広岡達朗著作のページ


1932年広島県生、呉三津田高から早稲田大学へ。54年巨人軍に入団、大型遊撃手としてセ・リーグ新人王。66年退団。広島コーチを経てヤクルト監督に就任し、78年日本一。82年・83年西武監督として再度日本一を達成。78年・82年の二度にわたり正力賞を受賞。92年野球殿堂入り。

 
1.
監督論

2.野球再生

 


    

1.

●「監督論」● ★☆




2004
年04月
集英社インターナショナル

(1600円+税)

 

2007/02/11

 

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現役時代は巨人の名遊撃手、監督としてはヤクルト・西武を日本一にした名監督ですが、人気はあまり無いというのも事実でしょう。
それでも私は(現役時代は知らないので)、監督・評論家としての広岡氏のファンでした。
TVの野球中継等での解説者というのは、意味のないことばかりしゃべっている人も多いし、極端なケースではただ邪魔なだけということもあるのですが、私はこれは面白いと感じたのは、巨人V9時代の参謀と言われた故牧野茂氏とこの広岡氏というお2人の解説です。
“アンチ巨人だけれど長嶋ファン”というのは、昔からよく聞かされた言葉ですが、私の場合は珍しいと言われますが巨人ファンでアンチ長嶋。巨人軍が長い低落傾向を続けているのは、監督に広岡氏を起用すべきところで2度も長嶋氏を起用したことにあると思っています。
ですから本書に対する私の感想も元から偏りがあるものであり、以下はそのうえでの感想ということでご容赦ください。

本書の副題は「人は育つことを選手に教えられた」とあり、本書の内容はその副題どおり、選手は育つものであり、育てることの大切さを語ったところが中心になっています。
そしてそれは裏を返せば、大金を積んで実力ある選手を囲い込むことばかりに明け暮れている巨人軍への批判であり、巨人にふり回されるばかりでプロ野球ファンの期待にきちんと応えていない現プロ野球機構への批判であり、堅実な努力を重ねることなくただ安易に監督の首を繰返し挿げ替えているだけのお粗末な球団フロントへの批判に通じています。
広岡氏の言い分がすべて正しいとは思いませんが、ろくに働きもしないのに高額年俸を取っている選手への疑問、ドラフト・FA制度への疑問、オリンピックへの出場問題、監督・コーチの適性という問題にかかる疑問等々、プロ野球の危機として指摘される問題について共感するところは多い。
そして広岡氏が警告するとおり、現に私はプロ野球・巨人軍への関心をすっかり薄くしてしまったのですから。

監督交代にみる指導者の条件/五輪野球はアマの夢舞台/プロ野球改革には勇気と必死さが必要だ/私の思想を形成した人々との出会い/ヤクルト、西武は実証の場だった/野球界活性の人材活用

      

2.

●「野球再生」● ★☆




2007年01月
集英社インターナショナル

(1600円+税)

 

2007/03/11

 

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副題は「よみがえれ魂の野球」
本書は、まず2006年巨人の完全な凋落と言うべき散々な戦いぶりから語り出されます。
何故巨人がここまで弱くなったのか。その原因は何か。
それを突き止めていくと、それは単に巨人に留まらず、プロ野球全体に根を張った問題であることに行き着きます。
広岡さんの論は、私として共感することばかり。もっと正確に言うと、胸の内でもやもやしていた思いが、広岡さんの言葉ではっきりしたと言えます。

何故巨人の主力選手はシーズン中あんなにも故障するのか。あれ程故障する選手が何故主力選手でいられるのか。何故巨人では若手選手がちっとも育たないのか。あんなにFAで選手をかき集めてどこにチームとしての魅力があると考えるのか。
そしてさらにプロ野球全体に関して言うと、何故現在のプロ野球選手はズボンの裾をひきずるようなだらしない恰好でプレーするのか。何故まともに走れない、故障ばかりしている選手をああももてはやすのか。ピアスなどしている選手を何故たしなめないのか。プロ選手として二流としか言いようのない実績しか残さなかった選手を何故あんなにも一流選手扱いするのか。
コーチ、監督は毎年のようにあちこちのチームで入れ替わりが行われていますが、本当に彼らはそれに相応しい力量(見識・指導力)を備えているのか。
日本球界に充分貢献したと言えないのに半ばゴリ押しで大リーグに行った選手について、何故「大リーグへ行くまでの苦難の道」などと言ったりするのか。
書き出せば、現在のプロ野球の情況にかかる疑問は尽きません。そして煎じ詰めれば、それらは私がプロ野球に興味を失うことに繋がっています。TVの視聴率をみても、それは決して私だけのことではないと思う。
そしてさらに、他のプロスポーツにおいても、品の悪い傲慢な言動をマスコミが持てはやしている現実があります。
何をやっても勝てばいい、相手が何しようが売れればいい、そうして風潮を憂うばかり。

2006年の巨人軍から学べ/選手教育の現場/人は育つ、人を育てる/教える技/チームづくりのローテーション/"人を育てる"を遮るもの/野球改革は根本から/日本野球の未来を見据える

 


 

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