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●「カフカの書き方」● ★★☆ |
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カフカ・ファンにとっては、真に嬉しい一冊。 手稿版「カフカ全集」を訳した筆者が、カフカの手紙や草稿、日記から、カフカの執筆ぶりを鮮やかに描き出した本です。 「変身」や「城」等の特異な作風に理屈抜きに惹きつけられる、というのが、私にとってのフランス・カフカという作家。とは言っても、私が読んできたのは、カフカの友人マックス・ブロートが編纂して構成を整えたブロート版。それ故、カフカが書き残した手稿版がどのようなものであったのか、それについて語った本書には、興味をそそられます。 本書に語られるカフカの執筆ぶりからは、新たなカフカ像が浮かび上がってきます。ブロートが描き出したカフカ像は、作品発表を願うことのなかった天才作家。一方、「フェリーツェへの手紙(1)」から私が抱いた印象は、苦悶しながらも書かずにはいられなかった無名作家、というものです。しかし、ここには、書くことこそ自分の人生と信じ、ひたむきに書き続けた青年像が感じられます。 まさに、本書に語られる「書き方」は、カフカの“生き方”に通じるものです。 「変身」の誕生/「失踪者」の行方/「審判」の構造/短篇集のできるまで/「城」のありか/二人の「断食芸人」 |