安田依央
(いお)作品のページ


1966年大阪府生、関西大学法学部政治学科卒。2003年「たぶらかし」にて第23回小説すばる新人賞を受賞。ミュージシャン、司法書士、NPO法人主宰等。

 


           

「たぶらかし ★★        小説すばる新人賞




2011年02月
集英社刊
(1300円+税)

2012年03月
集英社文庫化

   

2013/08/11

   

amazon.co.jp

レンタルショップでふと見かけたのが、TVドラマシリーズらしい「たぶらかし」という作品。主役の冬堂マキを演じているのが私の好きな女優の一人である谷村美月さんであったことから借りて観てみました。
ORコーポレーションという事務所に所属する女優=冬堂マキが演じるのは、舞台やドラマの中ではなく、現実世界における誰かの代役。称して“代行女優業”という次第。
本書はそのTVドラマシリーズの原作。

TVドラマが毎回決着がつく事件もの仕立てになっているのに対し、原作は代行女優というマキの仕事を通じて現実のドラマを際立たせる長編ストーリィになっているところが大きな違い。またマキ自体も、TVでは20代のマキに対し原作でのマキは39歳で代行女優業の経歴も既に5年、でも事務所では最若手女優という設定です。
さて実際にどんな役柄を演じるのかと言えば、棺に入った死体からセレブの女社長に代わっての母親役、さらには親戚向けの新妻役等々と実に多彩。
フィクションとはいえ、そんなに実需があるものかと思う内、誰にしても職場、家の外で何らかの役を演じているのではないかと思えてきます。
とすれば代役を演じるマキたちにしても、本人とそう変わる処はないかもしれない。逆に本人たちが抱えている問題点がよく見える、そうでこその本ドラマと感じます。

マキの他、事務所ボスの松平、創立メンバーで死体代役のパイオニアと呼ばれる老女優=本条クメ、マキを"師匠"と呼んでまとわりついてくる若手劇団俳優の水鳥モンゾウ等、いずれも曲者ぞろいで何が真実なのか虚構なのか読み手にしても掴み切れずといった風で十分楽しませてくれます。
原作とTVドラマ、両方楽しんでみるのも一興と思います。

                 


   

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