谷津矢車
(やつ・やぐるま)作品のページ


1986年東京都生、駒澤大学文学部歴史学科(考古学専攻)卒。2012年「蒲生の記」にて第18回歴史群像大賞優秀賞を受賞。13年「洛中洛外画狂伝狩野永徳」にて作家デビュー。

  


       

「おもちゃ絵芳藤 ★☆


おもちゃ絵芳藤

2017年04月
文芸春秋刊

(1650円+税)



2017/05/15



amazon.co.jp

実在の浮世絵師、“玩具絵の芳藤”として知られる歌川芳藤を主人公に、幕末から明治にかけての浮世絵師たちの変転する姿を描いた歴史長編。

“武者絵の国芳”と呼ばれ、数多くの弟子を持った
歌川国芳の死去から本ストーリィは始まります。
国芳の画塾を守って若頭のような位置にあると言われる一方で、画才に関して言えば絵は丁寧だが華がないと手厳しい言い方をされてしまう芳藤。自分自身でその評価を納得してしまう処は、不器用なうえに人が好い所為か。
弟弟子である
月岡芳年落合芳幾らの浮世絵師、元は歌川一門だったが狩野派の絵師となった河鍋狂斎らが、芳藤を囲むように登場して本ストーリィを彩ります。

江戸の世がひっくり返って浮世絵が売れなくなったご時世、芳年や芳幾等が足掻くようにして生活の糧を得ようとしているのと対照的に、不器用故に、元々絵がそれほど売れていなかった故に、こつこつと生涯にわたって絵を描き続けた芳藤。
本作は、明治維新という大きな歴史の一方で、浮世絵師という人間たちのドラマを描いた長編。極めて人間臭い絵師たちの姿が、リアルに息づいているという印象です。

華はなくても、不器用でも、財をなせずとも、こつこつと絵を描き続けて人生を全うするのもまた、ひとつの幸せな生き方と言うべきなのだろうと、凡々人としては共感する思いです。

  


  

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