フレッド・アステア著作のページ


Fred Astaire 1899〜1987 幼年より姉と組んでボードビルの舞台、ブロードウェイ、ロンドンの舞台で活躍。姉が引退したのち映画界に入り、ジンジャー・ロジャースとのダンス映画で世界を魅了する。戦後多くの映画に出演すると共にドラマ・TVにも出演。1950年アカデミー特別賞、81年AFI生涯功績賞を受賞。

 


  

●「フレッド・アステア自伝」● ★★
 
原題:Step in Time”       訳:篠儀直子

 
フレッド・アステア自伝画像
 
1959年発表

2006年10月
青土社刊
(2800円+税)

 

2007/02/18

 

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ボブ・トーマスの評伝アステア ザ・ダンサーを20年近くも前に読んでいますので、フレッド・アステアに関する読書はこれが2冊目になりますが、本書自伝はトーマスの著書よりずっと以前、今から半世紀も前に書かれたものなのですね。
何で今頃という気がしますが、本書と並行してアステアのミュージカル(ダンス)映画を再び楽しめることができるのは、ファンとしては嬉しい限りです。
たとえ何十年が過ぎようと、古い映画作品だろうと、アステアの作品を観てみれば、それが少しも輝きを失っていないことが判るのですから。

書くことが苦手だと冒頭に述べているアステアのこの自伝は、驚くくらい淡々としたものです。自分の苦労や成功をドラマティックに語るなどという姿勢はどこにもなく、ただ辿ってきた道のりをその順番どおりに語り出していくという姿勢です。
そのため、本書に面白さを期待する読者であれば(最初は私も期待しましたけれど)、きっとがっかりすることでしょう。
その代わり本書には、淡々とし飄々としたフレッド・アステアその人の人柄に直に触れられるような魅力があります。それはファンだからこそ味わえる魅力と思う次第。

本書のおよそ半分は、姉アデールと組んでのヴォードビル、人気絶頂を得たミュージカル・コメディ舞台の時代のことに占められています。
父親はオーストリア移民、母親は地方のごく普通の女性で芸能界には全く無縁な人たちだったというのに、姉アデールのダンスの才能を信じて弟フレデリックとともに幼い頃より興行界へ送り込んだという経緯には、驚きを禁じえません。
2人の最初の頃は観客から拍手ももらえないという屈辱を味わったこと幾度もあったようですが、その中で2人の芸を高め、最後にフレッドはミュージカル映画を代表するスターになったのですから、持って生まれた才能という他ないのでしょう。
姉弟コンビの時代は殆どアデールの方が評価は高かったようです。フレッドの評価も高まってくるのは2人の最後の方になってから。
後半は、愛妻フィリスとの出会い、求婚、2人の結婚生活のことが、競走馬をもち楽しんだことと、映画での活躍のことが三者均等に書かれています。ジンジャー・ロジャースと名コンビを組んだこと等をはじめ映画時代のことがあっさりと済まされてしまうのもまた驚くこと。
要は、アステアにとって忘れ難く語りたい思い出は、苦労を重ねて登っていくその過程にあって、成功した後のことではないのでしょう。それもまたアステアの人柄なのでしょう。
本書について一言でまとめれば、楽しい本というより、ファンにとって嬉しい本。

※なお、アステアをこうして2冊読めたからには、ファンとしてはもう一方の雄、ジーン・ケリーに関するものも是非読んでみたいと思う次第です。

あらかじめ考えたこと/オマハ/ニューヨーク/プロたち/難しい年頃/ビッグ・タイム/大きく前進/ブロードウェイ/ディリンガム/大失敗の結果/ロンドン/レイディ、ビー・グッド!/競走馬/ファニー・フェイス/バンド・ワゴン/フィリス/ハリウッド/最後の舞台/フェザーズ/ジンジャーなしで/興行の癌/ミュージカル再ブーム/トリプリケイト/USO/ゴールド・カップ/イースター・パレード/冷たい壁が/ファニー・フェイス再び/思いつくままに

   

★ フレッド・アステア出演映画リスト 

    


    

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