中野香織著作のページ


1962年生、東京大学文学部および教養学部卒、東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得。英国ケンブリッジ大学客員研究員等を経て文筆業。著書に「モードの方程式」「スーツの神話」等あり。

 


   

●「着るものがない! Nothing to wear!」● ★☆




2006年10月
新潮社刊
(1300円+税)

 

2006/12/11

 

amazon.co.jp

日経新聞に連載しているコラム「モードの方程式」、その2003年以降の分を集めての単行本化とのこと。
男性から見ると着るものがいっぱいあるじゃないかと言いたい状況であっても、女性からすると「着るものがない!」ということになるのだとか。プロローグによると本書の題名はそうした意味だそうです。

最初の方こそファッションが中心、ファッションの流行とはこんなものかと改めて女性の懸命さに圧倒されるばかりですが、徐々に本書の内容は広がりを見せていきます。
そう、服装には男性も無縁ではありませんし、ファッションを通じて当時の世相、歴史にまで薀蓄は広がっていくのですから、ファッションだからといって軽視すべからず。
古今東西、新しいファッションとは常にタブーを取り込んでいるものかもしれません。いくらそうだからといって、股下げズボンとかになると、あれは相当ひどいと我々男性サラリーマンは思わざる得ないのですけれど、もの。ソリとかも含めて、あれは異人種で危険だから近寄るなというメッセージが込められているのだという中野さんのコメントを読めば、あぁその通りとストンと納得できてしまう。そんなところが本書の妙味です。

イングランドで少年たちのフード着用が犯罪防止面からも問題となり、自分達が解決してやろうと老婦人たちが立ち上がったという実話が面白い。フードを老人たちのファッションにしてしまえば、さすがに少年たちは嫌がって止める筈、というのが老婦人たちの戦略。ファッションというものの本質を突いていて、感心するばかりです。
彼女たちにしてもそれなりに勇気のいる行動だと思うのですが、そこはカレンダー・ガールズという逸話もあった英国の女性たち。さすがです。

虚栄心は、踊る!/ファッションの神々は細部に宿る/社交のマナーとお作法/ジュエリー、アクセサリー、お守りのご利益/どこまで行くのかその愚行、もとい、ファッション魂

 


     

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