します(司馬作品がそれだけ見事だったと言うことなのでしょう)。
小説上の信長像を別の面から確認するといった読書になり、あまり新鮮味はありませんでしたが、小説では書かれておらず興味惹かれたのは次の部分。

まず、信長は突然変異的に現れた経済的発想のできる領主だったのではなく、父親・織田信秀が既にそうであり、信長はそれをさらに飛躍させたに過ぎないこと(信秀自身優れた経済感覚の主だったことはあちこちで読んではいましたが)。
次いで、叡山焼き討ちの詳細部分。
そして、信長が天皇を超える地位に就こうとしていたのではないかという著者の推論(自身「神」であるとの発想も関連)。
昼食時に時間潰しに読むには恰好の一冊でした。

時代を先取りした信長/信長を生み出した尾張国とは/武功から情報の時代へ/「一所懸命」観の転換/発想力抜群の信長/能力本位の人材登用/武士道観念を変えた信長/乱世を治める峻厳さ/思考の柔軟性と合理主義/安土を天下の府とした意味/信長の演出力と美学/言行から信長の性格を読む/信長が求めた政教分離/ねらいは太政大臣か将軍か/信長は天皇をどうしようとしたのか/自ら神になろうとした信長/謀反を招いた信長側の問題点

               


  

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