日本昔話の代表格「竹取物語」を題材にした長編小説。
“かの女”が家に代々伝わる極秘の書として父親から託されたのは「かがやく月の宮」という題名の書物。それは、SFファンタジー的な「竹取物語」の裏に隠された公にできない事実を書き記したものだという。
かの女がその書を紐解く、という想定の下に本ストーリィは語られていきます。
まず、竹取の翁が5人の公子に課した、かぐや姫嫁取りのための難題をめぐる顛末が語られます。竹取物語ではかぐや姫への恋慕というのが動機とされていますが、本物語ではそう単純なものではなくかなり現実的な動機が基。その辺り、竹取物語を現実的に描くとこうなる、という風で面白い。
折しも大唐帝国からの使者が大宰府に渡来しており、どう遇するかが時の宮廷にとっては大問題。それにもかかわらず有力者たちが上記難題に失敗して次々と宮廷から離脱しているのは大きな痛手、というのはブラックユーモアか。
しかし、現実的なストーリィが展開されるかと思いきや、後半に入ると再び妖しくファンタジーな展開が待ち受けているといった具合。読者としては作者が施した仕掛けに翻弄され、ずぶずぶと底なし沼に落ち込んだようなものと言って過言ではありません。
即ち、本作品は謀りに満ちた歴史絵巻なのです。
そしてエピローグ。ここに至ってもまだこんな謀りが待ち受けていたとは、ただただ絶句。
謀りの多さを嘆くべきか、面白いとして喜ぶべきなのか。所詮は読み手の好み次第ですけれど、この仕掛け、私には結構面白かったです。
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