1992年5月
新潮社刊
(1359円+税)
1992/06/04
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私自身の高校生活がそのまま甦ってくるような思いでした。
どの程度井上さん自身の高校生活だったのか判りませんが、舞台となる高校は都立立川高校。旧制ナンバースクールと呼ばれる一校です。
それだけに男子高校だった名残のバンカラさ、自由奔放さを持っていて、合唱や演劇コンクール、体育祭等の行事も盛んです。
私の通った高校も、ここと全く似通った雰囲気をもっていました。それだけに、この小説は私自身の高校生活と重なる部分がきわめて多いのです。もっとも、私には主人公のようなガールフレンドはできませんでしたが。
初恋、友情、クラブ活動、合唱祭、立川祭、受験戦争のこと等。
振りかえると、あの頃は本当に真剣で、やたら純真な夢を抱いていました。それが実現しなくても、現在の高校生活に比べ遥かに幸せだったような気がします。ヘッセ「デミアン」等の小説に感動し、自分はどうあるべきか一所懸命に模索していました。
主人公と“わっし”の交際は、喜びから嫉妬、拘束、反発へと移り変わります。本当に相手が好きになるというより、女の子を好きにならずにいられない衝動に基づいた恋愛だったからのような気がします。
19年後、仲間達のことは良くわかっている。しかし、わっしのことは、その後どうなったか、今どうしているのかわからない。そんなものだろうという思いの中に、郷愁のような余韻が残ります。
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