山口雅也作品のページ


1954年神奈川県横須賀市生、早稲田大学法学部卒。在学中よりミステリー評論等で活躍し、89年「生ける屍の死」にて作家デビュー。「日本殺人事件」
にて日本推理作家協会賞を受賞。

 
1.
垂里冴子のお見合いと推理

2.続・垂里冴子のお見合いと推理

  


 

1.

●「垂里冴子のお見合いと推理」● 




1996年
集英社刊

2002年3月
講談社文庫

(514円+税)

 
2004/09/23

事件の中身より、登場人物のキャラクターで楽しむミステリー短編集。
探偵役となる冴子は垂里家の長女で33歳。かつて勤めていた出版社も退職し、今は家事手伝い。
伯母のお見合いハンター・合子が盛んに話をもってきますが、何故かその都度事件が起きて一向に縁談は決まらない、何ともう13回目というのが、シリーズの第一話。

父親の一路が推理いちろで、母親・好江が推理好き江、長女が推理冴える子で、弟・京一が推理狂。変わり者の次女・空美が推理が空っぽという暗号的な名前。そのうえ、垂里家の代々の女子の縁談はことごとく破談となる呪いがかけられているという。
でも、本好きでいつも古風な着物姿の冴子さん自身は、ユニークな存在の探偵としてなかなか魅力的。ミステリの中身としてはどれも軽いものですが、そんな個性があるからこそ楽しい。
本書4篇の中では、最後の「冴子の運命」に読み応えあり。

※週刊誌記者の朝比奈啓一は「空美の改心」にて、レストラン“猫の手”のママは「冴子の運命」から登場。

十三回目の不吉なお見合い/海に消ゆ/空美の改心/冴子の運命

 

2.

●「続・垂里冴子のお見合いと推理」● ★☆




2000年5月
講談社刊

2004年8月
講談社文庫

(571円+税)

 

2004/08/15

刑事、探偵以外の人物が短篇集の探偵役になるにあたっては、それだけの事件に遭遇する舞台設定が必要ですが、本シリーズはその舞台設定がなんとお見合い!
お見合いなどという舞台設定、なかなか思いつけるものではありません。そんなユーモラスな趣向に惹かれたのが、本書を読んだ理由。

主人公となる垂里家の長女・冴子は35歳、いつも着物姿の楚々とした和風美人で、本好きと教養も申し分なし。プラスチック眼鏡がちとやぼったいが、何故か縁遠い。しかし、その冴子が眼鏡を外すとき、人並み優れた推理力が発揮されます。
見合いの都度必ず事件が起きるという趣向も楽しめますが、周辺の登場人物たちの顔ぶれもまた楽しい。
長女が縁遠いのは垂里家の娘達にかけられた呪いの所為ではないかと嘆く両親の一路・好江、型破りな次女・空美、熱烈な長姉贔屓の浪人生・京一という垂里一家に加え、“お見合い界の孤高のハンター”と異名をとる好江の姉・人見合子
それ以外にも、空美の友人・服部笑窪、馴染みのレストラン“猫の手”のママとか、週刊誌記者の朝比奈啓一
ちょっとした時間を楽しく過ごしたい、そんな時に読むのに格好のミステリーです。

湯煙のどとき事件/薫は香を以って/動く七福神/靴男と象の靴

  


  

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