雪乃紗衣作品のページ


1982年茨城県生。2002年「彩雲国綺譚」にて第1回角川ビーンズ小説賞の奨励賞・読者賞を受賞。03年同作を改稿した「彩雲国物語−はじまりの風は紅く−」にて作家デビュー。

 


                   

「永遠の夏をあとに ★☆


永遠の夏をあとに

2020年04月
東京創元社

(1600円+税)

2022年07月
創元文芸文庫



2020/05/02



amazon.co.jp

意味深、そして何よりも“夏”を謳った題名、ついいろいろと想像を書き立てられ、本作の題名に惹きつけられました。

主人公は田舎町に住む小6の
羽矢拓人
拓人には6年前、神隠しに遭い、2ヶ月後発見された時にはその間の記憶を失っていたという事件の過去があった。
そしてこの夏休み、一人の女性が拓人の前に姿を現します。拓人がつい
「サヤ」と呼んだその女性=弓月小夜子・22歳は、6年前の夏を拓人とシングルマザーの花蓮と3人で一緒に過ごした相手なのだという。
足を骨折して花蓮が入院中の我が家で、拓人はサヤと2人で夏を過ごすことになります。
6年前の夏に一体何があったのか。その記憶を辿ると同時に、2人の周りで起きるいろいろな揉め事、事件を綴るストーリィ。

本作、とにかく夏のイメージが強烈、かつ鮮烈です。
ミステリ、謎、冒険という要素に夏は相応しく、そして忘れ難い記憶を残すのもまた夏。
その意味で、6年の時を挟んで夏の出来事を綴っていく本作は十分魅力的です。

しかし、難点と感じる処も多い。
ストーリィは2つの時を任意に前後し、そのうえ長たらしいという印象を否めず。そのため読みづらいところもありましたが、こうしたストーリィにおいては定番ともいえる構成ですので、とくに批判するには当たらず。
ただ、主人公の拓人および親友の
葉越彰たちを小6に設定しているのは相当に無理があると思う。中3なら納得できますが。
また、ミステリと思いきや、ミステリではなかったのか?という結末も釈然とせず。
その他、設定、展開に粗さを感じるところ多。

本作、意欲作と思います。今回、もうひとつ得心できず評価が辛めになりましたが、雪乃さんの今後に期待しています。


神社へ/第一章〜第十一章/終章/2019年、8月

        


   

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