山田太一作品のページ


1934年東京都生、早稲田大学卒。松竹大船撮影所演出部勤務を経て、65年フリーの脚本家。85年菊池寛賞受賞。テレビ番組「ふぞろいの林檎たち」がヒット。

 
1.君を見上げて

2.彌太郎さんの話

 


   

1.

●「君を見上げて」● ★★

 

 
1990年11月
新潮社刊

1993年10月
新潮文庫化

 
1992/11/01

高野章二= 163cm、小坂瑛子= 182cm、19cmも身長差のある二人が、結婚を決意するまでのラブ・ストーリィ。
山田さんらしく軽快なテンポでストーリィが展開、読後快い感覚が残っています。
何より、二人の率直な会話が魅力です。こんな恋愛だったら、何度もしてみたいような気がします。(^^;) 

19cmという身長差は、お互いに飾り繕いようのない大きなハンデです。当然のように、二人の会話には常に身長差という話題が取り上げられます。
その点では、瑛子の方が率直。いつも堂々としていて卑下することがありません。自分の身長を認識し、章二との恋愛においても真っ直ぐ現実を見据えているという気がします。そうした面で、瑛子は魅力的な女性です。
韓国へ向かう機中での出会い、翌朝の朝市での2度目の出会い、そして東京での偶然の再会。恋愛ものになじまないような事件も起きますが、それはそれ。
この爽やかさをいつまでも忘れたくない、そんな恋愛小説です。

  

2.

●「彌太郎さんの話」● 

 

 
2002年3月
新潮社刊

(1600円+税)

2005年1月
新潮文庫化

 
2002/06/16

戦時中、両親がやっていた浅草の大衆食堂。その客で、戦後急に行方知れずになっていた彌太郎さんから、30年ぶりに葉書が届きます。今は脚本家となっている私と話がしたいと言う。
そして始まった彌太郎さんの話は、途方もないものでした。
マッカーサー司令部にマッサージ師として勤めていた彌太郎さんは、朝鮮戦争で精神錯乱した米軍兵士が日本人を射殺するのを目撃してしまったことから、フィリピン→ベトナム→ペナン→ニューギニアと30年もの間独房に監禁されていた、と言う。

ひとつには、戦時中の軍隊生活の過酷さを、今のうちに再度語っておくという狙いもあるでしょう。その点、戦後の30年間を失っている彌太郎さんという人物は、格好の語り手です。
もうひとつは、“語り”の面白さ。
彌太郎さんの悲惨な体験談は必ずしも一貫せず、度々現在のことに脱線しながら、なかなか終結しません。そんな彌太郎さんから時々暴力を振るわれながらも、主人公である私は彌太郎さんに、そしてその話に、次第に引き込まれていきます。
本作品の魅力は、そんな著者の語りの上手さにあるようです。
しかしながら、私としてはもうひとつ踏み込めず、その語りの面白さを味わうに至らないまま読み終えました。

  


 

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