村上智彦著作のページ


1961年北海道生、北海道薬科大学、金沢医科大学医学部卒。2006年から財政破綻した夕張市の医療再生に取り組む。現在NPO法人ささえる医療研究所理事長。専門分野は地域医療、予防医学、地域包括ケア。09年若月賞を受賞。。

 


 

「医療にたかるな ★★


医療にたかるな画像

2013年03月
新潮新書刊

(680円+税)

  

2013/05/06

  

amazon.co.jp

題名だけでなく内容もかなり刺激的なものである。
頭にガツンと一発! しかし私がそうした事実を認識していなかっただけのことであって、聴けば同感するところが多い。
著者の村上さんは自ら応募して夕張市立診療所(病院ではなく)の指定管理者を勤めたのだそうです。その経験を元に、夕張市破綻をひとつの典型例として語っています。
救急車をタクシー代わりに使ったり、薬をふんだんに処方することが医療サービスだと思っている“モンスター患者”(今やどこの分野にもモンスターがいるのか?)等々。元々夕張市が炭鉱の町として、栄えた当時は様々な公共サービスを無料で受けていたという状況があったという。その辺りの感覚に夕張市特有なものがあったという。
普遍的な問題として著者は、人はいつか死ぬもの、親であれば子より先に死ぬのは当たり前のこと。それらのことを前提にすれば、医療サービスの有り方も変わってくる筈と言います。
医療サービスも時代と共に変わっていくものであることを、受ける我々側も認識すべきなのでしょう。

新書版ですから直ぐに読み通すことができる一冊。そして傾聴に値する一冊でした。

1.日本の医療はなぜ「高い」のか?
「医療費が高い地域」に同情するな/健康意識は「施し」からは生まれない/医療施設では人の健康は守れない/医療批判に隠された「ごまかし」
2.医療を壊す「敵」の正体
夕張を破綻させた「たかり体質」/既得権益を死守する「政治」「行政」/「マスコミ」の自作自演構造/責任回避と権力欲に走る「医療費」/「市民」という名の妖怪が徘徊する
3.「戦う医療」から「ささえる医療」へ
高齢者医療は「死」を前提に組み立てよ/医療を超えた「ケア」を実践せよ/行政への「丸投げ」は卒業せよ/日本人よ、「公」になれ

   


  

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