熊谷 徹著作のページ


1959年東京都生、早稲田大学卒。NHK入社後、神戸放送局、報道局国際部等を経て、90年からフリージャーナリストとしてドイツ在住。著書に「ドイツの憂鬱」「新生ドイツの挑戦」等あり。

 
1.
住まなきゃわからないドイツ

2.びっくり先進国ドイツ

 


 

1.

●「住まなきゃわからないドイツ」● ★★




1997年3月
新潮社刊

2001年3月
新潮文庫化

 

1997/04/29

ドイツ在住が長い熊谷さんによる、ドイツの生活ぶりエッセイ。イラストも熊谷さんご自身が描かれたものです。
絵は昔から好きだったということですが、素人とは思えない描きっぷりで、本文+イラストと併せて楽しめます。
それにしても、ドイツと日本のなんと対照的なことか。ともに一時世界経済の優等生として並び称されたのが、信じ難い程です。
無愛想でサービスのかけらも感じられない商売ぶり。しかし、その一方、都市における身障者への対応、ゴミ処理については、日本など到底及びません。また、有給休暇の長さ(6週間など当たり前)、時間外労働の禁止、その反面仕事中の精勤ぶり等、日本が見習うべきことは沢山あります。
本書ではまた、暮らす土地としての、ミュンヘンへの賛美があります。自然の近さ、ビアガルテンの楽しさ。その一方、住宅難は顕著。日本と同様の問題は、高齢化+少子化による将来の年金問題の深刻化だそうです。

以下は、とくに面白かった部分の抜書きです。
自転車天国・ミュンヘン/裸は生活の一部です/結婚式を楽しもう/湖で泳ごう/検札の恐怖/オープンなドイツの広報課/マイペースこそわが信条/ドイツ人と会社/ビアガルテンへ行こう/本の注文は超特急!/足の不自由な人にやさしい街/ハイテクに弱くローテクに強い国?/進む民間リサイクリング/独逸国ニテ珍シキ物/休暇大国ドイツ/苦戦する書籍業界/貴族たちは今/福祉国家のツケ/移民の国ドイツ?/高齢化社会へ向かって/女性よ、汝は強くなった/ドイツ人と外国人

    

2.

●「びっくり先進国ドイツ」● ★☆




2004年7月
新潮社刊

(1400円+税)

 

2004/08/17

かつて、ドイツ人と日本人は気質的に似ていると思っていた頃がありました。実際、ヨーロッパ数ヶ国を旅して回った頃、車が来ないにもかかわらず赤信号故にじっと待っているのはドイツ人くらいなもので、あぁ日本人と似ていると。
しかし、それは当時先進国といわれた欧米と日本を合わせた中での比較の話で、先日の旅行で韓国と日本はよく似ていると思ったのに比べると、個人主義の強い欧米人と日本人とではかなりの違いがあるようです。その中でも特にドイツ人の個人主義の強さは格別。
久々に熊谷さんのドイツ観察エッセイを読んで感じたのは、まずそのことです。
外国に関するエッセイ本はどれもそれなりに味わいがあるものですが、熊谷さんのエッセイ本はとくに漫画的なスケッチ感覚と、熊谷さん自らの手によるイラスト+文章から窺えるユーモア感が楽しい。熊谷さんのドイツ在住はもう14年になるそうですが、ドイツの良い点も悪い点も見つつ、そうした違いを楽しんでいるという風があります。
長い金融不況、景気低迷から日本社会の抱える問題点の指摘ばかりが目につく昨今ですが、本書を読むと問題を抱え込んでいるのは日本ばかりではないことに気付きます。
本書の中から例を挙げると、自国のIT技術者不足から失業率が高いにも拘わらずインドから技術者を輸入しなければならないという遅れ、少子化の進捗により高福祉社会の迎えた曲がり角、等々。なかでも驚いたのは教会税! 住民登録の際にキリスト教信者と答えると、情報が税務署に回され、毎月の給料から教会税が差し引かれるのだそうです。
いやはや、お国事情の違いは尽きないもののようです。

ドイツ人ってどんな人たち?/変わり行くドイツ社会/ドイツ生活を楽しむには?/ドイツ人と会社生活

 


  

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